Mother 第四回感想

先日「Mother」第四回を見たので、今更ながら感想を。
〈あらすじ〉継美(芦田愛菜)と実家で世話になることになった奈緒松雪泰子)。
事情を知らない母・籐子(高畑淳子)は継美を孫として可愛がり、通学させるよう促す。
一方、葉菜(田中裕子)は図書館で北海道の新聞に載る女児遭難記事を見つける。
そんな中、記者の藤吉(山本耕史)は継美が行方不明の怜南と同一人物だと確信し接触を図る。


今回は「継美の就学」を巡っての話だった。
親の身元が明らかでなければ子供が通学できないのは当たり前。奈緒もそれを知らないはずはない。
でも、二人だけで逃げて生きていくつもりだった彼女には、子供の学校の重要性にまで考えが
及ばなかったのかもしれない。ずっと孤独に生きてきた奈緒には、藤子の言う
「学校は勉強だけではなく、社会の仲間入りをする第一歩になる」という発想は浮かばなかっただろう。
二人だけで生きるには限界があったと感じる。


継美にはおばあちゃんやおばさん、そして「うっかりさん」という友達が出来た。
継美に「おばあちゃん」と呼ばれて思わず抱きしめる藤子。
継美の正体が分かっても「味方になる」と言う葉菜。二人とも血縁でもない継美を心から可愛がる。
それは継美が、藤子にとっては奈緒が産んだ子。葉菜にとっては奈緒が愛する子だからだ。
その一点で彼女達は血のつながりを越えている。彼らを結ぶのは間違いなく奈緒で、
そういう意味でも人の繋がりについて考えさせられる。


そして、向き合わなければ分からないこともある。芽衣酒井若菜)の自分に対する嫉妬の感情も、
今回一緒に暮らさなければ奈緒は気付くことはなかった。
しかし、藤子が娘達を同じように育てようと気遣うあまり、奈緒は遠慮がちになり、
芽衣は姉と自分との扱いの違いに傷ついていたとは。
こういうことの積み重ねが芽衣のハングリー精神を培ったのだろうか?
奈緒にとっては思いもしない言葉だったろう。
また芽衣の妊娠がこういう形で母性を問いかけてくる展開には驚いた。
生まれる前の母性。身篭った子供が重病を抱えていても産むのか?
今までやりたいように生きてきた人が、初めて自分の思い通りにならないことに直面しているのだ。
混乱すると思う。打算でいけば破談云々もあるし、例え産んでも病気で死んでしまうかもと思うと
怖いだろう。でも、例え結婚の手段であっても、今までお腹にいた子供になんの感情も
湧かないなんてことはない。そんな自分にも芽衣は戸惑っているのだと思う。
ただ、どちらを選択するにせよ、芽衣が決断を下す対象は明らかに「命」なのだ。
「命と言えるほどのものじゃない」なんて言葉で、決断の責任から逃げないでほしい。


葉菜の奈緒に対する愛情と苦悩にも心を動かされた。
保護責任者遺棄の罪を犯した自分の娘が 未成年者略取の罪を犯すとは・・・。
奈緒に救いの手を差し伸べても逃げられる。
一生忘れることの出来ない娘に「私達の事は忘れてください」と言われ酷く傷ついたはずだ。
擬似親子の愛情を「つり橋の恋」のような思い込みとは違うのか?と確認する葉菜に奈緒
「私は実母とは違う」と言い切る。自分の存在を否定される苦しみ。
そもそもこの擬似親子の関係を認めることは、奈緒と藤子の愛情を認めることでもあるはず。
しかし、どんなに苦しくても奈緒を愛し継美を思うことは今の葉菜にとっての生きがいなのだと思う。
継美の就学の手助けをして「私はあなたの共犯者ね」と、寂しそうに笑う葉菜。犯罪に加担しても、
娘と関わりを持てたことに喜びを感じる姿に、名乗れない母親の悲しい愛情を感じた。


今回、いよいよ藤吉が奈緒達の前に現れた。手始めに継美と接触するが、幼い子供を精神的に
追い詰めていくやり口がエグくて見てられなかった。
母親(尾野真千子)の写真を見ても「知らない人です」と言わなければならない苦しさ。
「怜南ちゃんは海で溺れて死にました」と自分の存在を否定しなければならない苦しさ。
でも二人が選んだ道はこういうことなんだ。と改めて思わされる。
しかし、藤吉が奈緒に金を要求する展開には唖然とさせられた。
そうくるか。と思うものの、この藤吉そんなに金に困っているのだろうか?
それとも他に理由が?というか、そもそもこんな男だったのか?


そして、今回奈緒は継美への愛情を強く自覚したのだとも思う。
誰にも何も望まず、誰かの為に何かをしたことがなかった奈緒
でも今は継美の安定の為に遠ざけていた家族と暮らし、継美の世界を広げるために学校に通わせたい
と切実に願っている。
「母親はなろうと思ってなれるものではない」そんなことはよく分かっている。
それでも「継美の母親になりたい」と初めて奈緒は口にした。
産んだ痛みを知らない代わりに、自ら体を痛めつけて継美を就学させる奈緒に、強烈な意志を感じた。


次回はかなり急展開という感じで、見るのが怖いような気もしますが、見ます。(クーラン)