「ザ・フライ2/二世誕生」…ダラボン以下頑張っている続編(再録)

カナダの鬼才デビッド・クローネンバーグがハリウッド・メジャーに殴り込みをかけた前作
ザ・フライ」は公開当時劇場で観ており、その素晴らしさに瞠目したが、この続編は昨年
VHSで観たのが初見。
のちに「ミスト」を監督するフランク・ダラボンが執筆した脚本他、前作と異なるスタッフ
だが、こちらも充実の仕上がり。


ザ・フライ 2/二世誕生 [DVD]
あらすじ
第一作で物質転送機の実験中に蝿と一体化したジェフ・ゴールドブラム
博士のわすれがたみの主人公が民間の研究所に軟禁・監視されている。
父親のDNAを受継いだ彼は、異常に早い成長とただならぬ知性で、
周囲を驚かせつつも、ヒトとしての生活をしている。
ただし孤独…基本的人権は尊重しつつも、やはり周囲の目は研究材料としての存在。
こころかよわせることのできた最初の友は、実験動物の犬だったが、
悲劇的な別れがあり、その後、夜勤の女性職員とイイ仲になったのも束の間、蝿への変態
が始まる。


本作の監督であるクリス・ワラスは特殊メイクアップ・アーティスト出身だけに、顔が
ひしゃげたりするグロテスクな見せ場の撮り方が達者で、これだけでも好き物には
たまらないが、それ以上に、生まれながらに異形のものであることを運命づけられた主人公、
その孤独が丁寧に描かれていて胸を打つ。


彼はまた、幼少期から迷路の如き研究所内をウロチョロひとり遊びしているのだが、
それがこの建物の構造を知り尽くしたことになり、後半の追跡に生きてくるという脚本は
なかなかのもの。
そして、皮肉が利いた大団円も上手く描けている。


このラストに不快感を露にする人もいるらしいが、どうしたってハッピーエンディングに
なりようのない話なので、罪と罰、又は、因果応報なこの展開、至極納得。


それにしても…実験動物のイヌちゃんのくだりは涙なしにはみられません。
このころのホラー映画には、どこか感情を揺さぶられる展開があったなあ、
などどしみじみ感じ入ることの出来る逸品。(○)