勧善懲悪ものの悩めるヒーローたち

バットマンの新作を観てから「無敵超人ザンボット3」のことを考えている。
守るべき人々に石ぶつけられるヒーローというのが共通しているからだ。


それまでも悩めるヒーローというのはあるにはあった。
たとえば円谷プロ制作の「ウルトラセブン」も
「侵略者から地球を守るに足る存在なのか、この人類は…!?」
と苦悩するモロボシダンの姿を描いてはいたが、ヒーローが迫害されることはなかった。
しかし、ザンボット3においては、
そもそも破壊者を主人公たるヒーロー側の神(じん)ファミリーが連れてきたかの如き
言われようで、誰からも賛同を得られない孤独な戦いを強いられるのだ。


最終話、「俺たち間違ってなかったよな…」と自問自答しながら、家族を皆殺しに
されても戦う主人公は、遂に破壊者を倒す。
戦いを終え、朝日に照らされるその時、無機質な兵器であるはずの主人公の乗るロボット
ザンボエースが泣いている。(ように見える)
そして、主人公を称えそこに集まってくる人々…。
このラストシーンをものにした本作は富野由悠季の最高傑作となった。


悩んだ末に狂気の沙汰の「あちら側」に行ってしまってしまえれば、まだ気持もラクだが
彼らはそうはならず、極めて理性的に事を成し遂げる(故に多くの犠牲を払うが)。
だからこそ、最終的に人々の理解を得られたラストシーンに我々は共感するのだ。


しかし、悩んだ末に狂気の沙汰の「あちら側」に行ってしまってしまうヒーローって
いるんだろうか?
例えば、工藤栄一監督作品「野獣刑事」で狂気のシャブ中泉谷しげる
連続強姦殺人者益岡徹を追い詰める緒形拳扮するデカはそう見えなくもないが、
アレは一種の猟犬で、本能的に獲物に喰らいついてるだけなんだよね。


故にバットマン
…もしクリストファー・ノーラン監督で三部作になるとしたら、最終的に
クリスチャン・ベール扮するブルース・ウェインバットマンもまた
「俺たち間違ってなかったよな…」と
マイケル・ケイン扮するアルフレッド卿に呟くのであろうか…。(○)