「C」総評

フジテレビノイタミナ枠の「C」鑑賞終了。<あらすじ>東南アジア金融街破綻が引き起こした「C」により、影響下にあった国土と都市、人々は存在の記憶と共に消失した。
「C」の影響は日本にも及び、このまま市場の信用価値が落ちれば、消失現象が日本に連鎖してしまう。日本への影響を最小限に
抑えるために、三国(CV:細見大輔)は自らの特権を生かし、アントレ以外の人々の未来と自らの未来を引き換えに、多額の
ミダスマネーを発行する。その結果として、現実世界に及んだ深刻な影響を目の当たりにした公麿(CV:内山昂輝)は、
自らのアセット・真朱(CV:戸松遥)や人々の未来を守ろうと決意。現在を守ろうとする三国と、遂に決戦の時を迎える。


うん。面白いと思いつつも、結局最後まで微妙に覚めてた(笑)。
アントレの未来を担保にして金を融資する「金融街」。その「未来」についての、三國と公麿の考察が面白い。
「可能性の失われた未来しか残らないなら、現在がある意味がない」という公麿と、「未来といっても、しょせん現在からの地続き。
現在が失われれば、未来も存在はしない」と言う三國。
「未来」についての漠然とした考え方なら、個人的には三國の意見に近い。でも、これを経済活動に置き換えたらどうだろう。
三國が人々の未来と引き換えに発行するミダスマネーは、赤字国債発行を連想させる。現在の経済復興を優先すべきか、
未来の日本を守るべきか。簡単に答えが出る問題ではない。


紆余曲折の末、公麿は後者を選んだ。でも、三國の考えにも、かなり共鳴していたはずだ。
それが、自分のこと、周囲のこと・真朱のことを真剣に考えるうち、徐々にジェニファー・サトウ(CV:浅野まゆみ) にも共鳴していった。
三國とサトウは相反する考えだが、二人とも公麿を後を継ぐ者として欲しがった。それは、公麿に理解してもらうことで、
自らの考えの正当性を再確認したかったのだと感じる。そして、ああいう結論になったが、公麿は二人のうち一方だけを
肯定したり否定したりは、していないんじゃないかと思う。その過程が面白かった。


ミダス銀行の「上」の人とやらも、そう思っていたのではないだろうか?三國にしか与えなかった特権を公麿にも与えようとする。
現実世界でも金、つまり市場価値とは「信用」を意味する。「上」の人とやらは、公麿の言う「未来」も信用に値すると
考えたのではないか。
「どんなものにも、必ず人類をより良く導くための意味がある」と最後に公麿に説く「上」の人(笑)のお言葉にも、それは現れていた。
でも、このセリフを神の啓示のように語ってほしくはなかったかな。公麿自身の思考の結論として位置付けてほしかったような気もする。
ただ、その後のオチを考えるとそれも仕方がないのか?


「C」が日本を通過。しかし、三國の暴走を食い止める為、サトウ達がしかけた「円の大暴落」の結果、円もろとも市場に
流れていたミダスマネーもその価値がなくなり、「C」の連鎖は日本になんの影響も与えずに通り過ぎる。そして、三國との
戦いに勝った公麿は特権を行使、輪転機を逆回転して未来を買い戻すが、おそらく買い戻した未来は円暴落時点迄だった?
その結果、公麿が買い戻したこの国の未来は、国土は消滅しない代わりに、「円」が消失。ドル建ての社会になっていた・・・。
他にも微妙に変わっているような気がする世界。これは世界が再構築されたとも考えられる。こんな事が出来るのは、
それこそ「神」しかいないだろう。
三國がミダスマネーを発行した時に比べると、皆、明るくイキイキして見える世界。「円」が無くなろうが社会生活にさして
影響はないのだろうが、「円」が存在していたことを知る者としては、微妙に不気味な感覚もあった(笑)。


実際面白かったけど、ディールのテンポが早すぎて、技が持つ意味や力等、理解しきれない部分もあって、少し残念。
あと、個人的には三國の思考にも共感していたので、若干しんどかったですね(笑)。(クーラン)