アイシテル〜海容〜 第三回感想

既に第四回が放映されているが、今頃「アイシテル〜海容〜」第三回の感想を。
〈あらすじ〉野口さつき(稲森いずみ)の5年生の息子・智也(嘉数一星)が、小沢聖子(板谷由夏)の
息子・清貴(佐藤詩音)を殺害した容疑で、少年鑑別所に収容されてしまう。
面会に行ったさつきは自分を拒絶する智也にショックを受けるが、担当の調査員・富田(田中美佐子)の
励ましで、母親として向き合う決心をする。
いっぽう小沢家では、自分を責め続ける聖子を、娘の美帆子(川島海荷)と夫の秀昭(佐野史郎)が
必死に支えていた。


う〜ん。重い。今回も見所が随所に。
まず、被害者の小沢家。当然のことながら事件の衝撃から抜け出せない聖子。
顔色も悪く髪もボサボサ。外にも出ず事件の切抜きを集める。
そんな聖子を気遣い、家事を分担してなるべく普通の暮らしを営もうとする秀昭と美帆子だが、
自分を責め続ける聖子に、ついに秀昭がキレた!
これまで決して口にしなかった妻への非難を初めて吐き出す。
秀昭は年長の夫として、その気丈さと包容力で事件後ずっと聖子を支えてきた。
けれど清貴の父親として、彼もまた崩れ落ちそうだったに違いない。ここまでよく保ったと思った。
しかし、そういう本音は、得てして言った方も言われた方も傷つくだけの場合もあるはずだ。
この家族はどうなってしまうのかとヒヤヒヤさせられた。
けれど、そんな中でもこの夫婦は互いを思いやる心を忘れなかった。二人の深い愛情に心を打たれた。


そして、その両親を支える美帆子の姿にも涙を誘われる。
この夫婦がどれだけ理解しているか知らないが、今の小沢家を支えているのは美帆子ではないか?
笑顔の消えた両親をさり気無く気遣い、弟への罪悪感を誰にも打ち明けることが出来ない。
中学生が抱えられる精神のキャパはとっくに超えていると思うのだが、それでも「家族」という形態を
必死に守ろうとする姿は、野口家とは対極のものとして写る。
秀昭にも聖子にも美帆子という存在に早く気が付いてほしいと思う。
このままではもう一度我が子を失いかねない。
「事件のことを知りたい」と考える聖子と、「これ以上考えたくない」と語る秀昭の違いにも
考えさせられましたね。


一方、加害者の野口家。
和彦(山本太郎)の言動が興味深い。新しく家を借りさつきに相談も無しに勝手に別居をきめる。
心配事は仕事で自分が進めているプロジェクトの進捗状況だけ。さつきの実家に連絡も入れず、
「このままでは終わらない」とか言ってる和彦のKY振りに正直呆れた。
この人にとって家族の比重は大して重くないのかしらと思わずにはいられなかった。
だからと言って、血も涙もないというわけでもない。
実家を出て元のマンションで一人暮らすというさつきを放っておけず、結局は新しい部屋で共に暮らす。
この和彦のキャラクターって何なんだろうと思うんですよね。
いわゆる草食系男子とは対極の上昇志向の強い中年男。
けれど、思考範囲が狭いというか、ある意味自分本位な単純な言動が目立つ。
とは言っても、たいして悪い人にも思えない。
でも、小沢家の秀昭のように「夫」にも「父親」にも見えないんですよね。
見えてくるのは「オレ」という自我だけ。智也の目にもそう映っていたのではないだろうか?
この世代の男性をこういった形で描くのは、作り手の何らかの意図があるのでしょうか。


今回のさつきも痛々しかったが、同時に力強さを感じた。
ようやく智也に会えたのに上滑った会話しか出来ず「うざい」と拒否られるさつき。
ショックを受けるが、智也が学校や友達の前ではどんな子供だったのかを調べだす。
皆を和ます子だったこと。カブトムシが好きだったこと。虫嫌いのさつきを気遣いカブトムシを自宅では
飼わず、友達に飼ってもらっていたこと。図らずも智也が自分に向けた優しさにも気付かされ、
智也は自分の知っている息子と変わりが無かったと確信する。
そのことに少しでも希望を見出すさつきは世間からすれば不謹慎かもしれない。
しかし私は、さつきがいままで解らなかった智也を少しでも理解し、愛し続ける要因を見つけられて
良かったと思ってしまった。


事件の真相も徐々に明らかになっているが、一つ残念な点が。
富田とさつきが喫茶店で事件を語り、偶然その場に居合わせた美帆子にさつきの素性が知られて
しまう。という展開になっていたが、それは如何なものか。しかも富田は被害者の名前を口に
していたが、関係者なら「それ」だけは絶対にしてはならないことだろう。
他はともかく、そういった極秘情報の「やり取り」に関しては、「ありえない展開」ではなく
リアルなストーリー展開にしなければいけないと思うのだが。(クーラン)