アイシテル〜海容〜 第二回感想

既に第三回が放映されているのに、今頃「アイシテル〜海容〜」第二回の感想を。
〈あらすじ〉小学生の母親として、また妻として、ごく普通の生活を送っていた主婦の野口さつき
稲森いずみ)。しかし5年生の息子・智也(嘉数一星)が、小沢聖子(板谷由夏)の息子・清貴
佐藤詩音)を殺害した罪で警察に保護されてしまった。
淡々と殺人を認める智也に、さつきと夫の和彦(山本太郎)は「自分たちの育て方が間違っていたのか」
と悩み苦しむ。いっぽう聖子も「私がランチのために15分家を空けなければ、キヨタンはいなく
ならなかった」という後悔の念に苦しむ。
そんな聖子を娘の美帆子(川島海荷)や夫・秀昭(佐野史郎)は心配する。


う〜ん、重い。加害者側も被害者側の家族も痛々しすぎる。
どんな形であれ、暴力は当事者だけではなくその家族の生活や心まで破壊するということを、
改めて感じた。
キヨタンの死を認めることが出来ず幻に話しかける聖子。
それを見守ることしか出来ない美帆子の姿が哀しい。
両親に溺愛されている弟を内心疎ましく思っていた自分を責めているのだ。
聖子のように直接的な理由ではないのに、「そんな些細な感情」までも罪に感じてしまう姿が見ていて
辛い。号泣する聖子に対して、声を抑えて泣くことしか出来ない美帆子が可哀想でならなかった。
しかし、被害者側が犯人の実態を知るのが、警察からではなくテレビからだという事実に衝撃を受けた。
加害者の人権保護の為か。現在も被害者側は犯人の情報を事前に知らされることはないのだろうか?


一方の野口家。こちらも事実を受け止めるしかない。
智也に拒絶され、今まで見たこともない息子の姿に愕然とする。
家には石が投げ込まれ、これから一生背負っていくものの重さを認識する。


今回も母親と父親で対応が分かれたのが印象的だった。
和彦が発した「智也に会うのが怖い」というセリフや行動には、とてもリアリティがあった。
子供がわからない。今まで自分達が育ててきたのは何者だったんだ?という絶望。
それでも会社大事で出社したあげく自宅謹慎を言い渡されて酔いつぶれる。
その姿はどうにも「逃げ」にとれてしまう。他に考えることを探しているというか、家族を守ることより、
まず先に自分を哀れんでいるように感じた。見ていて歯がゆいが、それも仕方がないことなのだと思う。
こんな時に自分を保ち続けていられるほどの強さがある人間なんているだろうか。


さつきの憔悴振りも痛々しい。ただ、今回考えたのは「謝る」という行為の重さについてだ。
清貴の葬儀が行われると知ったさつきは和彦の忠告も聞かず出かけていく。
清貴の家族に謝りたいという一心だったが、遺族の慟哭に打ちのめされ、名乗ることが出来ず
その場を立ち去る。土下座でも何でもして謝るのが筋だという考えもあるだろう。
しかし、罪の重さを受け止めているからこそ、軽々しい謝罪は出来ないという思いがある。
そういう考え方もあるのだと、初めて思い至った。
彼らが遺族に「謝罪」するまでに、どれだけのものを背負わなければならないのかと思うと、
辛い気持ちになった。


しかし、苦しみながらも、息子を案じ「智也が好きだ」と言えるさつきに、母親の本能を感じましたね。
さつきを包み込むように迎える母敏江(藤田弓子)にも。
母親ってこんなにも無条件に子供を受け入れられるものなのかと少し驚きました。
しかし、和彦とはすっかり別行動になっちゃて、この夫婦は大丈夫なのだろうか?


印象に残ったのは家庭調査官・富田(田中美佐子)の言葉。
「親子の関係は片思いの恋愛に似ている。相手のことを知ろうとすればするほど怖くなり、
なかなか近づけない。でも一歩を踏み出さないと何も始まらない。」
これ聞いて思ったんだけど、昔の親?って子供に対してそんなに気を遣ってました?
家族って一番近くて濃くて遠慮がない間柄だからこそ、傷つけたり傷つけられたりして、
無傷でいられる筈がない関係だと思うんですよね。
時と場合によっては、人の心に土足で踏み込むようなまねもするし、それに対する子供の心情なんて
いちいち気にかけてもいなかったと思うんだけど。(←ガサツな我が家だけか?)
お腹いっぱい食べさせて、暖かくして、たまに抱きしめてあげれば万事OK(?)という昭和の子育てに
比べ、平成の親御さんの多くは繊細で愛情深い子育てをしているんだなあと改めて実感しました。


しかし、マスコミや世間の悪意の描き方は大分甘いと感じた。
彼らが晒される悪意はこの程度のものでは済まないはずだ。
でも、このドラマで描きたいのは「そこ」ではないということなのだろう。
「悪い子」になってしまった自分を認識し両親を拒絶する智也も見ていて辛いし、
これ以上どす黒いものを見たくないしなあ。
ほんの僅かでもいい。このドラマに「救い」はやってくるのだろうか?(クーラン)