四十九日のレシピ 第1回感想

<あらすじ>熱田良平(伊東四朗)の妻、乙美(風吹ジュン)が突然亡くなった。二週間後、生きる気力を失っていた熱田のもとを、
井本(徳永えり)という少女が訪れる。井本は乙美から頼まれていた四十九日までの家事を引き受けに来たと話し、乙美が残した
「レシピ」の存在を伝える。そこに東京で結婚生活を送っていた娘・百合子(和久井映見)が帰ってくる。彼女はある出来事から
結婚生活が破たんし、離婚届を残し実家に戻ってきたのだった。


原作読みたいと思ってたんだけど、躊躇するうち、先にドラマで見ることに。はあ〜、もうダメ。色々と辛すぎる。号泣ですわ(笑)。
百合子の騒動の元はいわゆる「不妊」。夫・浩行(宅間孝行)との間に子供が出来ないことを悩んだ百合子は仕事を辞め、家で
夫の母の介護をしながらずっと不妊治療に専念していた。しかし残念ながら子宝には恵まれずついに治療を諦めることに。
ところが、当の浩行が浮気をして、その相手との間に子供が出来てしまったのだ。
浩行の言うことがふるっている。「百合子を愛している。でも向こうも切れない・・・。」 
そんなことを言われた百合子は、自分が決断するしかないと、身を引いて自ら家を出たわけです。
こういうことは珍しくもないんだろうけど、女としてこれほど辛いことがあるかってくらいのシチュエーションで、
百合子の精一杯虚勢を張った青白い顔を見るとそれだけで泣けてくる。
怒鳴られても良平にはなかなかホントのことが言いだせない。父親をこれ以上心配させたくなかったのだと思う。


その良平も、差し出された弁当を邪険に断ったのが、妻・乙美との最後となり、そのことをとても悔やんでいる。
というか、それに象徴されるこれまでの妻への態度を悔いている。
良平も決して冷たい人というわけではない。そういう言い方しか出来ない、気が回らない人なのだ。典型的な「昭和の男」なのだ。
そして、乙美を亡くして心底打ちのめされているくせに百合子や井本の前では虚勢を張る。一人で哀しみに耐えようとするところは
親子そっくりだ。そして、百合子のちょっと頑なところも良平に似ているんじゃないかと思った。
いまいち噛みあわない頑固者親子。でも、良平が内緒で東京の浩行に会いに行き全てを知ってしまう。
半ギレしながら「お前は帰らなくていい!」と百合子に怒鳴る良平。
「浮気ぐらい我慢しろ!」と言っていたくせに。なにより、心配させたくなかったのに。互いを思いやるための秘密がこんな形で
露呈して、とにかく情けなくて滑稽で、「何やってるのよ・・・」としか言えない百合子の複雑な心境が胸に迫る。
互いへの気配りも似た者同志で、だからこそ言葉に出来なかった辛さを察しあう二人に涙した。


「迷った時は川にいくといいよ。そこには必ず答えがあるから」 生前、乙美はよくそう言っていたらしい。
しかし、川に行っても、抱える苦しみを拭い去るような答えは見つからず「何もないじゃない!」と思わず叫ぶ百合子。
川はあの世とつながっているという。実は百合子にとって乙美は継母で、乙美は時折川に行っては百合子の生母・真理に
語りかけていたらしい。でも、それだけだろうか。慣れない子育てや頑固な夫との関係を不安に感じる時もあったのかもしれない。
でもその都度、死者の魂に寄り添いながら、乙美は自分と向き合ってきたのだと思う。「答え」とやらは神の啓示のようなものでは
ないのだろう。百合子がそれを見つけたいのなら、乙美と同じように自分の心の声を聞かなければならないのだと思う。


自分の苦しみをポツポツと井本に語りだす百合子。夫も義母も子供が生まれたら私のことは忘れるだろう。
私には何も残らない。女として人として自分が価値の無い者に思えて仕方がない。
哀しみを堪えながら言葉を吐き出す百合子の涙を黙って拭う井本。傷ついた百合子を静かに労わる姿に包容力すら感じた。
乙美が生きていたら、たぶんこんな風に寄り添ったのだと思う。
「乙母は、子供を産まなかった乙母の人生は幸せだったのだろうか?」
ふと思ったことから、百合子は母と自分の人生を重ね合わせていく展開へ。続きを早く見なくては。(クーラン)