「憎みきれないろくでなし」は「ラブ・ステップ」を踏んだ(ネタバレ)

本日は、東京国立近代美術館フィルムセンターにおける特集「逝ける映画人を偲んで」の一篇、
村川透監督作品「哀愁のサーキット(1972年日活製作)」を鑑賞した。


主演は峰岸隆之介(のちの峰岸徹)。
石川セリが出てるのと、音楽をピコこと樋口康雄が手掛けているのがお楽しみ。


しかし、あんなにもセリ&ピコの「パセリと野の花」の楽曲が大胆に使われているとは知らなんだ。
「鳥が逃げたわ」は、劇中、別の人が唄ってる(口パク)。かつてセリさんは「ダンスはうまく踊れない」
を他人が唄ったことに憤慨したという逸話があったが、これはよかったのか!?
そんなセリさんは、ほんとにちょこっとクラブ歌手として出演するにとどまっていた。

Seri sings Pico - パセリと野の花+13

Seri sings Pico - パセリと野の花+13

あらすじ
   ヒップなカー・レーサー(峰岸)と流行歌手(木山佳)のひとときのアバンチュール。
   しかし、旅の途中、二人の感情には微妙なズレが生じる。
   ふたりでどこかに行ってしまいたいと願う女と
   ひとときだけ楽しければそれでいいと思う男。
   重苦しい空気が二人を支配する。
  (シケたツラで、ドライブ・インの不味そうなカレーをつつく描写が秀逸)


   そして、旅が終わる。
   いつものように幕があき、恋の歌を唄う女のもとに、
   男の死の知らせが届く…。


本作の主人公は、女性に対してだけでなく、人生全般に対して、どこか本気じゃない。
昨日は昨日で、どこかで浮かれて過ごしたはずだが、忘れてしまったロクデナシ
恋なんて、廻る廻る回転木馬
そんな、根無し草のドンファン


これは、村川監督の前作「白い指の戯れ」の主人公と似ていなくもない。
しかし「白い…」は、実生活もリアルにそんな感じの荒木一郎が演じているので説得力があった。
これに対し、第二の赤木圭一郎だったはずのオレがロマンポルノ!?って感じの当時の峰岸氏には、
焦燥感が漂ってどうも違う。


とはいうものの、バイプレーヤーとしての活躍が目立った峰岸氏の若き日の主演作が、
初公開時の日活系のどの劇場よりも規模の大きいフィルムセンター大ホールで上映され、
満席に近い観客に迎えられたという事実。
これは、作品にとっても峰岸氏にとっても幸福な瞬間であったと思う。


このプログラム・ピクチャーの小品は、忘れ去られることなく、多くのひとがスクリーンで再会すること
を望んでたんだ。
(時間つぶしに入場した人も多少はいただろうが)
シルバー・ボディのコルベット・スティングレイの疾走シーンはおおいに大スクリーンに映えていた。


(参考)
本作の主人公のモデルである福沢幸雄の追悼盤
(こんなレコードが存在すること自体、ヒップ!)

サウンドポエジー・サチオ

サウンドポエジー・サチオ