浪花の華 第五話感想

またもや遅れ気味だけどめげずに、第五話「北前船始末」(前編)の感想を(笑)。


〈あらすじ〉章(窪田正孝)は天游(蟹江敬三)の命で長屋に薬を届けに行くが、
誤って病人を痘瘡(とうそう)と見立ててしまい、住人達は大騒ぎになる。
天游に患者を怯えさせたことを叱られ、落ち込む章。
そこに北前船の船頭・卯之助(苅谷俊介)が怪我で担ぎ込まれる。
章は、左近(栗山千明)の元に預けられている卯之助の孫娘おゆき(畑未夢)を引き取りに。
実は在天別流と卯之助は、商売上の関係が深かったのだ。
そんな折、卯之助が突然何者かに襲われる。若狭(池内博之)の活躍で事無きを得るが、
卯之助は事情を話そうとしない。
卯之助が積み荷に絡んで何かを隠している、と左近は睨んでいた・・・。


今回は前後編の前編というわけなんだけど、章が凄くいいです。
前編ではまだ活躍してないんだけど、章という人の何かが変わったと感じられる話でした。


水瘡の少女を痘瘡と誤診し、母親を半狂乱にさせた章を、天游は厳しく叱責する。
師匠は見立てが間違っていたことを咎めているわけではない。
医者を志す者が、自らパニックに陥り不用意に「痘瘡」という言葉を口走って、患者とその家族に
怖い思いをさせたことを、怒っているのだ。
医者はいつでも冷静でなければならない。患者を怯えさせるような者は医者ではない。と叱りとばす。


愕然とする章。最近は医学の知識も深まり、徐々に自信を付けてきた矢先の出来事だったので、
非常なショックを受ける。
この一件で、章は、知識は深めても、医者としての心構えが何一つ出来ていなかった自分に
気づいたのだと思う。
医者の仕事とは病を見立て薬を出すことだけではない。
患者とその家族を不安や苦しみから救うことも重要な役割なのだ。
医者という仕事の奥深さを悟り、章はすっかり自信を喪失する。
医者を目指して一途に頑張ってきた彼が、初めて揺らいでしまったように見えた。


思えば、左近と知り合った第一話から、章は、それぞれの事情を抱えた様々な人達と関わっている。
それらは章を成長させはしたものの、彼の根幹に関わる部分に辿り着くことはなかったと思う。
これは、章の信念や今までの努力や生き方を揺るがす大問題なのだ。


池?のほとりで不甲斐無さに一人涙する章だが、このシーンが凄く良かった。
悔しさやそれでも流れる涙、泣いてもどうにもならないと乱暴に目元を擦る仕草など、
セリフがなくても章の心情が胸に迫ってきて、もう少しじっくりと見せてもらいたいくらいでしたね。


医者としての適性に自信が持てなくなり揺らぐ章をお定(萬田久子)が励ます。
「医者が一番大事なのは、己を捨ててでも人を救おうとする気持だ」と諭される。
少し浮上した章だが、時間をおかず師匠夫婦の言葉を実践する事件がやってくる。
卯之助が高熱に苦しむ孫のおゆきが痘瘡かもしれないと言いだしたのだ。
今度は、冷静に状態を判断、一晩様子をみることを決め、おゆきと卯之助に心を配りながら看病する章。
もし、痘瘡だったら伝染するかもしれないのだ。
そんな章に付き添いの左近は「お前は必ず医者になれる」と励ます。
一晩明け、おゆきの病状は治まっていた。


思うんだけど、左近にせよ今まで章が関わってきた人達は、みな何かを背負って生きている人だった。
しかし、考えてみれば、彼の目指す「医者」という仕事も「患者の命、家族の願い」を背負うという
意味では同じだ。章は今回、自分が志す「人を救う」という仕事の根本の精神を理解したのだと思う。
理解して「命や願いを背負う」覚悟をしたように私には思える。章が一皮向けたような・・・(笑)。
とは言っても、章の目の前でせっかく治ったおゆきちゃんは攫われるし、頼りないのは
相変わらずですけど(爆)。


緒方洪庵といえば種痘を広め天然痘の予防に尽力した人。今回の話がどう展開されるのか?
次回は「白眉」だそうです。乞うご期待しています。(クーラン)