源氏物語千年紀 Genji  初回感想

先日よりフジテレビ・ノイタミナ枠で始まった「源氏物語千年紀 Genji」を見た。
監督は出崎統。当初大和和紀原作「あさきゆめみし」のアニメ化として計画されたものが、
結局、出崎氏オリジナルで「源氏物語」をアニメ化することになった曰く付きの作品(笑)。


ファーストシーンがいきなり光クンと女性の裸体だったので面食らう。
その後、PUFFYが唄うOP(椎名林檎作詞作曲)。
この曲が激しく合ってなくて、先行き不安が増していく。


ところがその後・・・。すみません、楽しんでしまいました。
話は桐壺の更衣の話はすっ飛ばして、光クン(CV櫻井孝宏)と藤壺の女御(CV玉川紗己子)との
運命の出会いから描く。


とにかく画面が美しいです。
御所に咲き誇る桜。広大な庭に降り積もる雪。凍った池の上を飛んでいく白鷺の群れ。
春の訪れを待つ梅の蕾。
日本人が胸の奥に記憶として持っている四季折々の美しい風景達を、おそらくCGを駆使しながら、
これでもかと堪能させてくれる。
しかし、これが表現できるのはアニメーションだからなのだ。
実写ではまずこんなロケは出来ないし、セットを組むのも大変だろう。
ありえないアングルで飛び交う鳥達の動きの演出を見て、感動を覚えた。


色使いも美しく、女性の着物等は到底古典の柄ではないと思うが、独自の色使いにハッと
させられるものもあった。着物を動かすのは今後の課題といったところなんですかね。


そして、今回力を入れているのは、光と闇の演出なのではないかということ。
透過光や入射光を多用しているのはもちろんのこと、薄暗い部屋にぽつんと灯りがともり、
ぼんやりと明るくなっていく様やそれでも部屋の隅に横たわる闇の描写等、素晴らしいと思った。
笙等を使った音楽も叙情的な演出に非常に効果をあげていると思う。


意外だったのは一話の段階では「止め絵」の演出を殆ど使っていなかったこと。
これになんらかの意志があるのかが気になる。
その代わり、スローモーションを効果的に使っていたような気がする。


そして、脚本。
野暮な言葉では決して本心を語らない大人の光クンと、寂しさを持て余して、藤壺の女御に目一杯の
告白をかます子供時代の光クンとの対比が一話で効果的に描かれていて面白かった。
藤壺の女御や語りをしている紫の上(おそらく)の話す言葉が大変雅で、それも時代劇を見ていると
いった感覚にさせてくれる。
(と同時に「おにいさまへ…」を見た感じにもさせてくれた・笑)
脚本は金春智子氏と出崎氏だが、今後気になるのは「源氏物語」を男目線で解釈するのか、
女目線で解釈するのかということだろう。


ただ、気になる点もいくつかある。
ファーストシーンは、光クンと女性の肌色多めな描写から始まったが、あの裸体はいかがなものか?
男は屈強過ぎるし、女は豊満過ぎる!ギリシャ神話じゃないんだから(笑)!


確かに杉野昭夫氏のキャラクターデザインは全くいまっぽくないし、あの演出を受け付けない人も
多いと思う。
しかし、30分間に自分の美の世界を凝縮してぶち込む出崎演出に私は久々に燃えました。
とりあえず、見続けます。(クーラン)