アイシテル〜海容〜 第五回感想

周回遅れだが、「アイシテル〜海容〜」第五回の感想を。
〈あらすじ〉事件現場に花を供えているさつき(稲森いずみ)の姿を偶然見てしまった美帆子(川島海荷
は、秀昭(佐野史郎)と聖子(板谷由夏)にそのことを話そうとするが、なかなか言い出せずにいた。
家族の再生を願う美帆子は、花や供え物でいっぱいの事件現場を元の状態に戻そうと提案し、
秀昭もそれを受け入れる。しかし、供え物の中にさつきが手向けた花があることを知った聖子は、
複雑な気持ちになる。


う〜ん。重い。今回も見所が随所に。
まず被害者の小沢家。
さつきにこれ以上自分達家族に近づいてほしくないと考える美帆子。妻を気遣う秀昭。
この二人がけなげだ。特に家族の再生を一心に願う美帆子の姿に涙を誘われる。
しかし、人にはいろいろな考え方があるのだなあと改めて思う。
謝罪の手紙を拒否されたさつきがせめてもの贖罪の思いで手向ける花は、彼らにとっては、
こちらの神経を逆なでするものでしかない。
けれど、世間はさつき達を「加害者家族からはいまだ謝罪の言葉は無い」と言うに違いないのだ。
世間は置いておくとしても、決して許されないことを知りながら「ドアを叩き続けなければならない」
加害者家族と、「そっとしておいてほしい」と願う被害者家族。
どちらも理解できるし、正解等ない問題なので見ていると辛い気持ちになってくる。


そんな中で聖子だけが違う心情を抱く。
会ったこともないさつきの人となりに関心を抱き、その心情に想いを馳せる。
それはどういった心境なのだろうか?
この二人はある意味、子供を喪った母親同士なのかもしれない。
二人とも一生癒えない傷を背負い続けると言う意味でも同じだ。だからなのだろうか?  


一方、加害者の野口家。
和彦(山本太郎)が一歩を踏み出した(のか?)。命と言い切っていた会社を辞めた。
去り際の会社側のそっけない対応に傷つきながらも、次の仕事が決まりそうだとさつきに打ち明ける。
「無理するな」と妻を気遣い「自分はまだ息子に向き合う自信はない。だから智也のことを頼む」と
素直に告げる。ようやく父親として、また夫としての自覚が出てきたようにも見える。
家族として寄り添って生きていく覚悟が出来たのだろうか?
しかし、そんなに世の中甘くない。おそらく智也のことが理由で面接を落とされる。
この人打たれ弱いからなあ。大丈夫か?


ところで、今回さつきと智也の断絶のきっかけが判明した。
半年前、近くにホームレスの老婆(大空真弓)がいて、さつきは智也に
「あそこに絶対近づいてはいけない」と約束させる。
しかし、些細な出来事をキッカケに、智也は孤独な老婆の下に足繁く通うようになる。
ところがある日老婆が亡き息子の面影を智也に見出し突然抱きすくめる。
殆ど羽交い絞めにされ恐怖を感じた智也は老婆を拒絶。
錯乱して「ぼくはおばあちゃんの息子じゃない!」と喚きながら噴水に飛び込んだ。
ようやく家に帰りついた智也は母との約束を破ったことを苦にして本当のことを言い出せない。
しかしずぶ濡れの息子を見たさつきは、「いつからそんな悪い子になったの!」と深く傷ついた智也を
厳しく叱りつけたのだった・・・。


大きなショックをうけるさつき。
その頃のさつきは息抜きの「育児サイト」に没頭していて、智也の帰宅は「自分の楽しみの時間」の
終わりを告げる合図のように感じていた。その為問題の日もイライラして智也に当たってしまったと
いうことらしいが・・・。


う〜ん。正直最初は「弱い」と思った。コレが断絶の理由なら少し弱いのではないかと。
智也が感じた恐怖はわかるんだけど、それでも親に打ち明けるか、自分の胸に収めるかして、
子供なりに、この出来事を租借していく力は無かったのだろうか?
さつきもずぶ濡れになった子供にまったく異変を感じなかったことにも違和感が。
それに、たとえ気付かなかったとしても「たった一度」のミスで親に心を閉ざす智也の潔癖さも気になる。
小学5年生と言えば、親に秘密にしていることも段々出来てくる頃だし、気持ちの行き違い等も
散々経験して、徐々に親と自分は違う生き物だということを漠然と認識しだす頃だと思うのだけど。
(↑あくまでも個人的な意見です)


そこまで考えて気が付いたのだが、このさつきと智也ってすごく「濃密」な親子という感じがするのだ。
確かに、お互い「肝心なこと」は見えていないという面もある。
しかし、さつきの智也に対する張り詰めた愛情や智也のさつきに対する盲目的な信頼。
なんというかとても閉鎖的に感じる。これは父親が育児に参加していないことやフォローする受け皿が
ないなど、母親の孤独な子育ての影響もあるのだろうか?
しかし、母親は万能ではないのだ。子供を100パーで愛していても100パー理解できるわけではない。
母親がダメな時、誰かがフォローしていれば・・・。そんなことを考えずにいられなかった。


しかし「この出来事」が、事件の直接の原因となったわけではない。
今後、どう話が進むのか目が離せませんね。(クーラン)