黒執事II  最終回

黒執事(くろしつじ)」見た〜。ていうか、もうとっくに見ていた。で、物凄い喪失感。
こんな虚しさは「ケータイ捜査官7」の最終回を見て以来。 おかげで浮上するのにかなり時間かかった。
最後まで見て感じるのは私はミスリードをしてたと思う(爆)。トランシー家の真実や時間軸の設定等、
前作同様謎解きの部分でも楽しめるのかと思っていたが、この作品はそういうものではなかったようだ。
しかし、私らしく最後までミスリードしまくって終わりたい(爆)。以下ひっそりと感想。


ハンナ(CV:平野綾)はシエル(CV:坂本真綾)の魂ごとアロイス(CV:水樹奈々)と契約し、
その契約が果たされなければシエルの魂が表に出てくることはない。
契約内容は秘密だが、まずはセバスチャン(CV:小野大輔)とクロード(CV:櫻井孝宏)が闘い、
どちらかが死ななくてはならない。ということで、死の島で「魔剣 レーヴァテイン」を用いて悪魔の決闘。
そして、悪魔の「メリメリ対決(爆)」は、セバスが魔剣でクロードを貫きあっさりとカタがつく。
死の間際でシエルの魂への想いを語るクロードを、セバスは鼻で笑い「貴方はアロイスの魂により
翻弄され、彼の思惑によって死ぬ。貴方は最後まで、あの少年の支配下にあったのですよ」と断じる。
その言葉に「怠惰な悪魔の生活に波紋を作りだしたのなら、アロイスの魂もメリメリする
価値のある魂だったのかもしれない」と答え息絶えるクロード。


これは本人も気付いていないアロイスという子が生まれもった性なのかなと思ってしまった。
アロイスが生きている間に彼を愛してくれた人は両親と弟のルカ(CV:井上麻理奈)だけ。
その他は皆、彼を迫害し痛めつけた。クロードもたいして変わりはない。
アロイスに仕え忠誠の言葉を口にしても、一番欲しい愛情だけは決してくれない。
悪魔らしく心をいたぶるというやつ。それがアロイスを苦しめると分かっていてわざとやっている
フシもあった。村人やトランシー伯がアロイスを嬉々として痛めつけていたように、
クロードも「それ」に夢中になっていた時もあったと思う。
しかし、痛めつけられるたびアロイスは深く傷つくが、それと引き換えのように、
彼を苦しめた者達は皆、死に追いやられている(クロードも含め)。
本人は決して望んでいなかったろうが、結果的には関わった者を破滅に導く、ある意味
「魔少年一代記」だったのかもしれない。


クロードが死に満足かと問うシエルに「分からない。でももう分からないままでいい」と微笑み、
アロイスの魂はシエルの肉体から消え去る(ハンナに喰われた)。一人残されたシエルの魂。
「さぁ、セバスチャン、真実はすぐ目の前だ。すべてを知ってお前はどう動く!」
この回の坊ちゃんは、今までとは人が変わったくらいに凛々しい。「クロードとセバスに愛されて、
贅沢すぎのバツだよ!」と言うアロイスには「愛?気色が悪い!!」と凄んで見せるなど、
1期の潔い坊ちゃんに戻っている。その表情の裏には何が隠されているのか?


アロイスの契約は「クロードに認めてもらうこと」だった。契約は完了し、「私達に幸せが訪れた。
でも、シエルはあなたにとって死人も同然・・・」と言い残し、ハンナはシエルを抱いたまま
海へと身を投げるが、その唇はまだ何かを語っている。
それを聞き驚愕したセバスもシエルを追って海へと飛び込む。
セバスに抱えられたシエルの瞼が開く。しかしその眼はセバスと同じ色・・・。
そう、アロイスがハンナに願ったことは「コレ」。
クロードの愛がすぐ眼の前に見えているのに手に入れられなかった自分のように、
彼らにもシエルの魂が手に入らないようにすること。 
つまり、シエルが「悪魔」として蘇ること!
うわ〜!黒い!黒すぎるよ、アロイス!悪魔目発動の坊ちゃんの腹を思わず拳で貫くセパス・・・。


その頃ハンナは、崩れゆく島でクロードの亡骸に寄り添い「私達四人の愛は永遠の彼岸に辿りつく」と囁く。
女は怖し。彼女は全てをやってのけた。悪魔である彼女が餌を愛し、その願いを叶え、
しかし本能に従ってその魂はしっかり喰らった。アロイスの魂がハンナの腹の中でルカと再会するのは、
母胎回帰を連想させる。クロードのことは特に好きだという感情はなかったんじゃないかな。
ただ単にアロイスがご執心だから連れて行ったというだけ。彼は運悪く巻き込まれたのだ。
クロードは永い生に飽き飽きしているところにつけ込まれたのだと思う。
そして、彼女自身はお望みどおり自分に死を与えることが出来た。
結局このゲームの最大の勝者はハンナだったのだ。
しかし、アロイスの「全員全部幸せだ!」は、ちょっとテンション下がった。あれはないと思う。


いつものファントムハイヴ家の朝。いつもの通りセバスに起こされ朝の身支度をする坊ちゃん。
しかし、その瞳には時折悪魔目が閃き、あの指輪は放置されたまま。やっばり坊ちゃんは・・・、ううう。
そしてなにより執事のテンションが低い低い・・・。
シエルが訪ねてきたエリザベス(CV:田村ゆかり)と陰気なダンスを踊っている間、セバスは
劉(CV:遊佐浩二)・ソーマ・アグニ・葬儀屋・死神達に、しばらくロンドンを離れるのでと選別を届ける。
しかし、その箱の中には、シエルの名と「Who Died at Aug,26th.1889」と書かれたカードが・・・。
劉の謎解きは結局前作でセバスが見逃していたというオチだった。私は1期で見せた
劉の底知れない本性が好きだったので、本作でそれが微塵も描かれなかったのは非常に残念。
そして「行かないで!」とすがる使用人達に「屋敷は好きに使え。なんなら燃やしてもいい」と言い捨て、
ファントムハイヴ家を後にするシエルとセバス。


