「ミスト」【完全ネタバレ】

私は中間管理職でアル。問題発生時は係員から判断を仰がれる立場だ。
そんな事オレに聞かれても…と思っても口には出せない。
冷静さを装いつつ、状況を認識し的確な判断を下さなければならない。
しかし、結果として判断を誤り所属長に睨まれることも度々だ…。


映画「ミスト」を観て、嗚呼この主人公はオレだ…と思ってしまったヨ。それはさておき…。
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とある田舎町に発生したなぞの「霧」…そこには何か魔物が潜んでいる。
霧におおわれたスーパーマーケット。店内から出ることは出来ない。
出れば魔物の餌食になる。極限状態におかれた人々のとった行動は…。


無名のキャスト。(唯一馴染みのあるのはピーター・ハイアムズの佳作「アウトランド」の頼れる
女医フランセス・スタンハーゲンのみ。しかし地味だ)
限定された脱出不可能な空間。(つまりやり方によってはワンセットで安く撮れる)
そこに監禁されエゴを剥き出しの人間ドラマ。
というとかつての12チャンネルのグラインドハウス映画を思い出すが流石フランク・ダラボン
ジョージ・A・ロメロの「細菌兵器に襲われた街」に匹敵する秀作をものにした。


意外に早くモンスターを見せてしまうので、この先どう観客の興味を引くのかと思ったが、
中盤以降は、スーパーマーケットに閉じ込められた人々のドラマを丁寧に描き出す。


狂信的なクリスチャンの骨董屋…
チビ・デブ・ハゲの冴えない風貌だが、実は最も頼りになりカッコイイ副店長…
融通のきかない黒人弁護士(これは賢い黒人が主役のロメロ映画の裏返し)
自分の意見が全く無いアホ技師…それぞれに上手く描けており、演じる役者も好演。


そしてラスト…悪化する一方の状況で、自らの信念を貫き行動した主人公は極めてまっとうな
判断をしていたが、最後の判断をミスった。結果、絶望的な最悪の幕切れを迎える。
何も行動せずスーパーマーケットに残ってた人々のほうが無事に保護されたかもしれない…
この皮肉で後味の悪い、しかし、人生なんてこんなものかも的秀逸さはどうだ!
エンド・クレジット…終わることなく鳴り響くヘリコプターのプロペラ音が不安感を増幅させる。


もともと、霧(ミスト)の中に潜むなにか、という実態のはっきりしない恐怖とは
先行きに漠然とした不安を抱える今のオレ達のやり場の無い心情のリアルな反映である訳で
これはまさに今という時代をすくいとった見事な映画。(○)