任侠ヘルパー 第二回感想

既に第三回が放映されているが、「任侠ヘルパー」第二回の感想をひっそりと
〈あらすじ〉老人介護施設でヘルパーとして働く翼彦一(草なぎ 剛)は、施設の顧問を務める羽鳥晶
夏川結衣)の効率最優先の方針に嫌気がさしていた。
晶は、ヘルパーたちの負担を軽減させるため、老人たちにオムツを着用させるよう指導。
自立歩行の難しい人には、本人の意思を問わずオムツを着用させろ、と言う。
施設のヘルパー・和泉零次(山本裕典)は賛同するが、美空晴菜(仲里依紗)、施設オーナー(大杉蓮)
は違和感を覚える。
そんな中、気難しいことで知られる入居者・本村幸三(津川雅彦)は、オムツの着用を断固として拒否。
オムツを履かせようとした彦一は、ユニフォームの下に隠していた刺青を見られてしまう。


今回は人間の自尊心というかプライドと介護の難しい関係を語る回だったと思う。
半身麻痺でリハビリ中の本村は頑固で扱いづらくヘルパーも手を焼く老人。
オムツをはかせようとする任侠ヘルパー共の脅し・恫喝?もことごとく撃退する。
いかにも昭和の頑固ジジイといった風情で、若い者を屁とも思ってない誇り高い老人として登場する。
本村を演じるのが津川雅彦だが、偏屈な爺さんを面白おかしく、時には憎たらしく演じていて、
さすがの演技だった。


そんな本村に指名され、彦一は嫌々本村の外出に付き添うこととなる。
目的地につくと乗っていた車椅子を駅に預けさせ、ステッキをついてよろよろと歩き出す本村。
「この辺りは知り合いが多いので、みっともないところを見られたくない」のだそうだ。
バスで席を譲られても、足をガクガクさせながら「年寄り扱いせんでください」と断る。
そんな本村に「年寄りだろうが」とウンザリする彦一。
このへんの描写は、良く言えば誇り高い、悪く言えば偏屈な本村の性格がよく表されていて
非常に面白かった。


柔道場を訪れた本村は、柔道シニアの決勝で10年間闘い続けているライバル「寺内」の所在を
尋ねる。寺内が体調を崩していると聞いた本村は、彼に会いに自宅に押しかける。
自分の元気な姿を見せてハッパをかけてやりたかったのだ。
しかし、本村が見たものは、認知症で寝たきりとなった寺内の姿だった。
しかも寺内は、本村がアレほど頑固に拒み続けているオシメをしていたのだ。
ライバルの変わり果てた姿に激しいショックを受ける本村。
「行かなければよかった。あんな姿見られたくなかっただろう」と呟く。
本村の受けた衝撃の深さを感じながらも「あんただってわかっちゃいねえよ。
全部世話してもらって快適そうだったじゃねえか」とにべも無く答える彦一。
しかし「好きで人の世話になっている者はいない!」と言われ、返す言葉が無い。
そんな本村も彦一に介助されなければ、帰ることも出来ないのだ。
車椅子に座って小さくなる本村の姿が痛ましい。
介護について語る資格は自分にはないが、しかしこの言葉に介護の基本となる理念があるような気が
した。自分の面倒は自分でみる。誰だってそう思っているに違いない。それが出来ない不甲斐なさ。
そのデリケートな部分を前提に考えなければならないのではと思わされた。


その日を境に本村はリハビリをサボり食事も取らなくなり、ある日車椅子から床に転げ落ちて
失禁してしまう。駆けつけた晴菜は「こんなことはちっとも恥ずかしいことじゃない」と声をかけるが、
その善意の言葉はかえって本村を深く傷つける。
「恥ずかしいことじゃない・・・。」その誇り高さ故、「恥」も知る男が、自分に言い聞かせるように
語る姿は痛々しく感じる。また晴菜も自分の言葉が本村を傷つけたことにショックを受ける。
ここも難しいところで、人が人の世話をするにあたっての前提としての意識について、考えさせられる。


その後、本村は問題行為を行ってきたという理由で、晶によって退去させられることとなり、
彦一に慣れておきたいからオムツを履くのに手を貸して欲しいと言う。
まるで何かを捨ててしまったような本村の姿に、彦一はオムツを床に叩きつけると出ていってしまう。
退所日当日。彦一は突然本村を近くの砂浜に連れ出し、砂の上に投げ飛ばす。
「あんたもただのジジイかよ。がっかりだぜ」と吐き捨て、立ち去ろうとする彦一を本村は一喝。
下手糞な投げをもう一度やってみろと挑発すると向かってきた彦一を一本背負いで投げ飛ばす。
「なめんじゃねえ!」と彦一にすごんでみせる本村の姿は、自信とプライドを取り戻したように感じた。
そんな本村に彦一は、そんなに元気ならオムツはいらないだろう、と声をかける。


しかし、本村がプライドを取り戻したところで、施設は退所させられることには変わりが無く、
後日、彦一に送られてきたはがきには「慣れるとオムツも悪くない」と書かれている。
現実は現実として本村はしっかりと受け止めたのだ。
これは、オムツをつけて自尊心をなくしたと言っているのではない。
オムツをつけるもつけないもその選択権は自分にあるということなのだ。
介助を受ける身であっても、自分のことは自分で考え決める。
これこそが人間としてのプライドなのだということなのだろう。
そう考えると、オーナーが常々語る「笑顔と自主性を重んじる」という言葉の重みをひしひしと感じる。
とはいっても、現実問題としては、疲弊するヘルパーの為、介護の現場に効率化を持ち込むことも
必要に違いないのだ。
羽鳥のいう現実と「タイヨウ」の理想の摺り合わせをどういった形で行うのか。今後の展開が気になる。
(クーラン)