浪花の華 第三話感想

すでに第四話が放映されているのに、今頃第三話の感想を(笑)。


〈あらすじ〉章(窪田正孝)と同じ思々斎塾で学ぶ薩摩藩士の川崎が、突然塾を辞めることになった。
大坂の両替商が出銀を断ったせいで薩摩藩の川崎の兄が責めを受け腹を切らされたので、
家を継ぐため国に帰ることになったという。
折しも両替商の息子で塾生の富沢(山崎裕太)が現れ、川崎を挑発。二人は一触即発になる。
そんな折、章は師匠・天游(蟹江敬三)に、富沢の素行を調べてほしい、と頼まれる。
富沢が良からぬ輩とつるんで武士を襲っているという噂があるらしいのだ。
仕方なく富沢の後をつける章だが、富沢がゴロツキ連中と何か相談している姿を見てしまう。
しかも突然現れた謎の侍に、富沢が襲われる。
だがその時、富沢を助けに現れたのは、女侍・左近(栗山千明)だった。思わず左近の名を叫ぶ章。
その後、二人は同心・新井(梶原善)の取り調べを受けるが、富沢は辻斬りの仕業だと言い張り、
何かを隠したままだ。謎ばかりが増す章の許に、左近の名前が記された文が届く…。


今回は見応えのある話だった。
この話によって、章が少し成長したような・・・(笑)。


今回の章も医者を目指して日々学問に精進する毎日。
だからと言って、引きこもりで本の虫のままでいいということにはならない。
章は人づきあいが苦手というかあまり他人と接しないようだ。
そのせいか、周りの話をすぐ鵜呑みにするし、騙されやすい。
今回も川崎の書いた「左近の文」に騙されて拉致され、彼女を危険な目に遭わせてしまう。


川崎と富沢の確執についても、出銀を断わった両替商の道楽息子富沢。出銀を断わられたために
兄を亡くした気の毒な薩摩藩士川崎。と周囲に聞かされ、師匠に富沢を調べるように言われても、
その先入観で彼を見てしまう。それに、なぜ両替商達が一斉に出銀を拒んだのか考えようともしない。
冒頭、ある両替商が借金を踏み倒されて一家心中した現場に遭遇しているにも関わらずである。


ところが、実は、武家の権力で巨額の借金を踏み倒す薩摩藩に大阪の両替商が一斉に反旗を翻した
という事実が富沢によって明かされる。
そして両替商達に知恵を授け一つに纏めたのは左近その人であったことも。
章が楽人だとばかり思っていた左近は、何百年にも渡って大坂の街を守ってきた闇の守護神
「在天別流」の中心人物だったのである。


そして富沢も先の一家心中で許婚を失い、その復讐で薩摩藩士を襲い身ぐるみ剥いでいた。
左近にせよ、富沢にせよ、章の知らないところで、様々な事情を背負い自分の闘いをしていたのだ。
そんな彼らの根本にあるものは、大阪の街に対する愛だ。
商人の街の理を土足で踏みにじるような侮辱を、彼らの誇りが許さないのだ。


第一話で描かれていたが、章は武士としては特異のモノサシで生きている。
武家の三男坊で医学を修める事でしか、将来身を立てる道が無い。なので勉学第一。
しかし、それは自分の為だけであってはならない。章は、何かを背負って闘う左近達を見てそう思ったの
ではないだろうか?
一件落着した後、左近には今までのこと(裏の世界含め)は全て忘れろと言われるが、章は忘れないと
応える。自分には関わりのないこと。忘れたほうが本当は楽だ。でも忘れてはいけないと思うと語り、
最後に「忘れずに自分も闘う。学問の道で。」と左近に返す。
それは、章が初めて「世の中に関わる」と決意し宣言した言葉に感じる。
章にとって学問を究めるということは、自己の信念を貫くことであり、同時に世の中に通じる道でも
あることに気が付いたのだ。


富沢は思々斎塾を辞め商いの道に進み、商人達の闘いに身を投じることを決意した。
章も近い将来何かを背負う日がやってくる。
それまでは、広い視野と高い理想をもって学問を究めること。
それがいつか世の中の為になる。章の闘いは始まったばかりだ。(クーラン)