野獣狩り

シネマアートン下北沢須川栄三監督作品「野獣狩り(1973年東宝)」を観る。
大島やすいち著の「おやこ刑事」の元ネタ的作品か。
伴淳三郎の人情刑事と藤岡弘の熱血刑事が親子という設定。
この設定及び親子の身長差まで「おやこ刑事」、同工異句デス。


冒頭、イキナリ藤岡、デカ長をブン殴り「なにが正義か」ロックンロールって感じで、
女(渚ようこ、もとい渚まゆみ)の処にシケ込みコトに及ぶワイルドぶり。
若き藤岡の黒光りする上半身の逞さがコワいっす。


そんな折、大手清涼飲料メーカーの社長が「黒の戦線」を標榜する過激派グループに
誘拐される事件が勃発。


俺はこの煮えたぎる熱情を、このヤマにぶつけるゼ!とばかり藤岡の執念の大捜査線が始まる…?
タイトルは「野獣狩り」だし、その後はさぞや暑苦しい劇画タッチの展開か?と思いきや、
さにあらず。中盤以降は、グッと軌道修正します。


野獣死すべし-復讐のメカニック、野獣狩り野獣死すべし-復讐のメカニック、野獣狩り野獣死すべし-復讐のメカニック、野獣狩り












藤岡は、走って犯人を乗せたタクシーを追っかけたりもするが「最も危険な遊戯」の
松田優作のように追いついたりしないし、カッコよく一撃で射殺したりもしない。
この辺サスペンス・アクションとしてどうよ、もう少しケレン味あっても…って気もするが、
当時のこの種の映画にアリガチなプッってふいてしまうなトンデモな部分は全く無い。


この作品の見どころは何といっても木村大作によって撮影された素晴らしい映像の数々。
明け方、伴淳が証拠探してさすらう町のブールトーンの美しさ。
更に、同僚が重症を負った病院で、藤岡・伴淳の無念を代弁するかの如く
窓を打ち付ける雨の物悲しさ。
はたまた、過激派グループに連れ去られた藤岡を探し、刑事達が銀座の
歩行者天国の雑踏を、裏通りを走る…カメラもアクティブに走る、この躍動感!
これがこの作品の魅力。
加えてソフト・ロック・ドライヴィンで再評価も著しい村井邦彦のグルーヴィな音楽も作品を盛り上げる。


なんかニュープリントだったし、
ミッキー・ロークの吹替えでお馴染みの安原義人が1シーン出てたり
(刑事に群がる新聞記者のひとり?やけに声に張りがある人がいたけどアレかな)
よかった、よかった、と帰宅して
キ○マ旬報別冊世界映画作品・記録全集の当該作品の項を読むと
「過激派への一方的な憎悪に満ちた凡作」とひとことで粉砕。


そうですかー?


30年以上前の作品、ですが、劇場満員。この現状がこの作品に対する何よりの評価だ。(○)