浪花の華 第六話感想

すでに七話も放映されているが、第六話「北前船始末」(後編)の感想をひっそりと(笑)。


〈あらすじ〉おゆき(畑未夢)が攫われた。章(窪田正孝)が助けを求めに向かった先では、
左近(栗山千明)と若狭(池内博之)が、卯之助(苅谷俊介)から事情を聞き出していた。
実は卯之助の隠し荷は露西亜からの種痘で、おゆきに植え付けて松前から運んできたのだ。
それを狙った松前問屋の境屋(南条好輝)が、おゆきを誘拐したことがわかる。
書物での知識だけだった種痘が大坂に持ち込まれたと聞き、沢山の痘瘡患者を助けることができる、と
章は興奮する。だが種痘について調べるうち、実は種痘の植え継ぎは、七日が限度だとわかる。
おゆきの種痘はすでに意味をなしていないか、そもそも騙されていたのだ。
境屋におゆきを取り戻しに向かう左近と章。
在天別流が直接現れたことで、境屋はあっさりおゆきを手放すが、三人で高麗屋に戻る帰り道、
おゆきの噂を聞いた長州藩の侍達が襲いかかり、左近が短銃で撃たれる!


今回も非常に見応えのある回だった。前回、そして今回と章が急激に成長しているような気がする。
今回も章の医者としての真価を問う出来事が起こる。
左近が撃たれ、章がその場で弾を取り出す緊急手術を行うことになったのだ。
ムリだと尻込みする章だが、重症の左近に「お前なら出来る」と促され、手術を決意する。
冷静にそして無我夢中に手術する章。
そこには、前回、痘瘡と誤診し自らがパニックに陥った章はいなかった。
師匠夫婦の教えや左近の励まし、そして何より彼女を救いたいという気持ちが、
彼を医者として更に大きく成長させたのだと思う。


その後、師匠に銃撃の一件を奉行所に届け出ると言われ、左近の素性について問い詰められるが
「道に外れたことはしていません」と頑なに沈黙を守ろうとする。
破門をちらつかされても応じようとしない。
その姿に、お定(萬田久子)が「全てを捨てても守りたい人がいるからだ」と取り成す。
そうなのだ。今まで左近に守られてばかりだった章が、彼女の与り知らぬところ、彼のやり方で
初めて左近を守っている。この展開は結構グッときました。
医者になるために、必死で学問の道に生きてきた章が、それを捨ててでも左近を守りたいという。
何というか、男としてのステージも一段上がったような(笑)?頼もしさを感じましたね。


そして、これは、章が後の緒形洪庵になるきっかけになる話でもあったこと。
緒形洪庵といえば、種痘を広め天然痘の予防に尽力した人。
今回、章があんなに喜んだ種痘の種が、実は植え注ぎ期間を過ぎた意味を為さない物だと分かる。
正しい知識と技術さえあれば、種痘の種を絶やさずに済んだかもしれないし、卯之助も騙されることは
なかったのだ。
終盤、章は天游に「医者になれたら、生涯をかけて痘瘡の研究に取り組むつもりです」と宣言する。


正しい知識と人を救いたいという信念。それらは、医者に欠かせないものだ。
しかし、それは誰かに声高に教えてもらうことではないのだろう。
章はそれを師匠や左近達と関わることで自然と吸収していたったような気がする。
私利私欲でおゆきを連れ去った境屋に、章は思わず「人の命に関わるものを商売の道具にするな!」
と声を荒らげる。
それは、彼の根っこにある正義心や医者としての誇りが、ついに叫ばせた一言だったのだと思う。
そして、後の洪庵さんはその生き方を貫いているのだ。


お気づきの方も多いとは思うが、初回の頃に比べ、章のオドオドが無くなってきている(笑)。
これから、ラストスパート。まだ洪庵ではない章が、医者として、男として、
どこまで大きくなっていけるのか、最後まで見届けたい。(クーラン)