「未来講師めぐる」総評

今更だけど、ドラマ「未来講師めぐる」が終了した。概ね面白かったというか、毎回超笑えた。
感動に残るという類のドラマではないが、私は毎回楽しみにしていた。


主演の深田・ドロンジョ・恭子については、以前書いたことがある
(しかし私は深田のファンというわけではない)。
このドラマについても「深田恭子」の限界を見極める為に、毎回リングに上がるような気持ちで
見ていたが軽々とリミットを越えてくる演技に毎度完膚なきまでに叩きのめされる気分だった。
特に9話の異常なテンションには開いた口が塞がらなかった。 

未来講師めぐる DVD BOX

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宮藤官九郎の脚本も相変わらず小ネタ満載で面白かったと思う。
しかし、本作を見て思うのは、クドカンも私も年とったのかなあ。ということである。


以前、「タイガー&ドラゴン」が放映されている時に、クドカンが雑誌のインタビューで
「今までは書けなかったこっぱずかしい部分を、そろそろ前面に出して書いてもいいんじゃないか
と思っている。」みたいなことを言っていた。
実際「タイガー&ドラゴン」は落語家の師弟愛を中心としたホームドラマ?で、彼の言葉が
反映されているような気がしていた。
その後の連ドラ脚本はなんと昼ドラ「我輩は主婦である」。次が本作である。


でこの「未来講師めぐる」だが、ヒロインのめぐるは12歳で親と別居、祖父と暮らす塾講師だ。
彼女の周りにはそれぞれに問題を抱えた児童がいるが、結構家族間に悩む生徒も
多かったと思う。
それを「満腹になると他人の20年後の姿が見える能力」をもつめぐるがすったもんだして
事件解決。という内容。 


以前彼が書いた「木更津キャッツアイ」では、余命半年であることを一緒にツルむ仲間には
打ち明けても、父子家庭の父親に告げることが出来ないという親子関係や、定職につかず
ひがな一日ビールを飲んでダベッている若い人の生態?が描かれていて、それか妙に
リアルに感じた。
逆に本作はリアルさは感じない。けれども、
「家族って結構大事。大事ならやっぱり伝えなきゃ。理解しあわなきゃ。
今をキチンと生きなくちゃ。」
という、ともすればベタと捉えられそうな作り手の考えが、意外に明確にセリフとして
表されている(それが強く伝わってこないのは、演出の違いかなあと思う)。
また「キャッツ」では「万人に理解されずとも、構わずぶっちぎる!」的なノリで強引にドラマを
作っていた。
そこには付いてこれない人は切り捨てるくらいの挑戦的な意思も感じた。
しかし、本作は局の違いもあってか「とにかく皆に楽しんでもらおう」という姿勢があったような?
(それでもわからない人にはわからないだろうが)
その結果、もしかしたら今回のドラマ割と普通じゃん?と感じる人もいるのかもしれない。 


でも、それでいいのだ。クドカンも(少しは)年をとったが私も年をとった。
「死ぬまで、ナイフみたいにトガってる」必要なんてないのだ(たぶん)。
でも、トガッてないが丸くもなってない私は、「当たり前のこと」を「正しい」と誰かに
言ってもらいたい。
そんな気分になることもある。SF(すごく・ふつう)でいるのも大変なのだ。
爆笑の嵐の中、自分の家族、現在、未来。人と関わりあうことの意味。
「めぐる」を見ながら時々そんなことについて考え、優しい気持ちになれた。
次回作にも期待する。  


最後にもう一つ「ついに本領発揮?」な感のある武田真治が印象に残った。 (クーラン)