おおきく振りかぶって

私は、昨年仕事を辞めて家にいるわけだが、真っ先にハマッた物が、この「おお振り」と
ちい散歩」だった(笑)。


ご存知、超人気野球漫画。
今更、説明の必要もないだろうが、超個人的記録としてよもやま話を書いてみる。


おお振り」は前から気になってはいたが、やっぱり本棚のスペースを考えると
手が出なかった。
ところが、ある日魔が差して、うっかり1巻を買ってしまったのが運のつき。
翌日から、毎日本屋に日参し続巻を買い求めてあっちゅー間に全巻を揃えてしまった。
ちょうどアニメも始まり、そっちも、もちろんガン見する。
原作は、何度も読み返している。


なぜ、こんなにハマッてしまったのかというと、私にとってはこの作品、
子供の頃にハマッた「キャプテン」を彷彿とさせるのだ。
ひぐちアサ先生は水島新司漫画の大ファンだそうで、ユニフォームや体の線の
ペンタッチや、集中線の使い方に、確かに水島新司先生の影響を強く感じる。


しかし、私はどうしても「キャプテン」を思い出してしまう。
両者とも「試合」をとにかく丁寧に書く。
試合をじっくり描くことによって「野球にかけるひたむきさ」がひしひしと
伝わってくる。
バッテリーやそれに対峙するバッター、野手の思考も丁寧に描かれるので、
私みたいに実際に野球をやらない者でも、話の流れが理解できるし、
緊張感も会得出来る。とにかく、集中して読むことを要される作品だ。
この二作を読むと「野球ってホントに頭を使うスポーツなんだなあ」と思いますよ。
(頭使わないスポーツってのもないんでしょうけど)
一試合読み終わると、心地良い疲労感を覚える(笑)。


でも「おお振り」と「キャプテン」で決定的に違う点は、野球を書くことによって
「登場人物の内面」も描いていることだと思う。
主人公でピッチャーの三橋は中学時代にマウンドに固執したことによって、
チームメイトに徹底的に嫌われ、元々内向的な性格が更に、
人の目を見てまともに話せない位卑屈になってしまっている。
対するキャッチャーの阿部もシニア時代にオレ様な先輩ピッチャーに散々振り回され、
すっかり投手嫌いのキャッチャーに。
この投手不信のキャッチャーって設定もある意味相当驚いた。


それなのに、この二人何で野球やってるのかね?というところなのですが、
もちろん第一は野球狂だからです(笑)。で、第二の理由なんだけど。


人って他人に認められて、初めて自分というものが確立できる部分って
絶対あると思うのね。
それは例えば「仕事」とかにも言えることだと思うんだけど。
で、この二人って野球に関して言えば「認めてもらってない」人達なのだ。
チームメイトにシカトされたり、ピッチャーとの信頼関係がまったく築けなかったり。
野球に関しては自分の存在意義を見失ってるというか、それを強く求めている。
特に三橋は、野球をやリ続けてなければ、アイデンティティが確立できないと言うべきか。
ま、そんなに堅苦しい話ではないんだけど(笑)。
とにかく、練習や試合を丁寧に描き、ひとつのチームが徐々に形になっていく過程を
描くことによって、登場人物の長大な成長の物語をも描いているのです。
(つまりは、そんなにすぐには変わらない)


あと「おお振り」は相手チームの「人格」を相当書き込んでいる点も「キャプテン」
違うところかも。
その為、読むとどちらにも感情移入してしまう。
どちらも、人格を持った素晴らしいチームなので、
多面的にストーリーを楽しむことが出来る。


いささか強引に持ち込みすぎたが、あくまでも超個人的意見だし、
私は両作を比べて優劣をつけるつもりはまったくない。そのくらい両作品を愛している。


ちなみに「おお振り」最新刊は、「眠れる大器」キャプテン花井の精神的覚醒を書きながら、
「真剣に野球に取り組む『チーム』とはどうあるべきか」を対戦相手の側からも描き出している。
毎試合毎に克服するテーマを設定し、色々と伏線を張りながら、核心をあぶりだす
ひぐち先生のネームには毎回感服しています。次の巻出るのはいつかなー。(クーラン)

おおきく振りかぶって(10) (アフタヌーンKC)

おおきく振りかぶって(10) (アフタヌーンKC)