「ファンタズム」の思い出

小学生の時、池袋の現在はパチンコ屋になっている映画館で
ドン・コスカレリ監督作品で現在はカルト的評価を得ている本作を観た。
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当時、配給会社の東宝東和は、この独立系マイナー映画をナゼか積極的に
宣伝してくれていて、CMやTVジョッキー(たけしのスーパージョッキーの前番組ね)
の映画紹介コーナーで、このただならぬ雰囲気
(一面の白い部屋・墓石に隠れる人影…等)をお茶の間に強く印象付けていた。


早速、トモダチさそって国際興業バスで数十分の池袋劇場へ馳せ参じた。


劇場の床がベタ付いてた。
客があまりいなかった。
そして宮崎駿初の劇場用監督作「ルパン三世カリオストロの城」の予告が上映された
(ものすごい衝撃で、これから観る映画のことを一瞬忘れた。)
そんななか、本編が始まった。
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本当に素晴らしい作品だった。
この作品をロードショウで観たことを私は誇りに思う。


幻想的で荘厳な音楽
初々しい主演俳優(マイケル・ボールドウィン!)
地方都市の静かで美しい風景
そして、思春期の少年の不安定な気持ちをリアルに映像化した演出
すべてが最高だった。


主人公が、本当に70年代の少女漫画にでてくるような
顔(美形)
髪型(長髪でウエーブがかってる)
ファッション(ジーンズをルーズに履きこなす)なのにもビックリしたが、
そんな彼は、たったひとりの身寄りである兄をすごく慕っているのだけれど
兄が、彼をおいて遠いところへ行ってしまうかもしれないというシーンがあって、
彼は、自転車に乗ってる兄を追いかけるが、しかし追いつかない。
…このもどかしい感じ
何か、夢のなかで手が届きそうなのに届かないムズムズした感じを連想させ、
とても象徴的なのだが、整然とした誰もいない街での、この兄弟二人だけの追いかけっこは、
本当に夢のように美しく忘れられない。


もちろん前述のただならぬシーンは劇場で観るとその音響とともに大変気持ち悪くて
スバラシかった。
…嗚呼、こんな映画にまた出逢いたい。


ところで、冒頭、イキナリ男女が夜の墓場でまぐわうシーンがでてきて当時小学生の私は、
やはりムズムズ・ドキドキだったのだけれど、今見るとこのシーン、カットのつなぎがおかしい。
……当時小学生の私は気付かなかったケド。(○)