浪花の華 第二回感想

もう第三話も放映されているというのに今頃第二話の感想を。


〈あらすじ〉 章(窪田正孝)は、天游師匠(蟹江敬三)と一人息子・耕介(杉浦太陽)が言い争う場に
出くわす。耕介は貧しい祈祷師の娘・おあき(小出早織)との結婚を、父に反対されていたのだ。
耕介におあきを紹介された章は、3人で龍天王寺舞楽を見に行くことに。
仲むつまじい2人に当てられっぱなしで憮然とする章だったが、舞方の中に、謎の女侍・左近
栗山千明)の姿を見つける。
実は左近は龍天王寺に属する楽人の一員で、年に数度の舞台に上がっていたのだ。
章は楽屋裏に左近を訪ねて行くが、左近はそっけない。
章を追って楽屋裏に来た耕介とおあきだったが、その場にいた公家の役人・塩野を見ておあきの顔色が
変わる。その夜、塩野は殺され、行方不明のおあきは下手人扱いされてしまう。
おあきがかつて泉州にいたころ、女好きの塩野に関係を迫られ、その恨みから殺したのでは、
というのだ。おあきの無実を証明したい耕介と章は左近と接触
左近は現場に落ちていたおあきのお守りを耕介に渡すが、お守り袋の中には小石が三つ。
なんの意味かわからず首をひねる三人。
その夜、天游師匠と奥さんにお守りを見せるが、それは「安産」のお守りだと言われる・・・。


今回は非常に大人っぽい話で、この枠で放送していいのかといった内容だった(笑)。
医学書の「箱」だけ買わされたりと相変わらず浪速の商人にカモられている章には、
いきなりハードル高めの人間模様だったかもしれない(笑)。
しかし、耕介がそんな章におあきのことを相談したのは、おあきの寂しい身の上について
「ご苦労されたんですねえ」と章が真摯な感情を寄せたからだ。
けれど、世の中、目で見えるもの言葉で語られることばかりが真実ではない。
様々な「真実」が物語の中で明かされていく。

  • おあきが身篭っていたということ
  • その相手塩野とは関係を強要されたわけではなく、心底愛し合っていたが添い遂げられない相手だったこと。
  • 塩野は女好きなどではなく、大阪の公家役人の不正を暴こうとして、逆に罠に嵌められたこと
  • おあきは、今は幸せなので心配しないでほしいと塩野に告げに行った先で、ともに殺害されたこと
  • 耕介はおあきが誰かの子を身篭ってることを知っていて、その子供の父親になるつもりだったこと
  • 耕介の両親は腹の子は自分の子だと言い張る息子のウソを見抜いていたこと
  • 今際の際に耕介の名を呼んだというおあきの最期は左近の作り話だということ。

どれもが切ない真実だ。


ここで、章が遭遇するのは、一見しただけではわからない狂おしい人間の感情や抗えない運命だ。
愛し合っていても添い遂げられない相手の子供を宿したおあき。
そのおあきと恋に落ちる耕介。事情を察して全てを受入れる決意をする。
二人は重い真実を抱えているが、章からすれば幸せな恋人同士にしか見えなかっただろう。
章には無邪気にノロケていた耕介だが、相当な覚悟をもって、深く深くおあきを愛していたのだ。
そんな激しい感情にとらわれる等、章にとっては想像もつかないことに違いない。
「誰かに心底惚れたことがありますか?」という問いかけが、章の胸に迫ってくる。


しかも、章が左近の楽屋裏に行ったことにより、おあきと塩野は再会してしまったのだ。
再会しなければ、おあきは事件に巻き込まれずに済んだのかも。と悔やむ章。
しかし、これもおあきの持つ運命だったような気がする。
幸薄い生涯かもしれないが、最後に耕介と出会ったことは幸せだったはず。
だからこそ、左近も耕介に「優しいウソ」をついたに違いない。
おあきの魂がそう言っていると信じているのだ。
今は亡き人の女心を代弁する左近の優しさに感じいった。


しかし、ここまで込み入った話を30分で語るには、少々尺が足りないような気がする。
もう少し時間があれば、もっと深い余韻に浸れる作品になったと思うのだが。
もったいないなあ。 (クーラン)