「家政婦のミタ」第4回感想

<あらすじ>母親の死の真相を知った阿須田家の子供達は家出し、うらら(相武紗季)の元に身を寄せる。
残された恵一(長谷川博己)は三田(松嶋菜々子)を解雇。家に戻ることを望む希衣(本田望結)は、三田を雇い、
恵一と結(忽那汐里)らを仲直りさせてほしいと頼む。


子供達が出て行った翌朝、ミタが作った和朝食を見て「本当はずっと、朝は和食が食べたかった。でも子供達や女房はパンが
好きだったから。」と言う恵一。日常の小さな不満が積み重なったあげくに不倫・離婚するくらいなら、ちゃんと話し合えば
良かったのにと思う。
「ホントは子供なんか欲しくなかったのに、結婚してずっと流されてきたから、子供達を命がけで守るとか、心から愛していると、
胸を張って言うことがどうしても出来ない。きっと俺には、普通の人が持っている父親の愛情が欠落している。」
なるほど。自分よりも子供が大事だと、どうしても思うことが出来ない。こういう親は結構いるんじゃないかなと思った。
年をとろうが、会社で評価されようが、それが人間の成熟の度合いと比例するわけではない。親になったからといって、
100%子供に自身を捧げることが出来ない、どうしても自分を優先してしまう、育ちきれない部分を抱える人もいるのではないか。
けれど、子供というのは、自分は親の全部で愛されていると、無条件に信じている生き物だ。こういった親と子は、どういった関係を
築いていけば良いのだろうか。


阿須田家の子供達も揺れ動いている。厳しい祖父の家は馴染めないし、かといって、父を許せるはずがない。
「母は何故あんな父と結婚したのか?」と、結はうららに尋ねるが、「お兄さんのことがずっと好きだったみたいだし、
結も出来たから。」と返ってくる。「じゃあ、私は生まれない方が良かったんだ。」とショックをうける結。
捨てるどころか、最初から望まれていなかったのだろうか? 結の中で、父と自分達の根本的な関係性が揺らぎ始めている。
子供からすれば信じたくない事実だろう。


唯一の拠り所の美枝にも冷たくあしらわれ落ち込む恵一。「母親を自殺に追い込んだ父親は、どうしたら子供達に許してもらえるのか。」
とうららに相談するが、「俺はお前達の父親だ!この世で皆を一番愛している!と、伝えるしかない」と返される。
それが出来ないから悩んでいるのだ。今の恵一には、この世の誰よりも、自分よりも、子供が大事だと心から思うことが出来ない。
だから、「罪を犯した親が子供に許してもらう方法」を考えることで、論点をすり替えている。
それでも、子供達に許してもらいたいという気持ちがあることに少しだけ安心した。妻を死に追い込み、子供を捨てようとした罪は
重すぎるくらいだが、恵一は子供を憎んでいるわけではないし、虐待やネグレストをしていたわけでもない。
自分が悪く思われたくない一心からだろうが、ずっと優しい父親として接していた。たいして愛してもいないくせに、
自分勝手で酷い男だと思う。しかし、自分よりも子供を愛せない人は、どうあっても親にはなれないのだろうか?  


希衣はミタを雇うと、恵一と姉兄達とを仲直りさせてほしいと頼み、狂言誘拐騒動を起こす。勿論、必死で探しまくる恵一と結達。
皆は家族なのだから、当然愛し合っているのだから仲直りできると、希衣は単純に信じている。
でも、その当然のことが、いまや簡単に言い切れない状態になっているのだ。
「家に帰ってきてくれないか?」と頼む恵一に、結は尋ねる。
「本当に私達と一緒に暮らしたいの?私達を本当に愛している?不倫相手より、私達が大事だと言えるの?」
うららに促されても言えなかった言葉。妻が死んだ川で、まさにそれを問いかけてくる結に、恵一は引き攣った笑いで言い淀む
ことしか出来ない。


希衣は自宅にいた。駆けつけた皆を前に、2階ベランダ手すりで、「仲直りしないなら死ぬ!」と叫ぶ希衣。
バランスを崩して下に落ちるが、ミタがしっかり受け止めた。
安堵する皆を尻目に、恵一は「みんなどれほど心配したと思ってるんだ!」と思わず希衣の頬を殴る。恵一の激しい怒りに驚く一同。
しかし、ここでも恵一は希衣からあの問いを投げかけられる。
「希衣はお父さんのことが大好き。お父さんは希衣のこと好き?」そんな娘に、「わからないんだ・・・。」と恵一は答えてしまう。
父の答えに呆然とする希衣。決定的な言葉だった。とうとう子供達に、親としての愛情に自信がないと認めてしまった。
子供達からすれば、当然与えられていると、疑ったことすらない親の愛情が否定されてしまった。ある意味、アイデンティティの崩壊で、
非常なショックだろう。絶望した子供達は恵一を切り捨てる覚悟をする。子供達だけで自宅に住むので、家から出ていくようにと
要求する結に、頷くしかない恵一。恵一は、子供達の為に今後も働いてくれとミタに頼むと家を出ていく。


あの時、自分をあんなに求めてくる娘、それもあんな小さな子に、何故優しい言葉の一つでも言ってあげられないんだ。とは思った。
でも、それでは、今までと同じになってしまうのだ。恵一自身が納得してないのに、その場しのぎで、子供達を愛していると言い、
共に暮らしたとしても、後できっと恵一は後悔して、それを今度は子供達のせいにする。それでは同じことの繰り返しになってしまう。
こんな無責任な男が、どうして父親になってしまったのか。と思う。でも、もし彼らが親子でいたいのならば、ここから始めなければ
ならないのかなと感じる。父親になりきれない自分を自覚し、親になりきれない男が父親であることを認識する。
そこから、どう変わっていくかということなのかもしれない。確かに、恵一は父性愛も乏しいし、子供を捨てようとした親だ。
でも、子供の命が危険に晒された時は、その身を心から案じる。そういう父親でもあったのだ。
「今まで誰も叩いたことなどなかったのに、希衣にあんなことをしてしまった。」と悔やむ恵一にミタは答える。
「子供が悪いことをしたら、叱るのは当たり前です。あなたが父親なら。」
捨てようとした子供達に、見捨てられた夜、皮肉にも恵一は「悪いことをした子供を叱れる親」になった。
このまま、子供達に愛想をつかされたままの父親でいるつもりなのか。本当にイライラさせられるけど、ここは踏ん張ってほしいです。
(クーラン)