アイシテル〜海容〜 第六回感想

周回遅れだが、「アイシテル〜海容〜」第六回の感想を。
〈あらすじ〉花を手向けるさつき(稲森いずみ)に、「死んで償え」と言ってしまった美帆子(川島海荷
は、やりきれない思いと後悔の念で押し潰されそうになっていた。
そんな美帆子に秀昭(佐野史郎)と聖子(板谷由夏)は温かい言葉をかけるが、聖子はさつきのことが
気になっていた。


う〜ん。重い。今回も非常に見応えのある回だった。
さつきに「死んで償え」と言った美帆子。これこそが遺族の本音なのだと思う。
しかし、遺族だからこそ「命」の重さを嫌と言うほど知っているのに、「死んでみれば!」等と
言ってしまった自分を後悔する。
最近あまりにも平気で使われているが、やはり「死ね!」などという言葉は簡単に口にしてはいけないと
改めて思わされた。言った方も言われた方も深く傷つく。
しかし、それを叫ばざるえなかった美帆子の気持ちを考えるとやりきれない。
それでも、さつきが本当に自殺してしまわないかを心配する彼女は、優しい子なのだと思う。


一方、美帆子に糾弾されたさつき。更には智也(嘉数一星)のせいで破談になった彩乃(田畑智子)から
も「昔から優秀な姉と比べられてどんなに嫌な思いをしてきたか。もううんざりよ!」と責められる。
度重なるショックにさつきの神経は限界に達し、雨の中倒れそのまま入院。
息子の苦しみに気付けなかった自分を責め、その智也からも拒絶されたままですっかり生きる気力を
失くす。そんな彼女を富田(田中美佐子)は「息子さんの心を開けるのはお母さんだけ」と励まし、
敏江(藤田弓子)は「子供の為に頑張るのが親。さつきが智也と罪を償わなければ、誰がするの!」と
叱咤する。
これもね。さつきの今後を考えれば、いっそ死んだ方が楽なんじゃないかとも思えてしまうわけです。
それを知りながら「死ぬ程辛くても生きなくてはいけない」と言わなければならない敏江もどれだけ
辛いだろうかと考えてしまう。


それに、やっばりさつきは死ねないと思うんですよね。智也の母親だから。
こんなに辛い思いをしても、「自分なんていなくなればいい」と考えても、彼女は
「智也を産まなければよかった」とは思っていない。
犯した罪の重さにいまだ気付けずにいる智也を見捨てて死ぬことは、彼女には出来ないのだと思う。


一方の和彦(山本太郎)。再就職が決まらず大荒れ。しかし彩乃から
「今まで仕事に打ち込んでこられたのはさつきが一人で子育てを頑張っていたからでしょう。
姉を支えてほしい。それが出来るのは義兄さんだけ。夫婦でしょ!」と詰め寄られ、ようやく目が覚める。
さつきの代わりに智也に会いに行き、ぎこちない会話の末「あの時のキャッチボール楽しかった」という
言葉に驚く。別れ際、思わず肩を震わせて泣く和彦。
この人、ようやく父親になったんだなあという気がした。今までは「親になりきれない男」だった。
もちろん子供は可愛いかっただろうが、いつしかそこにいて当たり前程度の存在になっていたのだと思う。
ビビリながらも子供と向き合い、会話を繋ぎ、扉の向こうに消えていく我が子を見て、
初めて父親として肉親としての本能的な愛情を感じたように思えた。
「智也に会えるのかな」と涙するさつきを「会えるさ」と慰める和彦。
オレ優先だったの男の意識がついに「家族」というものに向き始めたように思える。
しかしさつき達はいつかは我が子に会えるが、聖子達はもう二度と息子と会うことは出来ないのだ。
それを考えると何とも言えない気持ちになった。


ところで、今回思ったんだけど、破談になった綾乃がさつきを責め立てますよね。
もちろんその後、綾乃は後悔してその気持ちを母親に打ち明けるけど、さつきには曖昧な謝罪
(らしきもの)しかしていない。
その言葉を受けてすぐ敏江がそれを「あれで謝ってるつもりなのよ」とフォローしている。
なんていうか、家族ってこんなもんじゃないのかなあ。と思ってしまうんですよね。
確かに綾乃は酷いこと言ったし、さつきも一生忘れられないんじゃないかとも思うけど、
時間をかけて、それを許せるのが家族じゃないのかなあ。
このいい加減さとか、残酷さとか、無神経さとか、繊細さ。
これを理由もなしに許容出来るのが家族ではないのか。
それを思うと、さつきと和彦と智也の家族はどうだったんだろうと思ってしまうのだ。
互いに想いあっているのに、相手にきちんと伝わっていない家族。
この家族がもう少しおおらかであれば、智也はどうなったのだろうと少し考えてしまった。(クーラン)