「妖怪人間べム」初回感想

<あらすじ>ベム(亀梨和也)、ベラ(杏)、ベロ(鈴木 福)は妖怪人間。普段は人間の姿に化け、家族として生活しているが、
怒りや悲しみなど気持ちが高ぶると醜い妖怪の姿に戻ってしまう。彼らは正義感から人間を助けては、恐れ嫌われる暮らしを
数百年も続け、「早く人間になりたい」と願っていた。ある夜ベムは男を助け、刑事・夏目(北村一輝)と知り合う。


どうなることかと半信半疑で見てみましたが、ううう、もう号泣ですわ。アニメ版はもちろん見たことあるけど、全話は見てないし、
普通に好きだけど、そんなに思い入れはない状態。それでも、ツカミを見て、これはオリジナルのエッセンスを受け継ぐ作品だと思った。
ドラマはベム、ベラ、ベロが、悪人から人間を守るシーンから始まるが、彼らのファーストシーンは妖怪人間の姿として登場する。
助けてもらったくせに、醜い彼らに恐怖し逃げていく人間。何度も人間を助け、なのに、その度に傷つけられる。
冒頭から、異形の者の哀しみ・苦しみを描いている。これこそがオリジナルのテーマであり、その部分をしっかり描くことにより、
人間の業までもが炙り出されていく。


妖怪人間達は人目を避けて逃げるように旅を続ける生活をしている。助けを必要とする人間を見過ごすことが出来ず、その優しさの分、
哀しみを背負ってしまうべム。人間という生き物に懐疑的だが、人間になりたいという望みも捨てきれない矛盾を抱えるベラ。
そして無邪気で天真爛漫なベロ。オリジナルと造形や性格が違う部分もあるが、其々魅力的なキャラクターとして存在している。
そんな彼らが今まで受けてきた迫害も描かれていて、人間に騙され傷つけられてきた過去の回想シーンには、胸が痛んだ。
直接的な暴力シーンはないかわりに、迫害に奔る人間の醜悪さを、妖怪人間達の視点から執拗に描いている。
ここをしっかり描くことで、改めて異形の者の苦しみが真に迫ってきたと思う。
なにより、彼らが身を寄せ合って暮らす描写に涙を誘われる。いつか人間になった時に恥ずかしくないようにと、ベロに正しい
箸の持ち方を躾けるべムとベラ。人間になりたいと願う彼らの哀しい心が伝わってくる。


人間と距離を保とうとする妖怪人間達だが、夏目とその娘・優以(杉咲花) と知り合う。刑事である夏目は職業柄べムのことを
詮索してくるが、本来は心優しく、人の善意を信じる男。他者に相対するスタンスがべムと同じというのが興味深いと思った。
雨の中、夏目に差し掛けられた傘に入り歩いていたベムは気付いてしまう。より深く自分に傘を差し掛けているため、夏目の肩は
ずぶ濡れだということに。夏目からすれば、意識すらしていない彼の優しさ。他ならぬ自分に向けられた人間の優しさに涙を流すべム。
人間を守り、時には身も心も傷つけられているのに、こんな小さな優しさで感動するベムのいじらしさに涙した。
忌み嫌われながら、それでも人間に近づかずにはいられない。ベムの人間との関わり方が見えてくる。


その頃、夏目の周辺では殺人事件が起こっていた。犯人はなんと夏目が尊敬する先輩刑事畑山(光石研)だった。イジメによる自殺で
息子を亡くした畑山は、反省の様子がないイジメの首謀者に報復していたのだ。やがて、優以も巻き込んでの復讐劇となるが、
真の姿となった妖怪人間達が優以を救う。優以の無事な姿に思わず近寄る妖怪人間。しかし、それがベムとは知る由もない夏目は、
娘を守る為に目の前の「化け物」に銃弾を撃ち込む・・・。
優しさをくれた人の為に闘い、それでもやはり恐れ怖がられる。彼らの悲痛な叫びが聞こえてきた。


全てが終わり逮捕された畑山は事件の記憶を失っていた。何者かが、畑山の悪意を増幅させたらしいことが分かってくる。
元々の動機を考えれば、畑山に共感する部分が多く、この結末はやりきれない。しかし、記憶を失っていても、被害者を
憎悪していたのは事実だからと、罪を認める畑山の表情はどこかすっきりしていた。心の奥底で必死に押さえつけていた憎悪を
解放させたことによって、畑山は救われたのだろうか? だとしたら、人間の本質は悪意ということになる。
憎悪をまき散らす畑山を目のあたりにして、「せっかく人間に生まれたのに!」と叫んでいたベム。でも、ベムはまだ分かっていない。
人間だからなのだ。悪意に負けてしまう弱さも、善意を捧げる優しさも、異質なものを排除しようとするおぞましさも、人間だからこそ。
それを理解した時、尚、べム達は人間になりたいと願うのだろうか? 


オリジナルとは雰囲気を変えているものの、妖怪人間のクリーチャーというか、着ぐるみの造形に好感を持った。
顔がどこか哀しそうなのだ。涙を流さずに泣いている。人間の善意を信じたいと、泣きながら闘う彼らの苦悩が、いつか報われる日が
来てほしいと心から願う。(クーラン)