未経験

昨日「冒険者たち」を観た映画館は「新宿K's cinema」という映画館だが、
ここは以前「新宿昭和館」だった。
新宿昭和館。ご存知、東映ヤクザ映画を専門に上映する濃ゆい文化を持った映画館。
私は行った事がない。イスが壊れているとか、劇場が汚いとか色々と噂は聞こえていた。
しかし実は、一度だけ行こうとしたことがある。
かれこれ十年以上前、夏のうだるような暑さの昼下がり、オットの希望で「獣たちの熱い眠り」
(監督:村川透)を観ようと訪れたのだ。
主演は三浦友和氏。当時は百恵さんの夫という観点でしか語られず役者としての過渡期だったと思う。
ポスターのキャッチコピーには「ウェイク・アップ!友和!」と書かれていた。


ポスターを確認し、未知の世界へのチケットを買おうとしたその時である。
一人の男性が我々の前に割って入ったのだ。
おっさんだった。タコみたいなおっさん。
明らかに夏の暑さのせいではない要因で顔が真っ赤になり、足元もフラッフラッでグニャグニャ。
タコのおっさんは、窓口でろれつの回らない言語というか奇声を発して周囲を威嚇し続け、
極めつけに胃の中のものをリバースされていた・・・。


自分の父親で酔っ払いの習性はイヤと言うほど見てきたが、こんな街中で昼日中から、
完璧に出来上がっている、というか、むしろ完全に壊れている人を見たのは初めてだった。
私も新橋や池袋等ですえた臭いのする映画館をそれなりに経験してきたが、
ここのお客さんはこういった方々がたくさんいるのだろうか?
そんな考えが頭をよぎり、あまりの出来事にすっかりビビッてしまった私(当時はそれなりに乙女だった)
は、条件反射で中に入ることを拒否してしまったのだった(笑)。
後日、オットは一人でこの劇場にて「ウェイク・アップした友和氏」を鑑賞したらしいです。


今、思えば一度くらいは経験しておくべきだったと思う。
あの時、あのおっさんがいなければ入ってたかも。残念だったなあ。
その後、老朽化の為、閉館。立て直されて「新宿K's cinema」になってしまった。
 ←あの「新宿昭和館」がこんなコギレイな映画館に・・・(笑)。
(テーブルが我が家のリビングのコーヒーテーブルと色違いだったので思わず撮ってしまった。
でも肝心のテーブルあんまり写ってないな) (クーラン)