]「家政婦のミタ」第3回感想

<あらすじ>恵一(長谷川博己)と三田(松嶋菜々子)の会話から、結(忽那汐里)は母親の死が恵一の浮気を苦にした自殺だったことを
知り激怒。恵一は、兄弟達には黙っているようにと懇願する。怒りが収まらない結は、不倫相手について探ってきてほしいと
三田に頼むが休日を理由に断られて、自分で会いに行く。


悪い事は出来ないものだなあ(笑)。真相が結にバレた時の恵一の対応が、あまりにもひどくてがっかりした。会社では部下からの
信頼も厚いデキる男なのに、子供にはそれが全く発揮されないというのは、どういうことなのだろうか? 
「父親のくせに、 私達を捨てようとした!」と責める結に、「違う! 慰謝料だって養育費だって、ちゃんと出すつもりだった。」
と思わず返してしまう恵一。最悪の「答え」だわ・・・。金さえ出せば、父親の責任を果たしたことになるらしい。
驚くほど的確に地雷を踏んでいく恵一に唖然とする。挙句の果てには「翔達には言わないでくれ。お前と違ってまだ子供だから、
お母さんが自殺だと知ったら、どうなるか分からない」等と言い出す恵一。子供の為じゃない。自分が軽蔑されたくないからだ。
たいして愛してもいないくせに、嫌われたくはない。この期に及んで、まだこのスタンスを通そうとする恵一に呆れ返った。
大体こんな時だけ、結を大人扱いして、この子一人に苦しみを負わせようとしている。弟妹達を引き合いに出して我慢を強いるところは、
脅迫に近い。そんな恵一に「お父さんは汚い!」と叫ぶ結。不潔な父。やり方が汚い父。結の中の「お父さん」がガラガラと崩れていく。


揺れ動く結は、不倫相手の美枝(野波麻帆)のもとに乗り込み「母の死についてどう思っているのか」と詰問するが、恵一に阻止される。
「あの人に罪はないし、悪いのは全部俺だ。言いたいことがあるなら、直接俺に言えばいい」と言う恵一。
不倫が原因で人ひとり死んでいるわけだから、当事者に全く罪がないとは言い切れないような気がする。
それに、偉そうに語っているが、あれ以来、家に寄りつかず結を避けているのは恵一だ。
「口をききたくないなら構わないが、会社をクビになったら、お前達4人を養っていくことが出来なくなる。分かってるのか?」
と言い募る恵一の顔が、厭らしい大人のソレで、がっかりした。言ってることが殆ど脅迫になっていることにも気が付かないのか?
これで、結の堪忍袋の緒が切れてしまったような気がする。
母がくれた最後のメールを恋人に見せ、「「私がすぐに返事していたら、お母さんは死ななかったかもしれないのに・・・。」
と涙ぐむ結。父親の不倫、母親の自殺に対する負い目。色々なことを抱えて一人で苦しんでいる少女に胸が痛んだ。


翌朝、結は逆襲に出る。「あの人の会社に行って、全部バラしてきて。」とミタに頼む結。
もちろんミタは、忠実に、そして効果的に任務を果たす。
結の一連の言動は、いかにも感情的なふるまいに見えるのかもしれないが、私は、結の率直さが現れているのではないかと思う。
あれだけの苦悩を抱え、父親に押さえつけられても、結は、ストレスの矛先を第三者や自分自身に向けることはない。
学校で一暴れはしていたが、イジメに奔るわけでもなし、リストカットやクスリの自傷行為に奔ることもない。
流れで恋人とセックスしたが、自分が決めたことで後悔はしていない。行動の数々は、子供じみていて迷惑だとは思うが、
言動にブレはないと感じる。それに比べて恵一はどうか?
「絶対許さない。いつまでたっても逃げようとして。」と呟く結。恵一がいくら取り繕おうと、結には父の本当の姿が見える。
子供だからこそ、結の怒りは恵一に真っ直ぐ向けられている。それに応えることは、父親としての務めだと思うのだが。


その夜、疲れきった様子で帰宅した恵一。「お前のおかげで、プロジェクトの責任者から降ろされた。もしかしたら地方の
支社に飛ばされるかもしれない。」と開口一番、結を詰る。自分のキャリアに傷がついたというクレーム。第一声がコレか。
と思うと情けなかった。
結に促され、今日会社で言ってきた言葉を家族の前で公表するミタ。
「営業部課長の阿須田恵一は、経理部・風間美枝と1年前から不倫をしていたが、それが原因で、恵一の妻・凪子は自殺。
しかも、子供達には事故死だとウソをついていた。」
最後の一文を考えたのはどちらなのだろうか? 結?それともミタ? どちらにせよ、自殺の真相を子供達に隠していたことも含めてが、
恵一の罪の全て。結もミタもそう認識しているのだと感じた。
激怒する子供達に責められ「すまない・・・」と言い続ける恵一だったが、突如逆ギレ。
「俺は!!…もう疲れた。お母さん死んでから、何とかして良い父親になろうって頑張ったけど、もう無理だ。」
誰のせいでこんなことになっているのか。本気で謝るどころか、父親であることを放棄した恵一に愕然とする子供達。
震える声でこの家にいるもう一人の大人に尋ねる。「どうしたらいいと思う? ミタさん」
しかし返ってきたのは「それは、あなた達が決めることです。」という答え。
子供だろうが、大人だろうが、自分のことは自分で考え決断しなくてはならないのだ。
ミタの言葉に押され決断する結。「こんな家、出ていくしかない。こんな人と一緒には暮らせない」
弾かれたように家を飛び出していく子供達。恵一は止めることもしなかった。


残ったミタに心情を吐露する恵一。
「本当は結婚なんかしたくなかった。でも結ができて、堕ろせと言うなら死ぬと女房に脅された。父親になれる自信なんかなかった。
子供が生まれたら変わるのかなと思ったけどダメだった。あいつらと一緒にいると、自分の正体を見破られてるみたいで、
ずっと息苦しくて…。心安らぐのは、トイレにいる時と、車に乗っている時だけだった」
なるほど。恵一は「親に向いていない」のではない。「親になりたくない」人だった。
「自分第一」な人なのだろうと思う。美枝との恋愛も、相手に求めるだけで、自分のことしか考えていないように見えた。
学業・仕事等、自分自身に関することは、そつなくうまくこなせる。それは頑張った分、結果が自分に返ってくるからだ。
でも、「子育て」は違う。頑張っても自分自身に明確なメリットがあるわけではない。そんなことに、自分を捧げなくては
ならないのが嫌だったのかな。貰うことしか興味がなくて、「与える喜び」が理解できない人なのかもしれない。
とは言うものの、妻に脅されて結婚したと言う恵一には腹が立った。理由はどうあれ、結婚すると決めたのは自分自身だろう。
それも人のせいなのか? こんなはずじゃなかったと、被害者意識のまま、結婚生活をずっと送ってきたということなのだろうか?
一度出来てしまった流れは元には戻らないし、時間も後戻りはしない。そんなことも分からなかったのかな。
美枝と一緒になれば、子供がいない人生が取れ戻せるとでも思ったのだろうか。もちろん、そんなこと出来るわけがない。
一番、気の毒なのは4人の子供達だ。不甲斐ない男女の人生に巻き込まれて、勝手にこの世に生み出された。
それでも、この子達は生きていかなくてはならないのだ。自分自身に誇りを持ってほしいです。(クーラン)