「私を歌舞伎に連れてって!」

突然ですが、ワタクシ、実は昨年末のクリスマスプレゼントをまだ頂いておりませんでした。
しかし、欲しいものは既に決まっておりまして、それがコレ
特別企画「(オットのオゴリで)私を歌舞伎に連れてって!」なのでございます(笑)。
歌舞伎には興味があって、数回観劇経験あり。
現・歌舞伎座が老朽化の為、2010年4月公演を最後に建替えることが決定されているので、
それまでにここで歌舞伎を観ておきたかったのです。


そして、ついに!待ちに待ったこの日がやってきた〜。
私達は夜の部だったんで、4時開場に合わせて歌舞伎座に着く。

もちろん、歌舞伎座激写!! 予約していたお弁当を受け取り、早速中に入る。
ちなみに私達は3階席。混雑しているので、開演までの30分はあっという間。
そういえば、イヤホンガイドも貸し出されていますが、自分のペースと感覚で集中したいので
私達は使いません。事前に筋書きで粗筋と役者のチェックをするくらい。
それで、不自由を感じたこともないです。


私達が今回観るのは、歌舞伎座さよなら公演二月大歌舞伎 夜の部
一、倭仮名在原系図  蘭平物狂(らんぺいものぐるい)
二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
三、三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)
ちなみに、蘭平物狂と勧進帳は以前にも観たことがある。いよいよ始まり〜。


以下その感想。
え〜と、最初に断らせていただきますが、私は歌舞伎が好きですが、知識は全くないドシロウトです。
無知ゆえの常識ハズレな感想を不快に思われる方がいらっしゃったら、本当に申し訳ありません。


【一、倭仮名在原系図  蘭平物狂(らんぺいものぐるい)】
前も観たことがあって、その時は尾上松緑さんの「蘭平」だった。今回は坂東三津五郎さんの「蘭平」。


私個人の考えなんだけど、歌舞伎の凄いところは、舞台全体を「絵」として表現している事だと思う。
私は漫画や映画等二次元のものが好きなので、舞台を「絵」と解釈してつくるこの世界に
たぶん馴染みやすいのかもしれない。
平面でありながら、奥行きを感じさせる「書き割り」やセット。
そこに、鮮やかな色彩感覚の衣装を纏った歌舞伎役者さんを「一番イイトコ」に配置して、
「一枚の完璧な絵」が出来上がり、観客の視覚を圧倒する。
「絵」なので、基本的にセリフを話す人以外は、「美しい形」をとり、制止して動かない。
その為、イヤでも話す人の口上や、神経の行き届いた手先の動き、体の線、時には舞等に
観客の意識が集中するように出来ている。(全ての演目がそうではないかもしれないが)


以前、テレビで「歌舞伎」を見たことがあったんだけど、その時はカメラが役者に寄っていたせいか、
セットや舞台の美を整える黒子の意味が理解できず、良さがちっとも分からなかった。
生で、舞台全体を視界に収めて、ようやくこの世界の意味するところと素晴らしさが分かった。
凄いです。様式美って。イヤ、ホントに、凄い。
このような舞台を考え出した人達、またそれを普通に楽しんでいた当時の観客の美意識の高さを
まざまざと感じます。


ところで、「美しい絵」と先程書いたけど、この「蘭平物狂」の第二場は蘭兵の大立ち廻りがあり
「動き」がある。「様式美」と大梯子を使った迫力ある「動き」の融合が、観ていてホント面白い。
三津五郎さんの蘭平は、迫力としなやかさが同居していて見応えあり。
ラストに登場人物が各々見得を切って幕が降りるんだけど、それぞれの型の完璧な角度
といい、これがまさに「絵」という感じでかっちょいい。
橋之助さんの三男・宣生くん(7歳)の「繁蔵」もカッコカワユク決まってましたヨ!
ちなみにこの話、蘭平が刀を見ると踊り狂うという奇病を持っている(実は欺いている)という設定で、
第一場で踊り狂ってる蘭平にも結構笑いました。なんちゅう奇病だ!


【二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)】
これも前に観たことがあって、その時とも今回も吉右衛門さんの弁慶だった。
これは書き割りのセットがなく、幕が開くと、ひな壇?に座った長唄囃子の方々が演奏して、
まずライブを堪能。
その後、「弁慶」と菊五郎さんの「富樫」との丁々発止のやり取りや、義経との絆、
その後の酒豪弁慶大爆発(笑)等が展開され、物語にスキがない。
終始、舞台を掌握する吉右衛門さんに圧倒されます。さすが十八番の舞台。


【三、三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)】
これは、今回初めて観ました。
夜鷹のおとせが拾った百両を奪い、大川に突き落とす女装の盗賊「お嬢吉三」。
その様子を見ていた御家人崩れの盗賊「お坊吉三」がその金寄こせと迫り、二人は切り結ぶ。
そこに吉祥院の所化上がりの盗賊「和尚吉三」が通りかかり、二人を仲裁。
和尚は「百両」を自分に譲れと迫り、「その代わり、俺の腕を持っていけ!」と言う。
私なら「そんなもんいらん!」と言うところだが、お譲とお坊は和尚の豪快さに心酔。
奇遇にも三人とも名前は「吉三」だし、兄弟分にしてくれと言い出し、そこらの地蔵に備えてあった杯に、
各々の血を入れ固めの杯を交わし、意気揚々と去っていく・・・。


終始、ポカーンな物語で観終わった後、笑った。「悪」が栄えちゃったよ!
金の為なら平気で人も殺すって「銭ゲバ」か(爆)!意外に現代の世相を反映している感が。
夜鷹があっさりデキシー・ドザエモンされるところでも、結構みんな笑ってた。
ていうかブラックな笑いが支配する話で、意外でしたね。
玉三郎さんの悪女振りも男役も初めて観たので、面白かったです。
染五郎さんの「お坊」の台詞回しや松縁さんの「和尚」の豪快さなんかも観ていて楽しかった。
そういえば「こいつぁ、春から縁起がいいわえ」はこの芝居から来てるんですね。勉強になりました。
これで、この日の演目は全て終了〜。歌舞伎座を後にする。(クーラン)