空中ブランコ

実は第一回を見逃してしまったので、第二回「勃ちっ放し」から鑑賞。
初回見逃したのが本ッ当に悔やまれる。すごいな、これは!
〈あらすじ〉伊良部総合病院地下の神経科には、今日も悩める患者たちが訪れる。
だが担当医・伊良部一郎には妙な性癖が……。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、
はたまた病める者は癒やされる名医か!? 


原作は奥田英朗直木賞受賞作。映画・ドラマ・舞台化もされている作品。
アニメ版は「モノノ怪」の中村健治監督がてがけている。
既に2回も映像化されている作品をどうアニメに興すのか、興味があったが、始まって唖然とした。
というのも、実験的表現のオンパレードアニメだったから。


まず、精神科医・伊良部は大・中・小とその時々で出てくるサイズが違い、時にはクマの着ぐるみ姿。
しかも三ツ矢雄二朴ろ美ダブルキャスト
そして、患者はその声をあててる声優さんの顔を徹底コラージュ。
ていうか、実写部分かなり多い。また患者は時にはアニマルヘッドにもなる(第2回はサイだった)
場面転換はまるで紙芝居。患者の目に映るどーでもいい人達(いわゆるモブ)は、紙に書かれた
「平面」としてペラペラと動いてます。
背景も実写をかなり取り込んで、そこにポップな色彩を施し目がチカチカするようなサイケな
脳内風景?を再現。とまあ、本当にすごい。従来のアニメーションの文法で楽しむ作品じゃないです。
そして、演出や音響もめちゃくちゃ面白い(笑)。


ただ、私が一番すごいなと思ったのは、これだけムチャクチャな演出してても、この作品
ストーリーアニメとして完結しているところ。
実験的アニメというと、例えばシャフトの「絶望先生」が思い浮かぶけど、これはその実験的表現を
ギャグやパロディとして使用していて、やりっ放しでも良かった(これはそこが面白かった)。
でも、この作品はキャラクター(患者)が自らに出す答えをストーリーとして、最後に提示しなければ
いけないわけで、まるで悪ふざけのような演出(イイ意味で)が続く中、どうするんだろう。
と思いながらずっと見てました。
ところが、この演出ならではのやり方で、やがて迎える結末がしっかり落とし込まれていて、
不覚にも(笑)終わったらちょっと感動してしまいましたよ。


精神科医と患者の話だし、素人考えだと「モノノ怪」みたいな精緻な絵柄と美麗な色彩設計でも
充分成り立つと思うんだよね。それを求めている人は大勢いるはず。
でも、それを敢えてぶち壊し冷水を浴びせるような作品に仕上げる中村監督の心意気に燃えました(笑)。
キャストは伊良部の三ツ矢雄二氏が圧巻。何というか発声・テンションがもう根本から違うという感じ。
この声は見ている人を異世界へと誘う重要な役割を果たしていると思う。
OP・EDは電気グルーヴ。EDは「Shangri-La」でこれはイイというか、ズルイ(爆)。
この曲のグルーヴは、なにやら全てうまく治まったような感じにさせてしまうからね。

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ところで、今回「モノノ怪」の薬売りや出崎版源氏を演った櫻井孝宏氏が、妻に捨てられ「勃ちっぱなし」
になった公務員を演ってました。すごいな・・・(しかも顔出し・笑)。
本当にこんな話とこんな演出の作品よく民放で放映できたよ(笑)。(クーラン)