浪花の華 第八話感想

ようやく追いついた。第八話「蘭方医の戦い」の感想をこっそりと(笑)。


〈あらすじ〉天游(蟹江敬三)に江戸行きを打診されるが、浮かない表情の章(窪田正孝)。
左近(栗山千明)に話したいが、言い出せない。
そんな時、思思斎塾に天游の旧友の蘭方医、日高(西園寺章雄)とその弟子、佐伯(加藤虎ノ介)が
訪ねてきた。日高に江戸での蘭学修業についての話を聞き、章は修業に身を入れる決意をする。
そんな折、章と耕介(杉浦太陽)は日高が短銃で撃たれた現場に出くわす。
章はその人混みの中に左近がいることに気がつく。
翌日、同心・新井(梶原善)が思思斎塾に現れ、章達に事情を問いただす。
実は日高には悪い噂があり、長崎から大量の短銃を運び込もうとしている、というのだ。
事情を確かめたい章は左近のもとを訪ねるが、左近の前で、若狭(池内博之)が章の江戸行きの件を
話してしまう。表情を変えることなく江戸行きを祝福してくれた左近に、章は一抹の寂しさを感じる。


今回のキモは章VS佐伯の二人の蘭方医の闘いでしょう。
結論で言えば、抜け荷で短銃を運び込もうとしていたのは佐伯で、それを知った師匠に罪を着せ
殺害したわけです。
何故そんなことをしたのかと問う章に、佐伯は「蘭学で世の中を変える為。蘭学で愚かな民百姓を導き、
新しい日本を作る為だ」と答える。
それに激しく反発する章。「蘭学で世の中を変えることなど出来ない」と言い切る。
「かつて自分も蘭学で全ての事柄が分かると思っていたが、今はそうは思わない。
世の中は分からない事だらけだ。」


たぶん、第一話の章は「蘭学で全てが分かる」と考えていたと思う。
しかし、世の中の矛盾や人間の真意等は、学問というモノサシだけで推し量ったり理解出来る類の
ものではない。章は今まで関わった様々な人達によってそれを理解してきたのだと思う。
蘭学で全てを分かったつもりになり、人々を上から導いて世の中を変えよう等という考えは
思い上がりでしかない。章はその傲慢さが許せなかったのだ。


確かに蘭学で人の命を救うことは出来る。でも、佐伯のように蘭学者でも人を殺す。
結局のところ、世の中を動かすのは「蘭学」や「短銃」等ではなく、それを扱う「人」で
なければならないのだ。幕末という混沌とした時代だからこそ。
緒形洪庵が後に優れた人材を輩出したという史実に充分繋がるエピソードではないかと思う。


左近のツンデレMaxも萌えました。
撃たれたかと思った章が無事なのを確認して、安堵のあまり震えだす左近殿。
な〜んか、超可愛いんですけど(爆)。今までのツン度が高かったので(笑)。


弾をはじいたのが、修理に出すようにと師匠から預かっていた道具だったのには、胸が熱くなりました。
思えば、師匠が章をパシラせてたのは、もちろんパシリが第一だけど、それ以外に章にもっと世間に
出て欲しいという考えもあったのだと思う。
おかげで章は左近と知り合い視野が広がったわけだけど、今度は章の命まで救ってしまったのだ。
「先生が、蘭学が守ってくれたんだ!」と章は叫んでいたけど、本当に章は左近にも師匠にも蘭学にも
大切に守られていると思う。


ラスト、章は自ら左近に「江戸に行く」と告げる。
江戸行きで高まる学問への情熱と、左近への想いゆえに行きたくないとも思う苦しさ。
相反する感情の嵐に悩みながら、章がようやく下した決断に静かに頷く左近。
非常に切ないシーンになってましたね。


次回はいよいよ最終回。
撃たれて池にダイブしてもしぶとく生き延びた佐伯が、なにやら巻き返しを図ってますが・・・。
そして、章と左近の別れと旅立ち。少し寂しいけど気合入ってます。(クーラン)