「家政婦のミタ」第2回感想

<あらすじ>妻が自分のせいで自殺したことを三田(松嶋菜々子)に吐露した恵一(長谷川博己)だが、子供達には秘密にして
欲しいと頼む。子供達は、母の仏壇を燃やすなど、頼まれたことは何でもやってしまう三田に興味を持ち始める。そんな中、
二男・海斗(綾部守人)は、カンニングをさせろと強要したり、同級生をいじめる古田に“お灸をすえて欲しい”と三田に頼む。


頼まれたことは何でもやってしまうミタさん。鞄の中には何でも入っているミタさん。ミタさんって、ドラえもんみたいだなと思う。
そうなると、のび太は阿須田家一同ということになるのだろうか?ただこのドラえもんは使い方を間違えれば凶器にも成りうる。
海斗に微妙に圧力をかけてくる古田。かなりな性悪顔で口癖が「マジ殺す」。モデルガンが決まりすぎで小学生とは思えない。
デフォルメしているとはいえ、イマドキの子供の綱渡りのサバイバル生活が垣間見えた。
「古田はいつも、クラスの誰かをいじめたりして、みんな困っている。いつまで経っても反省しないから、あいつをやっつけて」
とミタに頼む海斗。みんなの為とか、反省しないからとか言っても、結局は古田が怖くて自分では何もできないだけ。
そのことに気付いているくせに見ないフリをしているように思える。しかし、「お灸をすえて」という微妙な指示だった為か、
ミタは子供相手に容赦ない攻撃を加え、かえって問題に。突き放す担任を必死にとりなす父。無責任な担任に平謝りするだけの
恵一にがっかりした。息子は靴をドロだらけにされて張り紙を貼られている。イジメの現場に遭遇したのだから、担任の首根っこを
捕まえて突き付けてやればいいのにと思う。我が子がイジメにあっても丸く収めることしか考えていない。社会人としてのふるまい、
親としてのふるまいは別ものだと思うのだが。


学校にも行かず逃げ続ける海斗だが、イジメの魔の手からは逃れられない。追い詰められた海斗は「古田のこと、殺してくれないかな」
とミタに頼んでしまう。「世の中のためにも死んだほうがいいんだよ、あんなヤツ!」と世間まで引き合いに出して、自分を
正当化する海斗。しかし、任務を遂行するミタが古田をマジ殺しそうになると、止めに入る。そんな海斗に浴びせられる古田の罵声。
「逃げるのか!?また家政婦に頼んだりして、お前は最低だ。いい子ぶって偉そうな顔してるけど、おまえがやってることは
俺とどこが違うんだ!」 古田にしてはごもっともだと思った。海斗がやろうとしたことは、恐怖で人を制圧・排除すること。
それを自らの手でやるかやらないかの違いだけで、古田が海斗にしてきたことと、根本的に変わりはない。
第一、海斗は暴力をふるいたいわけではないのだ。ならばどうすればよいのか? 
問いかける海斗に「それはあなたが決めることです。」とミタは答える。そんなミタを見つめて「殴られたら痛い。
でも、逃げるよりはマシってこと?」と問いかける海斗。返事は無かったが、覚悟を決めて、古田に向かっていく。
「なんでイジメなんかするんだ!相手が死んじゃったらどうするんだ!いくら謝っても、後悔しても、もう何もできないんだぞ!? 
人が死ぬってマジ大変なことなんだぞ!わけ分からないくらい悲しくて辛くて悔しくて!嫌な気持ちがずっと残るんだからな!」
「人が死ぬ」ということの意味や苦しみを、今まさに味わっている海斗だからこそ、言える言葉だと思う。何度殴っても訴え続ける
海斗に怖れをなして古田は逃げていく。
ボコボコにされて「最悪だよ、俺。」と呟く海斗。確かにかっこ悪い。でも、そんな海斗を手当てしながら「私は大変良く
出来たと思います。」と告げるミタ。海斗は強くなったわけでもないし、イジメがおさまるという保証もない。
でも、本気の言葉は、時には強い力になるということに気が付いたのではないかと思う。そして、逃げていては、本気の言葉を
吐きだすことは出来ない。翌朝、覚悟を決めて学校に向かう海斗の顔が印象的だった。


この回の最大のサプライズは、母の自殺の原因。それは、恵一が部下との不倫の末、離婚を切り出したからだった。
4人も子供を産ませて妻に離婚を迫る男、夫に裏切られたからといって、4人も子供を遺して自殺する女。どちらの心理も理解できない。
離婚を切り出す時、自殺する時、「子供」は思い留まる要因にはならなかったのか。この人達にとって、子はかすがいにも
生きがいにもならなかったのか。親というよりも、男と女が前提の夫婦だったのだろうか。親になるのに向いていない人達
だったのかもしれないと感じる。


不倫相手の美枝(野波麻帆)に付きまとう恵一。美枝は恵一の妻が自殺したことで別れを切り出している。罪悪感もあるだろうし、
不倫の末の初婚で4人の子供の母親なんて、そりゃ尻込みするわ。それでも「俺はまだ美枝のことが・・・」と迫る恵一が
不可解で気味が悪かった。恵一の妻が自殺した時点で、二人の未来と恵一の子供達は切り離しては考えられないものになった。
それが分かっているから美枝は「私は家族にはなれない。あなたは父親に戻って」と言っているのに、恵一はいまだに美枝と
「レンアイ」するつもりでいる。美枝に支えてほしいのかもしれないが、相手に求めるだけで、自分本位でしか物事を考えようとしない。
それは、家族に対しても同じ。子供達が待っているというのに、どんなに気合を入れても、家に帰れない恵一。
愛人には追いすがり、子供からは逃げ続ける恵一に愕然とした。


恵一は人としての責任からも逃げようとする。妻が残した手紙と離婚届をミタに燃やすように頼む恵一。
「卑怯かもしれないけど、女房のことは子供達には言わないことにした。母親が自殺だと知って、どれだけショックを受けるか考えたら、
一生秘密にしておく方が子供達のためだと思うから」
子供の為なんかじゃない。自分が軽蔑されたくないからだろう。たいして愛してもいないくせに、嫌われたくはない。という
自分勝手な心理に辟易とした。でも、一番呆れたのは、その証拠隠滅をミタにやらせようとしたことだ。妻を死に追いやり、
子供達にはその事実を隠す。恵一が決めたのなら、そうすればいい。しかし、やるなら最後までやるべきだろう。
秘密と罪を背負い自分で妻の遺書に火をつけるべきだ。その意識からも逃れる為に、他人に証拠隠滅を押しつける。
どこまでも逃げ続ける恵一が哀しかった。


ミタはドラえもんでもあるけれど、自分を映す鏡でもあるのではないかと思う。ミタに何かを頼むこと、それは程度の差こそあれ、
自らの欲望を告白するのと同じことだと思う。その欲望はその人自身でもある。ミタに頼むことによって見えてくる自分自身に、
目を背ける人もいれば、はっきりと見据える人もいる。でも、鏡に映った自分に何を問いかけても答えは返ってこない。
答えは自分で探すしかないのだ。
しかし、この鏡は人でもある。阿須田家の人々がミタに自分自身を映すように、ミタも誰かに自分を映す日が来るのだろうか? 
それは阿須田家の人々なのだろうか? (クーラン)