一人酒

この日オットは呑み会。私も一人酒する。
ということで今日のつまみ

  • がんもどきと野菜の卵とじ(昨日の残り)
  • 長芋とアボカドのサラダ(昨日の残り)
  • フルーツゼリー(デザート)  粕取り焼酎「宜有千万」できめる


★「37歳で医者になった僕」第7回鑑賞。<あらすじ>仲良く帰宅する祐太(草なぎ剛)と瑞希水川あさみ)の前にすず(ミムラ)が現れ、微妙な空気が漂う。
医学部長の座を狙う佐伯(松平健)は、利益を上げる為、医師に患者とのコミュニケーションを減らし、早く退院させるよう指示する。


今回は、すずの心の動きを描いた回だった。これまで「すず」という人が、いまいちよく分からなかったので、興味深かった。
すずは、優しくて賢くて善良な女性だ。いわゆる「いい人」。でも、職場の同僚で障がい者の林田(阿部力)に「世の中、自分達に
優しくなくてもいい」と言われた辺りから、実は心にさざ波がたっていたのかなと思う。すずは、自分の体を心配し大切にしてくれる
両親と祐太の優しさに、ずっと感謝していたと思う。でもその優しさは、「いつか病気が治る」という願いの裏返しでもある。
すずは幸せになりたいという気持ちとともに、その願いに応えたいと、自身ではどうすることも出来ない体を抱えて、
懸命に頑張ってきたのだと思う。でも前回、残念ながら移植は困難と告知された。誰より、すず自身が一番ショックだったろう。
それなのに、病気の娘として、親の願いに応えられなかったことを、詫びるすずの姿に胸が痛む。
彼女がいつも浮かべている微笑みの陰に潜んでいた悩み・苦しみが、ここにきてようやく見えてきた。
娘を喪うまいと、どんどん過保護になっていく両親の優しさが、しんどかった時もあるだろう。
7年付き合ううち、すずの体が心配で、病気のことしか話さなくなっていった祐太の優しさが、辛かった時もあるだろう。
「いつか病気が治る」という願いや、先が見えない祐太との関係は、知らず知らずのうちにすずの立ち位置を不安定にして
いったのではないかと思う。そして、「病気が治らない」という告知は、ある意味すずの足許を固めたのではないだろうか。
彼女は病気を受け入れることを決めたのだ。そして、祐太にも別れを告げる。


一方、すずの同僚・林田は足に障がいがある男で、「障がいを抱えるものと健常者との間には越えられない線がある」という
考え方の持ち主だ。恋人は健常者で、もちろん愛しているが、そんな自分と理解しあえるとは、おそらく考えてはいない。
祐太の病院に入院した恋人は、傍にいて精神的に支えてもらいたいと思いつつも、長期海外渡航を控える林田には言い出せない。
彼女の意を汲んだ祐太が、説得を試みるも林田は応じない。林田にとって最優先するのは、自分のフィールドで自分らしく
生きることだからだ。線が引かれている世の中に、はなから優しさなど期待していない。だから、自分を犠牲にしてまで、
線の向こう側に優しくする必要はない。ということなのだろうか。
林田は仕事を辞める際、「病気に負けないで。俺も負けないから」とすずに告げる。しかし、そんな林田に「それは勝ち負けの
問題なのだろうか。それでもいい。でもそうじゃなくてもいいと思う。」とすずは答え、その手はある手話を形作る。
それは「受け入れる」という意味だった。
更には、祐太にも「線を引いているのは誰なんだ。他人が引いた線は消せなくても、自分が引いた線は消す事が出来る。
足が不自由でも、心が不自由でなければ」と言われ、ショックを受ける。線は予め引かれていたのではなく、林田自身が引いた
ものだったのかもしれない。線のこちら側に拘り、向こう側を受け入れない。林田が「負けまい」としていたのは、自分で勝手に
線引きした向こう側だったのかもしれない。そんな自分に気が付いた林田は、恋人を支える為に、海外渡航を中止する。
障がい者の方の心理を描くのは難しいと思うのだが、この展開には色々と考えさせられた。正直、祐太のセリフにはびっくりした。
語らせるには、随分と勇気がいるセリフだったと思う。


その祐太も悩んでいる。すずの父親には「残された時間をすずの為だけに生きてほしい」と懇願されるが、それは今の病院を
辞めることだ。その病院は、医師と患者のコミュニケーションを減らし、早く退院させようとする。
「利益を上げる為に患者を二の次にするのは、病院としていいことなのか」と祐太は言うが、「利益を度外視して、ボランティア
精神で突っ走るのは、医者としていいことなのか」と森下(田辺誠一)に返され、答える事が出来ない。
「世の中には絶対的に正しいことはないが、明確に間違っていることはある」という森下の言葉は真理だと思う。
医療の現場において、「明確に間違っていること」とはなんなんのか。それが今後に関わってくるのだろうか。
そして、祐太は、すずに別れを切り出されたことで、自分もすずとの間に線引きをしていたことに、初めて気付いたのでは
ないかと思う。祐太が引いていた線とは、病人とそうでない人だと思う。
「いつか病気が治る」ことを信じて、祐太なりに精いっぱい努力してきたことだろう。
でも、ある意味それは、病気のすずを受け入れていないということでもあるのではないか。
病気が日常となったすずの人生を受け入れていない。薄々それに気付いていたすずは、ずっと苦しんでいたのだ。
それを悟った祐太は、ついにすずにプロポーズする。「かかってくる電話を待つのはやめた」という言葉が印象的だった。
「いつか治る日」を待つより、今一緒にいられることを選ぶのも一つの愛の形ではないかと思う。
力技が功を奏して?嬉し泣きするすずの姿にホッとした(笑)。瑞希のことを考えると複雑だが。(クーラン)