ありふれた奇跡 第八話

大分、遅れ気味だけど、今頃「ありふれた奇跡 第八話」の感想を。
う〜ん。大分ややこしい状況になっちゃって、なんだかな〜という感じですが。


今回印象に残ったのは二つ。
第一は、加奈(仲間由紀恵)の「子供が産めない」という事実に対する、翔太(加瀬亮)の
祖父と父の反応。事実を知って、重夫(風間杜夫)は
「子供が出来なくてもいい。あの子を手放すな。結婚なんて当人同士の問題だ」と、翔太に告げる。
これには、最初驚いた。この年代で、ここまで言い切れるのは結構珍しいのでは。
でも、よく考えてみると納得も出来る。
以前も書いたが、翔太の両親って、子供より少し自分を優先させる部分があるような気がしていた。
自身がそうだったから、「存在してもいない子供」よりも現在の加奈への想いを大事にしたいと考える
翔太の気持ちを、応援出来るのかもしれない。
それになにより、重夫は結婚に失敗している。翔太には、気持ちが寄り添える相手と「結婚生活」を
全うしてもらいたいのかも。
孫の顔を見たいという気持ちより、そちらの方が勝っているのかもしれない。


しかし、爺ちゃん(井川比佐史)はそうはいかない。
戦災孤児だった爺ちゃんは同じ境遇の奥さんと出会って結婚し、重夫・翔太と続いてきたわけです。
曾孫が欲しい。そうでないと自分と奥さんの生きた証が無くなる。
その思いは切実で、簡単に「当人同士の問題だ」と割り切ることは出来ないと思うのだ。
普段から家族に対する愛情が煩すぎるくらい溢れている人なので、尚更。


これは、どっちの反応が正解ということではないはずだ。
爺ちゃんの話を聞いてしまうと、「どうして簡単に子供が要らないと言えるの?」と言った
加奈の気持がよく分る。
間違ったことは言っていない爺ちゃんを翔太はどう納得させるのか。
それ以前に彼は結婚を拒み続ける加奈の気持ちも説得しなければいけないのだ。


二つ目。
加奈の口癖で「カタをつけられる事は、つけておきたい」というのがありますよね。
でも、彼女にとって「カタをつけるとはどういうことなの?」ということです。


今回、家族に秘密を告白する際、彼女は仕事に出る直前に、母の桂(戸田恵子)に打ち明けようとする。
結局父の朋也(岸辺一徳)も祖母の静江(八千草薫)も起きてきたので、全員の前で告白せざる
得なかったわけだけど、そうでなれば、早朝、桂に事実だけ告げ、即、出かけたはずだ。
こんな大切なことを、なぜこのシチュエーションで話そうとするのか。
これでは、言うだけ言ってあと丸投げするつもりだったと取られても仕方がないと思うのだ。


思えば、加奈の「カタのつけかた」ってそういうのが結構多い。
翔太に告白した際も、言うだけ言って、翔太の返事は藤本(陣内孝則)に伝え、自分は藤本から
聞くという、ややこしい方法を加奈が勝手に決める。
おかげで、かえって暴走した翔太が中城家に乗り込んで、今回の大騒動に発展している。


「カタをつける」というのは、「言いたい事を言う」だけではないだろう。
言うべき事を言ったら、その場で相手が受けた衝撃や反応もしっかり見つめて受け止めることが
「カタをつけること」にはならないのか?


後半、静江さんは、翔太を傷つけた事を謝りに(打算もあったとは思うが)、爺ちゃんのところまで
わざわざ出向いて頭を下げる。
加奈の事情を知った爺ちゃんは、相手を傷付けると知りながらも、「加奈との付き合いはお断りする」
と告げる。そして、その場で貧血で倒れた静江さんを運んだ病院で、今度は加奈を待ち、同じ事を言う。
加奈は確かに傷付いた。でもそうなることを知りながら、自ら引導を渡し、傷付けた加奈を見つめて
「とても残念だ」と俯きながら帰っていく爺ちゃんは傷つかなかったのだろうか?


「カタをつける」ってこういうことなのでは?
言い捨てではなく、相手を傷付けたならその事実を受け止めると言うか。
孫の結婚に口出しする彼らの行動や価値観全てを正しいと思うわけではない。
しかし、バツが悪くても、言いにくいことでも、大事な時に、相手としっかり向き合おうとする姿勢は
間違っていないと思うのだ。


加奈は未だに、「子供を産めない」という事実を受け止め切れず、苦しみを持て余している。
でも、そればかりではなく他に向き合わなければいけないことも、出てきているのではないだろうか?
例えば、翔太への気持ちとか。
正味な話、この二人って付き合ってるんですよね?
気が付くと、告白もなしで結婚話になっているのは、よく考えると不思議だ(笑)。
この世代はそういうのカンケーないのだろうか?
しかし、この騒動を掻き回すのも治めるのも、全ては「そこ」から始まるはず。と私は考えるのだが。
(クーラン)