そして、ここからが肝。
「やつらの契約が完了したとき、お前がどう動くか楽しみにしていた。セバスチャン、
僕を手に掛けようとするとはな」
「本当に悪魔としてお目覚めになられたのか確かめる必要があると思いまして」
そのセバスの行為を、状況の正確な把握なら執事として正しい選択だと認めるシエル。
つまり、シエルは悪魔になったため、セバスは永遠にシエルの魂を食らう事は出来ない。
そして、あの薔薇迷宮でシエルはセバスに命令した。
「僕の魂を喰らうその時までお前は永遠に僕の執事だ」と。
そして、その命令にイエスと答えた以上、魂を食らえなくとも、セバスはあくまで悪魔の執事で
あり続けなければならない、永遠に・・・。
手間隙かけてディナーの準備をしたあげく、腹を空かしたまま、永遠に喰うことが叶わない
坊ちゃんに繋がれる哀れな悪魔・・・。どこまで行っても平行線の二人。
このゲームの最大の敗者はセバスチャンだったのだ。ああ可哀想・・・。


というドンデンガエシだったのだが、私は坊ちゃんが好きなので、どうしてもシエル本位で考えてしまう。
最初は、坊ちゃんが悪魔になったことに違和感を感じていたのだが、シエルがそれを受け入れたのは
ひとえに「執事の失態は主の自分が責任を持つ」という事だったのではないかと思う。
2期のセバスは正直どうしちゃったのかと言うくらいドジッコでしたよ。
感情ブレまくりで、シエルを三度も奪われた挙句のこの失態。
今から考えると、クロードの言うところの「あの人間に入れ込みすぎて悪魔のカンが鈍った」というのは、
まんざら外れてもいなかったと思う。でも、セバスに魂を食らわせることが出来なくなったシエルは、
そのかわりに自分自身をセバスに委ねようとしたのではないか。


というのも、原作で絶対的な力を持つ「契約」の力は、アニメ版2期の中では既に歪められていると
思えるからだ。
例えばセバスの契約印。契約印がある手が切り落とされたことでその力が弱まり、
セバスはシエルを奪われた。ならば、自らの手を切り落とし契約の力を弱めた上で、
デスサイズやレーヴァテインでシエルを殺害すれば、その呪縛から逃れられるはず。
つまり、悪魔同士の誓約も破棄され、悪魔が主を殺害するパターンも描かれた本作では既に「契約」
というものに拘束力はない。交わした者同士が守る意志があるかないかにかかっているのではないか。


それに、ハンナが「私を縊り殺せばいい」と言っていたのが気になる。色々な意味があるのだろうが、
「絞め殺す」というのが一般的だ。全ての攻撃は悪魔の致命傷にはならないらしいが、
絞め殺すのは有効なのかも。だとしたらですよ。坊ちゃんの身支度で毎朝リボンを結ぶセバスは、
いつでも絞め殺すのが可能なのですよ(物騒なハナシだ)。もしかしたら縊り殺したい衝動にも
駆られているのかもしれない。そして坊ちゃんがそれを知らないはずがない。
シエルは悪魔として目覚めた時から自らの生殺与奪の権をセバスに与えているのではないか。
実際に物凄い挑発してたしね。


見返りがないセバスには契約を守る理由もない。美学?それも見返りがあってこそ成立するもの。
ならば、何故セバスはシエルを殺さないのか?
というか、「シエルが悪魔になったのを確かめた」時点でセバスの敗北は決まっていたのだろう。
「確かめる」必要などない。節操もなく殺してしまえばよかったのだ。悪魔なら。
そこに何がしかの戸惑いがあったからこそすぐには殺せなかった。それは何故なのか。
「契約」があるから。それは嘘ではない。でもそれが全ての理由でもない。
セバスチャンは悪魔にあるまじき矛盾を抱えてしまったのではないですかね。
シエルは悪魔になる前にセバスに殺されると確信していたと思う。でも万が一悪魔として目覚めた時
には、魂をやれないかわりに気が済むまでセバスに付き合う覚悟をきめたのではないですかね。
もちろん主従として。


「いい気分だ、長い呪縛から解き放たれたような気がする・・・。お前は僕の執事・・・。」
「私は貴方の執事・・・。永遠に・・・。」
言葉だけ追うとなにやら劇甘だが、誇り高いシエルは悪魔として生き永らえるのは屈辱だろうし、
セバスにしてもいつまでも矛盾に浸っていたくない。悪魔の欲望に忠実になりたいだろう。
どちらが先に降参するかの、我慢比べでもあるのか?そして、悪魔も人間も行き着く先は同じ・・・。
う〜ん。ビターな終わり方だった(笑)。(ミスリードですので)


個人的には一期のラストの方が好きでしたね。信念や情熱を曲げずに貫いた。
その結果が例え死だとしても、私は構わないと思う方なので。
生き永らえても、キャラの性格や作品のトーンが変わるまでの心理的衝撃を与えるのは
いかがなものかとも思う(笑)。
作画は全体的にはとても素晴らしかったと思います。けど3期はどうかなあ・・・。
むしろ、生執事なら続けてもいいのではないかと思う(笑)。(クーラン)