「ケータイ捜査官7 」初回感想 

遅ればせながら「ケータイ捜査官7」の初回感想を。想像以上に出来が良い。
ていうか、スタッフはそうそうたるメンツと知ってはいたが、
実は見る前には多少の不安を感じていた。
だって「歩くケータイ」だぜー。どうなのよ、これ?
しかし「特撮番組の初回に拡大60分」をもぎとるという製作側の並々ならぬ気合を
感じてもいたので期待半分で見てみた。すると・・・面白かったっ。


ストーリーはこんな感じ。http://yahoo.tv-bank.com/k_tai7/


個人的に面白いと思ったところを挙げておこうと思う。
まず第一にCG描写のセンスがいいということ。
私自身はCGがあまり好きではないが、第一話を見た限りでは、CGにありがちな安っぽい
薄っぺらな描写は極力避けていたと思う。
例えば重機が暴走するシーンは重力を感じさせ、デフォルメの加減も程よく仕上がっている。
実写との合成も非常によく出来ている。
(しかし車が飛んでくるシーンはいらないと思う。ああいうやっすい描写は映画館の予告で
死ぬほど見せられているのでウンザリだ)


そして特筆すべきは「フォンブレイバー」の描写だろう。
現在、CGの技術は確かに進んでいるが、それを魅力的に動かすセンスを持つ人というのは
案外少ないのでは?と私は思っている。
しかしこの「7」意外に魅力的に動かしているのだ。
最初HPでコレを見た時はどうなることかと思ったが、動き出すと案外表情がある。
ちっちゃい体で走ったり、うつむき加減に座ったりする姿に、こちらもなにがしかの
感情が湧いてくる。
それはCGスタッフが上手に演技をつけているというか演出させているわけだ。
CG担当はProduction I.GOLM。はあ〜。さすがですな。

ケータイ捜査官7 DXフォンブレイバー7

ケータイ捜査官7 DXフォンブレイバー7

第二に脚本と演出が巧く噛み合っているということ。
正直、今の段階では脚本や設定に斬新なもの感じることは無い。
重器のプログラムが書き換えられて暴走するシーンは「機動警察パトレイバー the Movie」を
思い出すし、人間と「フォンブレイバー」で活躍するという設定は、昔からある
「ハイテク機器(死語)」と人間のバディものと捉えられる
(例:ナイトライダー、マックスヘッドルーム)。


しかし、目新しさはないが、非常にうまい脚本と演出だと感心した。
重症の滝本に促され、ケイタは死にもの狂いで逃げ出すが思い返して戻り半狂乱で立ち向かう。
こういう展開ってこのテの話では別に珍しいことではない。主人公がこう動かないと
話は進まない(笑)。
だが、その行為を滝本は「君は優しい。」と評する。
その時気付いたのだが、事件前にケイタが友達に携帯をかけながら、見ず知らずの人が
落とした小銭を拾ってあげるシーンがあった。
あまりにも何気ない動きなので見落としがちだが、こういうシーンを入れるのと入れないの
とでは、ケイタというキャラクターに対する印象が変わってくる。
この動きで彼が普段から何気なく人に親切に出来る気質を持った子なんだと観客に
印象付けている。
小銭ひとつで何を大袈裟なという方もいるとは思うが、それすらも出来ない人間は大勢いる。
彼が大変な時に戻ってきたのは、「主人公」だからではなく、そういう優しい子だからなんだ
ということが無理なく理解出来ると思う。


事態を鎮圧し滝本の組織に保護された後、滝本とケイタがぽつぽつと会話をするシーンが
とてもいい。
会話自体は何てことない内容なのだが、腰を据えて見せることで、この二人が短い時間で
お互いを思いやり理解しあえたことが、本当によく伝わってくる。
この瞬間、二人の間で何かが受け継がれたのだ。


事態が急展開して滝本はケイタにこの事件を任せることにするのだが、この展開は本来なら
無理ある話だ。組織に人がいるのに素人の子供に任せるなんてありえない。
しかし、この二人の間に何かが通った瞬間を見た観客はおかしいと思いながらも、
その展開に納得せざるを得ないのである。う〜ん、巧い(笑)!


しかし、ラストだけは意外だった。なんと滝本が死んでしまったのだ。
これを観た観客はケイタが投げ込まれた世界、そしてこれから一年かけて進むストーリーが
決して予定調和なシロモノではないことが予想できる。
なにしろ、第一話にして、ダークサイドに堕ちたと思われる「フォンブレイバー」の存在も
披露しているのだ。


一年かけてドラマを作るということとは、主人公(少年)が一年かけて成長する物語を作ると
いうこと。
最近の特撮に詳しいというわけではないが成功例では「仮面ライダー響鬼」(かろうじて)を
思い出す。
しかし、滝本が死にケイタには導いてくれる「師匠」がいない。
彼には響鬼さんもいなければ、オビ・ワンもいないのだ。
これから、彼が成長するのは全て自力(と7によって)だ。
アナキンのようにダークサイドに堕ちそうになる瞬間もあるのかもしれない。
しかし、そんな時彼を支えるのは、この第一話で滝本と過ごした時間なのではないか。
そんな気がする。


初回は「選ばれし者」等ではない「優しいヒーロー」の誕生をじっくり描くことで、
「子供番組だが子供のご機嫌伺いはしない」という作り手の本気を見せつけた。
今後も尻すぼみとならないように期待する。(クーラン)