あの日、あの時、あの場所で

NHK「SONGS」にCHARA が出ていたので、録画して見た。
娘のすみれちゃんが、ティーンエイジャーになったと語っており、ビックリする。


CHARA が結婚すると知った時のことはよく憶えている。
池袋の旧文芸座が映画館の横に前売券も売るマニアックな本屋を経営していた。
映画の本がたくさんあって、中に入ると常に濃い空気が流れている(笑)。
小さな空間に、お客さんが身を寄せ合って本を物色していて、R30夫婦もよくそこで
立ち読みをしていた。


その日、店番のオネーサンが友達と興奮しながら話をするのが、聞こえてきた。
「chara、結婚するんだってっ!!妊娠してるらしいよ!」
「うそっ!誰とっ?」
「『新宿鮫』で犯人やってた人だって!」
「・・・だれ?」
既に『新宿鮫』を観ていた私の脳裏には、その時「キッチュ」(と言わないか今は)の
顔が浮かんでいた・・・。


新宿鮫』を観た方だったら分かると思うが、あの映画における、浅野忠信の存在感は
それほど薄かったのだ(そして、愉快犯?を演じた「松尾貴史」の怪演ぶりがすごかった)。
あの時、私達を含めほとんどの人が、浅野を知らなかったというか気づかなかった。
しかし、今ほどではないものの音楽を聞いている女性に人気があったcharaが、
新宿鮫』の顔も思い出せないような俳優と結婚したというニュースは相当私の中に
ひっかかったし、彼自身に強く興味をもった。


後日、ある雑誌に、その「浅野忠信」の写真が小さく載っていた。
なんてことないその写真を見た時、本当に驚いた。「新宿鮫」では感じなかったというか、
いままで他の誰からも感じたことのない種類の「雰囲気」(としか言いようがない)を
纏っているように見えたからだ。
charaと知り合った岩井俊二作品の他にも、既に何作か映画出演が決定しているらしい。
「これは、絶対見にいかなくては…。」と興奮気味に誓ったことを憶えている。
その後、1年もたたないうちに、浅野忠信は当時の邦画を支える最重要人物になってしまった。


個人的に、90年代は邦画がかなり充実した時代だったと私は考えているのだが、
浅野がそれを牽引した一人であることは言うまでもないと思う。
また、役所広司ともども、それ以降の演技のあり方を変えてしまった人だとも思っている。
(もちろん、出演作全てが傑作だったわけではないが)
そして今では、アカデミー賞のレッドカーペットを歩く俳優に・・・。


あれから既に10年以上たってしまったわけだが、ふと考える。
あの時、90年代邦画の嵐の前触れが、目の前で起こっていたんだなあ。
今はもうない、旧文芸座の小さな本屋の中で。
そして、映画スターの誕生を告げる場所としてあれ以上ふさわしい場所はなかったと、
私は今でも思っている。(クーラン)


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浅野忠信は目立たないが、作品自体は面白いです。
当時観た時は荒井晴彦の脚本の素晴らしさに興奮しました。
真田広之奥田瑛二の濃ゆ〜い愛憎劇?もすごかったなあ(笑)。
あ、あと矢崎滋演じる鑑識がすごくよかったです。