ターミネーター4の周辺の事柄

マックG監督クリスチャン・ベール主演「ターミネーター4」を有楽町マリオン丸の内ピカデリー
先行上映で観た。
ロードショウ前の作品なのでネタバレなしで、前3作やその周辺の状況についての思い出を綴る。


本作品はシリーズ4作目、ジェームズ・キャメロン監督の第1作が公開されてからもう24年歳月が
経過している。


24年前のチケットに記載された価格は1,200円。
現在の前売券は1,300円であるから物価の高騰に係わらず映画の入場料はほとんど据え置かれて
いることになる。


24年前の第1作も、今回と同じ有楽町マリオン内の映画館で観た。
当時の映画字幕って、手書きが主流だったのだけれど、本作は活字だった。
劇場公開された洋画では、かなり早い時期の導入であり、本作に対する配給会社の意気込みを感じた。
           ( ↓ 昔の「味のある」そして「不思議な字体」の手書き字幕の例)

           

確かに圧倒的な迫力、及び、たたみ掛ける展開に瞠目した。
当該「ターミネーター」は、当時の他のアクション映画と比較して、圧倒的にアクション・シーンに
割く時間が長い。
同時期に製作された「ビバリーヒルズコップ」「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」「L.A大捜査線 狼たちの街」
等と比較していただければ歴然ですが、これらの作品の上映時間におけるアクション・シーンの割合は
10〜20%程度。これに反して、「ターミネーター」は半分くらいのシーンをアクション描写に費やしている。
こうした映画でも、まずスートリィありきだった当事の作劇法を覆し、アクション・シーンを中心に据えた
作りは、それまでにない新鮮さで成功したが、その影響下にあるジョン・マクティアナン監督の「ダイ
ハード」がより大きな興行収入をおさめるに至り、こうした作品の乱立を促した。
以後、アクション映画の多くは空虚な銃撃と爆破のカタルシスのみの単純な構造の作品となってしまった。


ターミネーター」が、そのきっかけを作った。


そして7年後の「ターミネーター2」。
1作目とは比較にならないであろうハイ・バジェットによって製作された本作は、何よりキャメロンが
前作「アビス」で実験的に使用していたコンピューター・グラフィックスの大胆な導入が眼目であり、
それまでリック・ベイカー(「狼男アメリカン」)やロブ・ボッティン(「ハウリング」)といった
特殊メイク・アップ・アーティストが粘土と石膏と液状ラバーで手間ひまかけて創造していた
「異形のものへのメタモルフォーゼ」を一気に過去のものとしてしまった。
しかし、これもまたその後のSF映画を安易なCG至上主義としてしまうきっかけ作りとなった。


キャメロンの前2作はその革新性ゆえに、スタイルにおいて多くの粗悪な亜流を産み出し、結果として、
この種の映画の質を総体として低下させてしまった感は否めない。


転じて、ジョナサン・モストウが監督した「ターミネーター3」は、この時期の作品としてはCGの使用も
少なくアクション・シーンも数箇所に限定されていて、こうした状況に対する反定立の作品という印象を持った。


そして「ターミネーター4」
アクションにつぐアクションと、過剰なまでのCGの使用。
現在のハリウッド大作の典型的な作品でありながら、キャメロンのターミネーター1,2を初めてみた時の
興奮が息付く。
思えば、現在の状況はキャメロンの作為ではなく、彼に続くべき才能の不在がそうさせた訳で、
ここへきてマックGがその作劇法の有効性を改めて示してくれたたような気がする。
疾走するモトターミネーターの見事さよ。(○)