ありふれた奇跡 第九話

周回遅れだけど、今頃「ありふれた奇跡 第九話」の感想を。


今回気になったのは、加奈(仲間由紀恵)と翔太(加瀬亮)に対する家族の反応というか態度。
中城家は「加奈が子供を生めない体になった」という事実にようやく直面しているという感じ。
前回はあまりの衝撃で却って落ち着いているように見えた中城家だけど、徐々にその事実が
堪え始めてきている。
祖母の静江(八千草薫)は、前回一番衝撃を受けていたようだが今回は落ち着きを取り戻し
加奈を労わる。


父の朋也(岸辺一徳)は、段々とその事実が辛くなり加奈から目を背けているようだ。
それを静江に指摘され「そんなハキハキと割り切れない」と返す朋也。
まあ、でも朋也のこの反応は男親だし、ある程度は仕方ないんじゃないかなという気もします。
娘が妊娠して堕胎して産めなくなったなんて、父親として一番知りたくない事実じゃないんですかね。
それにこういうことで女が受ける衝撃は男性には理解しがたいんじゃないかと思う。
労わろうという気持ちも勿論あるけど、同じ位、腹立たしい部分と不憫に思う気持ちがないまぜになり、
加奈から目を背けているのでは。
とは言っても、父親として、いつまでも現実逃避してはいられないとは思うが。


母の桂(戸田恵子)にも加奈の事実は堪えているようだ。図らずも母娘水入らずで過ごすことになった夜
「小さかった加奈が、親より大変な経験をして苦しんで・・・。こんな時にどう対応していいのか
わからない。」と加奈にありのままに告げ涙する桂。
この桂には少しビックリしました。
最近まで加奈にとっての桂はしっかり者の母親というポジションで、桂もそれを自認してきたと思う。
母親として娘の苦しみに気付けなかった無力感と哀しみが彼女を「しっかりした母親」という役から
解放したのだろうか。翌朝、桂は自ら、立川との惨めな不倫経験を加奈に告白し、
「あったことは消えない。けど、自分を責めすぎないで」と語りかける。
それは母としての励ましというより、女としての痛みを共有する者同志が寄り沿う姿に思える。
お互い秘密を抱え距離を置いていた加奈と桂の新しい関係が始まるのかなあ。という感じがした。


そして田崎家。田崎家は「翔太と加奈の結婚」で大騒動
爺ちゃん(井川比佐志)は「子供を産めない加奈」との結婚に大反対。
翔太に「今はのぼせあがっているだけ。お前だって、本当は子供を欲しいと思っているはずだ。」と
頑固オヤジぶりを発揮する。しかも、翔太に「子供が要らないならそのセンを貫け!こっちも本気だ!」
と、ウザイくらい真正面で翔太と対峙する(笑)。


ところが、父親の重夫(風間杜夫)は、律子(キムラ緑子)との復縁を爺ちゃんに反対され、
家を出て元女房の元に走る。これには唖然とするというか、爆笑しました。
翔太が大変なのを知りながら、ナゼ今その話をする?そして出て行く?親なら、見守ってやれよ、
ていうか、あんたのその話はもう少し落ち着いてからでもいいじゃんか!と思ってしまいましたよ。
でもまあ、重夫だし、しょうがないかなあ。という気も(笑)。
それに、確かに重夫は、子供より少し自分を優先する部分があるけど、自分を捨てた元女房に
金を無心されて、ほうっておけないところもあり、情は深いのだと思う。
でも、男所帯とはいえ一人減ると、それはそれで寂しいもの。爺ちゃんだって堪えているように見える。
おかげで翔太は爺ちゃんを見捨てて、家を出て行くなんて出来なくなってしまったのだ。


それぞれの家族の思いで、八方ふさがりな感のする二人。
藤本(陣内孝則)には、「明日なんてないかもしれない。今が大事だろ。」と言われる。
この言葉に対する二人の回答?も気になりました。


「会いたいから会う」とデートをする二人。
しかし、加奈は得意の自己完結で「この日を最後に別れる」と決意。
周囲や自身の気持ちに苦しむ加奈には、「翔太との明日」は見えないらしいのだ。


その後、藤本(陣内孝則)と会った翔太。
「子供なんて考えてもなかったけど、加奈に言われるうち、やはり子供はいた方がいいと思うようにも
なった。でも加奈といると、いなくてもかまわないとも思う」と語る。
そんな翔太に藤本は「それが恋愛だ。将来や相手の本当のこともわからないまま、カーッとなる。」


その言葉に霧が晴れたような表情になる翔太。
色々考え過ぎて煮詰まっていたけど、答えは単純なところにあるということなのでしょうか。
先行きが見えない二人なのに、藤本に加奈のことをノロケる(としか思えない)翔太は、とてもイキイキと
して幸せそうに見える。
翔太は、例え、周囲の事を考え苦しんだとしても、加奈を諦める気はないのだ。
恋の喜びで「今」を生き「明日」につなげようとする翔太に、希望や強さすら感じた。


そのせいだろうか。私は翔太の「子供が欲しい」という気持ちと「加奈でなければ駄目だ」という気持ちは
矛盾しないように思えてきた。
それには藤本が提案した「養子里親制度」もアリなんじゃないかなあ。
爺ちゃんの意向とは違う形かもしれないげど。


しかし、二人が幸せになるには、加奈が自身に決着をつけ、腹を括らなければ話は始まらない。
静江さんも言っていたではないか。「理屈で答えちゃダメよ!」と。(クーラン)