Mother 第六回感想

先日「Mother」第六回を見たので、今更ながら感想を。
〈あらすじ〉ふとした言葉から、継美(芦田愛菜)が奈緒松雪泰子)の実子ではないと察した
籐子(高畑淳子)は、継美を自宅へ帰すように諭す。
しかし、奈緒は全てを告白すると、鈴原家から戸籍を外してほしいと申し出て、家を出ていく決意をする。
一方、責任を感じた継美は奈緒に置き手紙を残し、行方をくらませてしまう。


今回も物凄い回だった。前回ようやく養母・籐子と心が通じ合った奈緒だが、今度は家族との別れが
待っていた。藤子から「家族よりあの子をとると言うなら、あなたは人でなしよ!」と迫られても、
継美を選ぶことに1mmの迷いもない奈緒。この人はいつの間にこんなに強くなっていたのかと驚いた。
二回辺りまではまだまだ「母親役」という感じで気概も感じられなかった。
でも、「間違ったこと」をしてもあの子の母親になりたかった。と話す今の奈緒は、
顔をしっかりあげて藤子の顔を見て語りかけている。
継美の母親は自分だけ。守れるのは自分だけだという思いが彼女をここまで強くしたのかと感じた。


その奈緒の心は継美にしっかり伝わっている。
だから、家族と離れようとする奈緒の為に一人室蘭に帰ろうとする。自分の為でも仁美(尾野真千子)の
為でもない。奈緒の為だ。継美にとっても奈緒は「大事」な人なのだ。
奈緒への手紙の「一人でも大丈夫だよ」には号泣。この子の「大丈夫」にはホントに泣かされる。
こんな小さな子がこれまで何度不甲斐ない大人に「大丈夫」と言ってきたのかと思うと涙が出た。
これまで、奈緒をめぐる藤子と葉菜(田中裕子)の葛藤が凄すぎて、奈緒と継美の絆の強さについて
あまり考えたことがなかった。でも、一緒に過ごす日々の積み重ねは互いをかけがえのない存在に
していたのだと思う。ようやく探し出した継美を抱きしめ
「他の誰もいらないの。継美とお母さんのいるところが二人の帰る場所なの」と告げる奈緒に、
継美に対する全くぶれない気持ちを感じた。


奈緒の継美への執着というか強い想いは、例えば藤吉(山本耕史)のようにただ状況を知っただけの
人には理解しがたいものだろう。
藤子は「正義感だけで全ての可愛そうな子を救うなんて出来るわけがない」と言っていたけど、
奈緒にとっては正義感でもなければ、全てのかわいそうな子達を救いたいとも思っていない。
奈緒はただただ継美を愛したいだけだ。継美の母親として無意識に存在意義を感じたい部分も
あるのだろうが、今となっては目の前の子供に愛情を注いでやりたいだけなのだと思う。
そこに理由なんてない。「出会ってしまったから」ということなのだろう。
そして、法に則っているかいないかで、藤子と奈緒のやっていることは本質的には変りがない。
やっぱり親子なんだなあと感じる。


継美の家出騒動後、鈴原家から籍を抜かれる展開も胸が痛む。
実子を守るために養女の奈緒を切り捨てたということなのかもしれないが、見方を変えれば
切り捨てられたのは藤子達のほうかもしれない。
ようやく娘と心が通じ合えたと思ったら、今度は縁もゆかりもない少女に奈緒を奪われる藤子の哀しみを
思うとやりきれない。30年大切に育ててきた娘なのにあまりにも哀しい子別れとなってしまった。
奈緒が家族でなくなることを必死に止めようとする果歩(倉科カナ)の姿にも涙を誘われる。
奈緒の出自も明らかにされ、あっという間に壊れていく鈴原家。
それでも、継美と鈴原家の為に籍を抜く奈緒の後姿は、継美の眼にはどう映っていたのだろうかと思う。
継美は奈緒の愛情は信じられると思ったのではないかな。奈緒はどんなことがあっても継美を
捨てる事はない。だから継美はもう自分で自分を捨てる必要はないのだ。


奈緒にとっては、藤子の愛を素直に受け取れるようになった矢先に籍を抜くことになり、
皮肉な展開となった。それでも奈緒は家族のもとに帰ってきて良かったのだと思う。
帰らなければ、藤子の愛にも気付かず、自分の継美への思いも信じられなかった。
結果的に壊してしまったけど、鈴原家は奈緒にとって間違いなく家族だったのだと思う。
鈴原家にとっても、紙きれ一枚でこれまでの家族の歴史や関係が無かったことになる筈もない。
奈緒で繋がっていた継美と鈴原家の縁は無くなり、また親子二人だけになってしまった。
今度は二人で家族になっていくのかなと思っていたら葉菜が登場。重病の筈なのに大丈夫なのか?


しかし、「出会ってしまった」子供を深く愛する藤子と奈緒
産んでも苦労する命に愛を感じる芽衣酒井若菜)。
冷静に考えれば選ばないかもしれない道を歩いてしまうのは、やっぱり女性だからなのでしょうか?
(クーラン)