一人酒

この日オットは呑み会。私も一人酒する。
ということで今日のつまみ

  • 厚揚げと野菜の煮物 カレー風味(昨日の残り)
  • もやし・ピーマン・人参のナムル(昨日の残り)
  • 枝豆    紹興酒できめる


★大奥〜誕生[有功・家光篇]最終回鑑賞。
〈あらすじ〉家光(多部未華子)は、お玉(田中聖)との間に徳子姫を出産する。家光は、三人の姫の中で誰が一番、将軍の器かと、
有功(堺雅人)に尋ねる。家光は、もう子は産めぬ体と自覚していたのだ。しかし有功は、大奥総取締という立場から返事を控えると、
世継ぎ問題はまだ先の話だと、家光も話を収める。お玉は徳子姫に、いつか将軍になるのだと言い聞かせ、それを有功も望んでいると
信じていた。そんな時、家光の体調に異変が…。家光の容態は? 世継ぎ問題は? そして、有功はどうするのか?


いよいよ最終回。有功にとって、二つの大きな別れが描かれていた。
一つは玉栄との別れ。玉栄を自分の分身のように思っていた有功は、自分の代わりに家光との間に子を生してくれと頼み込み、
そして徳子姫が生まれた。しかし、徳子の誕生は決定的に二人の間を分かつものとなってしまった。
玉栄の子は、自分の子供同然に思えるほどの存在になると、有功は確信していたのだと思う。その頃の有功は、玉栄の子は
自分の子の代わりとして、家光と自分との結びつきを更に強くする唯一のものと、考えていたのかもしれない。
しかし有功は、心だけで家光と繋がるという道を選び、更に大奥総取締という公の立場で家光に仕える身となってしまった。
今の有功は、「玉栄と自分対お夏との闘い」などという狭い了見で、世継ぎ問題を考えることが出来なくなってしまったのだ。
玉栄の子供に深い思い入れはあっても、天下国家が乱れる争いごとの種を蒔くことは、有功には出来なかった。
それこそ、家光が一番憂えることだからだ。しかし、玉栄は違う。なにがなんでも、徳子を次期将軍にと考える。
可能性が少しでもあるのなら、目に入れても痛くないほどの可愛い我が子を、権力の頂点に据えたいというのは、
親なら誰でも抱いてしまう願望だと思う。子供の為なら、どんなにくだらなくて愚かしい真似も出来てしまうのが親なのだ。
徳子を将軍に推してくれなかった有功を恨めしく思いながらも、「有功様の為さることは、私は何でも・・・」と受け入れる玉栄。
しかし、二人の間には、どうしようもない隔たりが出来てしまったことに、お互い気が付いていたと思う。
有功よりも大切な存在を得たことで玉栄は変わってしまった。そして、二人は別れなくてはならなくなった。
有功は玉栄を家光のもとに侍らすべきではなかったのかもしれない。けれど、有功と家光に巻き込まれる形になってしまったとはいえ、
玉栄は後悔していないと思う。そして、有功がこの大奥で生き抜いてこられたのは、玉栄の支えなくしてはあり得なかった。
それだけは事実で、これからもこの二人はそれを胸に生きていくのだと思う。


そして、もう一つは、最愛の人・家光との別れ。
その昔「子が孕めぬ時は共に死のう」と約束した二人。死の床で「ようやくその時が来たの」と呟く家光に、有功は頷く。
しかし家光は「やはり駄目だ。そなたは生きよ。将軍となる千代の為に・・・いや、わしの為に生きよ。亡き後も、わしの為だけに!」
と告げる。原作にはない「わしの為だけに生きよ!」という言葉に、家光の思いが込められていて泣けた。
家光の存在だけが、有功の生きる意味だった。そんな有功に「生き続けろ」というのは酷でもある。
しかし、徳川幕府と大奥の為に生きることは、ひいては家光の為に生きることと同じこと。家光は、有功に生を全うして、
この国の行く末を見届けてほしかったのだと思う。そこには、いつまでも自分のことを忘れないでいてほしいという女心も
滲ませている。有功のことを誰よりも理解しているからこそ、言える言葉。二人の強い結びつきに涙した。
「好きだったぞ。たとえ体の繋がりはなくとも。だからこそ、そなたは他の誰とも違う、わしにとって特別であった。
これでよかったのだな。 わしと、そなたとは・・・。」
子が生せなくても、体の繋がりがなくとも、ずっと互いを大切に想いあい、深く愛しあってきた二人だった。
他に替わりなどない、最後は完全無欠な対の存在として終わった。
家光に、ひとり死に化粧を施す有功。神々しくも美しい光景だった。ようやく自分だけのものとなった家光の唇に、慈しむように
触れる有功の姿に涙した。


家光は、死後の殉死を禁じていたが、その禁を破る者もいた。禁を守る松平に、何故後を追わないのかと詰め寄る娘・輝綱に
松平は言う。「私には、まだ為すべきことがある。死ぬほうがたやすいのだぞ。」
この言葉が、本作の全てだと思う。家光も有功も、苦しんで苦しんで、死んだ方がマシだと思う瞬間さえあった。
それでも、懸命に生きて為すべきことを為して、家光は生を生き切った。
幸せだろうが、不幸せだろうが、嬉しかろうが、苦しかろうが、生まれたからには人は生きなくてはならない。
生きるということの、本質的な意義を、家光という存在を通して深く考えさせられた。


全体的には、照明や演出で若干の不満があるものの、脚本の脚色等がうまく機能していて、登場人物の心理をより分かりやすく
していたと思う。俳優陣は、堺さんはさすがの演技。なにより、家光を演じた多部さんの演技に感動。
見る前は不安だったが、杞憂に過ぎなかった。冒頭の傍若無人な若様から、恋する女性の可愛らしさ、愛するが故の苦悩、
堂々とした女将軍ぷり、涙を誘う臨終と、気迫漲る演技で、最初から最後まで引き込まれた。毎回、楽しみました!
(クーラン)