任侠ヘルパー 第八回感想

既に第九回も放映されているが、今頃「任侠ヘルパー」第八回の感想を。
〈あらすじ〉彦一(草なぎ剛)は、隼會と敵対する鷲津組の組長・鷲津莞爾(竜雷太)が「タイヨウ」に
入居してきたことに驚く。事故で半身麻痺だが、金ならいくらでもあるはずの鷲津が「タイヨウ」に
やってきたことに、任侠ヘルパー達は疑いの目を向ける。
一方「ハートフルバード」本社では病状が進行する羽鳥(夏川結衣)に、秘書・日野(中別府葵)や
重役(相島一之)が反旗を翻す。涼太(加藤清史郎)は、そんな羽鳥の為、日々の予定や記録を書いて
家中に貼るのだった。その頃、彦一は施設から駆け出していくりこ(黒木メイサ)を目撃する。
4日前りこが組長を務める四方木連合が襲撃されたとの情報を六車(夕輝壽太)から聞かされたのだ。


今回は、なんと敵対する組長が来襲するというとんでもない回だった。
鷲津組の組長は、車椅子ながら堂々とした風格で現れる。弾除けも置かず無防備に入居する鷲津。
この入居に何らかの意図があるのか。こちらの正体には気付いていないようだが、鷲津の介護を
することに任侠ヘルパー達は納得できない。彦一はなんとその鷲津の担当ヘルパーにさせられる。


一方、鷲津は自分に個室が用意されず、二人部屋であることに不満を抱く。
さらに、食事も他の利用者と同じく食堂でとらされるなど、自分が特別扱いされないことにも苛つく。
この辺りは金持ち老人の典型的なわがままが描かれ、「案外予想通り」の鷲津像が見えてくる。
慣れない団体生活。不味い食事。時には認知症老人の突飛な行動も目に入る。
頭がハッキリしている彼にとっては耐えられそうもない。ストレスをぶちまける鷲津を見ていると、
次第にこの入居は彼本人には何の意図もないのではと思えてくる。


ハッキリとは語られないが、鷲津には家族はいないらしい。彼にとっては組が家族のようなもの
なのだろう。しかし、その組からバカデカい花は届いても、誰も彼を見舞いにはやってこない。
その事実に内心深く傷つく鷲津。
その頃、鷲津をタイヨウに放り込んだ幹部の尾国(鈴木一真)は四方木連合の若頭久米(田中哲司)を
襲撃していたのだ。


よく言われるが、「杯」を交わせば親子や兄弟の絆が出来るのが「極道」ではないのか。
その「親」を見舞いもせず、勝手な行動をとるのは「任侠道」に反してはいないのか。
しかし、そこで思ったのは、この「タイヨウ」の入居者は今の鷲津と似たような状況の人が多いのでは
ないかということ。何らかの事情で家族と会う機会があまりない老人は多い。
実の親子でもそうなのだから、「極道」と言えど、利用する価値がなくなりお荷物になれば、
追っ払われるのは当然のことなのだろうか。鷲津の部下の躾け方の問題なのか、それとも人は
損得という繋がり方しか出来ないのか、寒々とした思いが湧いてくる。
組長が入居するなどという話の運びは、正直無茶だと思っていたが、こういった展開になるとは
思わなかった。


ところが、鷲津はひょんなことから同室の夏夫(峯のぼる)と親しくなる。
脳梗塞の後遺症を患う夏夫は言葉は出ないし、体も動かせない。
周囲には呆けていると思われていたが、思考はしっかりしていたのだ。
歌を聴き、将棋を指し、仲良くなる二人。
彦一の目には、鷲津がただの孤独な老人にしか見えなくなってくる。
夏夫にも毎週小さな花束が届けられていた。なかなか見舞いに来られない息子が毎週送ってくる
もので、晴菜(仲里依紗)が活けてくれた花を見る夏夫はいつも嬉しそうだ。
鷲津もいつしかその花束を見ると心が和むようになる。
しかし、鷲津は、夏夫に送られてくるその花が、家族ではなく実は晴菜が購入しているものだと知って
しまう。鷲津は、頼んでもいないのにすぐにバレるようなウソをつくお前たちは偽善者だと激怒。
ついには施設を出ていくと言う。夏夫との交流に心温まる想いだった鷲津は自分自身もヘルパーに
騙されたように感じたのかもしれない。
いくら孤独な老人でもそんな情けをかけられることに、夏夫も自分も屈辱だと感じたのだろう。


一方、りこは刺傷した久米を見舞う。四日間もの間、自分には何も知らせなかった久米に
「お前達にとって自分はそんなに情けない、どうでもいい存在なのか」と問いかける。
「そりゃそうだ。それでもあんたは俺達の組長だ。コケにされるわけにはいかない。
俺らはあんたを盛り立てる覚悟をするしかない。」
思わず漏れる久米の本心に心を動かされるりこ。これまでりこを軽んじる態度をとってきた
久米だったが、りこの影響かそれとも彼自身思うところがあったのか、二人は歩み寄り始める。
それは四方木組の結束が強くなることを意味し、りこの背負う責任がますます重くなることでもあるのだ。


タイヨウでは、夏夫の容態が急変。病院には息子・渉(梶原善)や家族が到着する。
医師から、回復の見込みはなく、できるのは延命だけだと告げられた渉は、一日でも長く
生きてもらいたいと即座に延命治療を希望する。
しかし今度はいつ来られるんだと必死に尋ねる鷲津に答えることが出来ない。そんな渉に鷲津は激昂。
「こんな姿になってもまだこいつはお前を待ち続けなければならないのか!」と訴える。
自分の非を認めつつも、それでも延命治療を希望する渉に納得できない鷲津は、
せめて家族がいるあいだに死なせてやる、と言って夏夫の呼吸器を抜こうする。
それを止める彦一は、夏夫の生死は「家族」が決めることなのだと告げる。
うなだれた鷲津に、帰るぞ、と優しく声をかけ車椅子を押す彦一。
彦一には鷲津の気持ちがよくわかっていたに違いない。
彦一も鷲津も捨てられたもの同士。また、利用者にどんなに心を砕いても、彼らが本当に欲しいものも、
死も与えてやることは出来ない。それが出来るのは家族だけなのだ。
彦一やりこがヘルパーとなってから常に抱えていたジレンマを、鷲津は老人の立場で感じ彦一達と
同じように苦悩する。
介護施設も病院も姥捨て山だ。」 年をとってから、自分は独りなのだと気付くことは、どんなに辛く
寂しいことなのかと思う。そんな鷲津を見ているうちに彦一のわだかまりも消えていったのでは
ないだろうか。


しかし、そんな鷲津にりこが襲いかかる。久米を襲ったのは鷲津組だったのだ。制止する彦一も
間に合わない。どうなってしまうのか。そして羽鳥と涼太の明日は?次回なるべく早く見ます。
(クーラン)