「ジュリー&ジュリア」

ジュリー&ジュリア」鑑賞。久々のノーラ・エフロン監督作品。期待度大で臨みました。
〈あらすじ〉ニューヨークで暮らす派遣OLジュリー(エイミー・アダムス)は、料理人の
ジュリア・チャイルド(メリル・ストリープ)が、50年前に試みたように、フランス料理をマスター
しようと決意。ジュリアの料理本524のレシピ全てを365日で制覇しブログに綴ることに挑戦する。


料理で人生を変えようとする二人の女性の話を、時空を越えて巧みに見せていく構成は良かったし、
おなじみのウイットに富んだ脚本・演出も面白かった。
特に、甲高い声の大女ジュリア・チャイルドがとても魅力的な女性として描かれていたと思う。
でも、ただの食べるの大好き主婦が、唯一の女性生徒として名門料理学校ル・コルドン・ブルー
プロ養成クラスで認められるまでには、もっと大変な苦労をしたはずだと思う。
そこを「玉葱みじん切りのエピソード」だけで片付けるにはもったいないような気がする。
現代ニューヨークで、いつも中途半端な自分に喝を入れるため、ジュリアの全レシピに挑戦する
ジュリーの葛藤も、途中から少しぼやけてしまったように感じた。
何も為し得ていないアラサーの「疲れ」「苛立ち」「無力感」を途中もっと際立たせても
良かったのではないか。
そこらへんをもう少し突き詰めて描けば、ラストでもっと深い余韻を味わえたような気もする。
もちろん、二人とも愛すべきキャラクターで映画を充分牽引してはいるのだが。


どちらの女性にも献身的に妻を愛し支える理想的な夫がいる。
特に、自分より大柄な妻にひたすら愛情を注ぎ続けるジュリアの夫ポール(スタンリー・トゥッチ)の
姿に感動(あのスキンヘッドとダンディな声が最高・笑)。
どうかと思うほど理想的に描いているのだけど、それでも、一生懸命に生きる女性の傍らには
こういう男性がいてほしいよね。と切実に思ってしまった(笑)。


ところで本作には、個性的なベテラン・中堅女優が多数キャスティングされていて、
彼らの演技のアンサンブルも映画の重要なスパイスとなっていたと思う
(フランシス・スターンハーゲンには夫婦ともども感動)。
演技を邪魔しないカット割りといい、映画を観た満足感が充分得られた。
もちろん、メリル・ストリープの怪演ぶりは凄かったです。
それぞれの時代の「楽しく寛げる部屋」や「暮らしぶり」も本当に可愛くて眼福にもなりましたね。
(クーラン)