「俺達に墓はない」の志賀勝は30代だった!!

昔の30代ってスゴイ貫禄だよね。志賀勝の世界 名選集
そんな訳で、シネマヴェーラ渋谷で「東映セントラルフィルムの栄光
〜プロデューサー黒澤満の軌跡」
のなかの澤田幸弘監督作品「俺達に墓はない(1979年製作)」
を観ました。
もう何度も観ているわけですが、しつこくまた観ました。


劇中、甲斐バンド「HERO」が有線でかかってるんだけど、まさかその数年後本作のヒロインが甲斐氏と
結婚するとはねぇ。
(結婚後のかほりさんは甲斐バンドのライブ・ドキュメンタリー「HERE WE COME THE 4 SOUNDS
(監督:井出情児)」でチラっと、そのお姿を確認できた。)


それはさておき、本作は…
松田優作岩城滉一の二人がヤクザの資金源強奪を企てるも、同じようにこの金を狙っていた
志賀勝に先を越される。犯行を誤解(第1の誤解)され、ヤクザに拉致られる岩城。
志賀を追う優作は激しいカーチェイスののち、同じアウトロー同士手を組もうと意気投合。
ふたりは豚小屋に監禁されている岩城を救出する。
救出は成功するも、岩城は自分のいない間に女(竹田かほり)を優作が寝取ったのではと誤解
(第2の誤解)し疑心暗鬼。
その後、優作・志賀のふたりで第2の犯行に及ぶに至り、岩城の疑念はヒートアップ。
優作を裏切り、志賀を狙う岩城。これを優作の差し金だと誤解(第3の誤解)する志賀。
誤解が誤解を呼び殺し合う男達…。


以上の如く、その場の勢いで敵になったり味方になったりするアウトロー達の感情の揺れが
秀逸な田中陽造脚本の面白さ。
(このひとは本作ののち、全くジャンルの異なる「ツィゴイネルワイゼン」や「陽炎座」の脚本を
書いたりして正体不明)


加えて、「濡れた荒野を走れ」のアクション派澤田幸弘の激烈なアクション描写が作品を豊かに彩る。
何しろ、当時自動車免許持ってなかった優作故カーチェイス・シーンは編集でごまかざるを得ない
のだが、全く違和感のない迫力!当時の映画は公道無許可で車ジャンプさせてて愉快・痛快。
そして「濡れた…」同様、本作も悪人しか出てこない。正義感など微塵もない悪対悪のギラギラ
した世界。


で、描写は荒っぽいのですが、検問突破のアイデアなどユーモアもまじえ上手にさばいており細部の
計算は行き届いている。


このころ(1979年)は松田優作の絶頂期であり、同年「蘇える金狼」「処刑遊戯」と主演しており
恐ろしく充実した仕事ぶり。
で、本作は「蘇える…」「処刑…」などの完全無欠で孤独なアウトローの優作とは異なる
下世話で人間的な面が描かれ村川透演出とは異なる優作の魅力が発散されています。
優作氏はこのあとすぐ大幅な路線変更を行いアクション映画からは遠ざかってしまうのですが、
こういう作品をあと2,3本は観たかったものです。


ところで、この映画、昔ゴールデンタイムにTV放送されたことがあって、よい子も鑑賞可能な時間帯の
お茶の間にドーンとダッチ○イフのアップが映されて衝撃でした。嗚呼…昭和のエロ(○)


追記:
この映画で山谷初男扮する大人のおもちゃ屋さんは優作に拳銃売りさばいているんだけど
「大人のおもちゃ屋」=「拳銃の横流し」という図式は、平成の現在でも
「アフタースクール(内田けんじ監督 大泉洋堺雅人主演)」等に受け継がれており
コワイ…。