映画鑑賞

この日は、日中映画を観に出かけた。もちろんレディースデー狙い(笑)。


★「中学生円山」鑑賞。(監督・ 脚本:宮藤官九郎 出演:草なぎ剛、平岡拓真、仲村トオル、坂井真紀、遠藤賢司刈谷友衣子)
〈あらすじ〉ごく平凡な家族に囲まれて育った少年・円山克也は、思春期真っ盛りの中学2年生。あるエロい目的を達成する為、
極限まで身体を柔らかくする「自主トレ」を密かな日課にしていた。団地の上の階に謎めいたシングルファーザーの下井辰夫が
引越してくる。ほどなくして団地の傍で殺人事件が起こり、克也は下井の正体が殺し屋だという妄想を始めるが…。


中学生のエロい妄想てんこ盛りだが、全体のバランスを考えると、妄想シーン多すぎかなあ。
本筋とは絡まない妄想は削っても良かったように感じた。寄る年波のせいか、ちょっと疲れてしまったよ(笑)。
まあ、映画として、また一つの作品として考えると、決して完成度は高くはない。それでもやっばり面白いと感じた。
(以下、ネタバレ)

第一に平岡拓真クンの熱演。自分も思春期真っ只中の男子なのに、ホントに良く頑張ったと思う。
美少女を前にしてほぼ全裸で演技なんて、あまりのハードさにオバサン涙出そうになった。
第二に脚本・演出。イチイチ小ギャグを入れてくる脚本・演出が相変わらず巧い。
妄想シーンは弾まない時は全く弾まないんだけど、弾むヤツは物凄いおもろかった。でも、妄想じゃないシーンの方が爆笑。
特に、坂井真紀演じるお母さんと元韓流スターの電気屋さんとの「不倫なりかけ劇場」が笑えた。
妄想も現実もたいして変わりがない世の中というのも笑える。


第三は下井辰夫のキャラクター。中盤、下井は円山に「考えない大人になるくらいなら、死ぬまで中学生でいるべきだ」と言う。
自転車が乗れなくなってしまったあの日から、下井はずっと考え続けてたんだろうなあ。考えて考えて考えて、ああいう結論に達した。
補助輪無しの自転車に乗っている時、人は無意識に全身のバランス感覚を駆使して操作している。
あの日、下井は体のバランスと共に、別のバランス感覚も失くしてしまったのではないか。
「正しく生きたい」と願う心と、法律で定められた正義。それらが相反して苦しい時も、多くの人は心のバランスを駆使して
社会生活を営んでいく。下井はどうだったのか。振り切ったつもりでも、そうなりきれない部分もあったのだろうか。
でなきゃ、他人の妄想ノートであっても、あんなことがあったのに「中学生」をヒーローとして設定するのは我慢できないと思う。
それに下井は自分をヒーローとして扱わなかった。ヒーローとして設定したのは円山の父で、彼は子煩悩でフルーツが好きな
平凡なサラリーマン。でもそれこそが本来、下井がなりたかった、なっていたはずの男だったのだと思う。
「正しく生きたい」と振り切れながらも、円山の妄想ノートの中で下井が「正義」を託したのは、中学生の円山と彼の平凡な
家族だった。下井は無意識にそこで心のバランスを保っていたのかもしれない。
下井の部屋がちょっと独特で、団地なのに巨大な魚の画があちこちに描いてあって、まるで深海みたいだった。
あの海の底で彼は何を想っていたのか、ついつい考えてしまう。


まあでも最後の戦闘シーンは、円山の悲願達成の後なので、もしかしたらそこらへんは全て円山の妄想なのかもしれないなあ。
ていうか、全編が壮大な妄想だったりしてね。それだったら、最高に面白いですな(笑)。(クーラン)