念願叶う

ところで、この日の私の用事とはこちら↓
 池袋「新文芸座」で催されている小津安二郎特集。
小津安二郎と言えば世界に名だたる映画監督だが、なぜか数年に一度ブームがやってくる。
約20年前にもブームが巻き起こり、私もその時ごたぶんに洩れず小津作品にはまってしまった。
もちろん全作を見たわけではないが、その独特の演出とカット割りがもたらす不思議なリズムと
緊張感はいつ見ても心地よく感じる。しかし、劇場で観る機会は少ない。
私も映画館で観たのは「東京物語」だけ。なので今回是非観てみたかったのだ。


この日上映されたのは「彼岸花」「お早う」。両作とも以前テレビ放映された際ビデオに録画して見た。
私的目玉は「彼岸花」(出演:佐分利信田中絹代有馬稲子山本富士子久我美子佐田啓二)
小津監督作初のカラー作品だ。そのせいだろうか?
初めて見た時、画づくりに凝っているという印象を受けたが、改めて観てもそれは変わらなかった。
「赤いやかん」「赤い座布団」等「赤い小物」を差し色のように使っていて、画面を引き立たせている。
小津作品のセットを大画面のカラーで見ることが出来て感慨深いものがあった。


物語は娘の結婚に最後まで抵抗する父親の傷心の日々をユーモラスに描いている。
両親に相談も紹介もせず会社の同僚と付き合っていた娘が許せず、いつまでも意地を張る父親。
この父親がかなり頑固でそのメランコリックな心情描写はやや冗長に感じる。
その分、ラストの和解の余韻が深まってはいるんですけどね。
奥さん役の田中絹代の演技におかしみと凄みを感じた。
こんな程度で「背いた」なんて言われてしまうとは、今では考えられない話だけど、
昔はこれが当たり前だったのね。
ちなみに、写真は映画館に展示されていたポスターを激写しましたが、本作にはこの三人が
一同に会するシーンはございません。ポスターの為に撮られたスチールなのかしら。


機会があれば、私的小津監督最高傑作「麦秋」をいつか劇場で観てみたいですね。 (クーラン)

麦秋 [DVD] COS-022

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