追悼。市川準監督

映画監督の市川準氏がお亡くなりなった。まだ59歳だったそうだ。
一時期大好きだった映画監督なので、とても残念に思う。
なので追悼の意を込めて、私の「市川準」作品遍歴を勝手にダダ書きさせて頂きます。


私が市川準監督の作品を初めて見たのは「BU・SU」のテレビ放映だったと思う。
当時「タンスにゴン」のCM作家の初映画監督作品だということもあり見たけど、正直面白いのか
つまらないのかよくわからなかった(笑)。
たぶん自分としては、シニカルな笑いのある映画を期待していたからだと思う。
しかし画面に映し出されるのは主演の富田靖子のうっくつした精神状態で、それを何の説明もなしに
画面に放り出してある。自分的には初めて観た邦画のタイプだったと思う。


その後、テレビ放映で「ノーライフキング」を見て衝撃を受けた。
ちょうどいとうせいこうの原作を読んだ時で思わず見てしまったのだった。
演出方法は「BU・SU」と大して変わっていなかったと思う。
しかし原作をまったく独自の解釈で映画化しており「原作付きの作品を映像化する意義」というものが
理解できた。
そして、この「観客にあえて感情や状況を説明をしない演出」はどうやら市川準監督のスタイルなのだと
いうこともようやく理解できた。
つまりそれは観客自らが補完する観方が必要なのである。(と私個人は考えています)


その後テレビ放映で「つぐみ」(原作:よしもとばなな)を見る。
超大人気の原作なのでそれなりに配慮はしてあるがいつも通りの市川演出。
しかし、当時絶好調の牧瀬里穂を主演に据えたことで、映画全体を引っ張る吸引力が生まれ、
いつもの市川作品とは若干趣が変わっていて、それが新鮮で面白い作品になっていたと思う。


念願だった市川準作品を初めて劇場で観たのは「クレープ」。
これは、「乳房」(監督:根岸吉太郎) とともに、伊集院静の原作二本を二本立てで公開した中篇。
離婚した妻の元で育った娘と14年振りに会うことになった中年理髪師のとまどいを描いていた。
主演は某田代まさしだったが、人生が中途半端に枯れている中年理髪師が意外に板についていたのを
覚えている。相変わらずの演出なんだけど、だからこそ娘とほんのわずかに心が通い合う瞬間が
痛いほど胸に迫ってきます。かなり好きな作品です


その次に観たのが「東京兄妹」(主演:緒方直人)。これは自分の中では市川監督の総決算みたいな
気がしております。この作品で「手塚とおる」を知ったんだった。


トキワ荘の青春」(主演:本木雅弘)はテレビ放映で見た。これもかなり好きな作品。
主人公を伝説的漫画家「寺田ヒロオ」に設定したことがいかにも市川監督らしいと思う。
その後の寺田氏の運命を暗示するかのようなラストシーンが静謐で、哀しい。
実はこの直後、ヒストリーチャンネル(だったと思う)でこの寺田ヒロオ氏に関する番組を見る機会があり、
「物を作る人達の光と影」について色々と考えさせられた。


次に見た市川作品は「たどんとちくわ」。
市川準監督の「最低限しか説明をしない演出」というのはもちろん意図してやっているわけで、
本当は観客の感情の波をコントロールする演出はもちろんできるわけなのだ。
で、それを本気でやったらどうなるのかというのが「たどんとちくわ」だと私は思っている。
ただし、この場合市川監督がコントロールしたのは「観客をとてつもなくどす黒くイヤな感じ」に
させることだったのだ(爆)。
オットが、 コ コ  で感想書いてます。


しかし「たどんとちくわ」で市川監督の「ダークサイド」を見て腹いっぱいになってしまったのか、
それ以降は急速に市川作品に触れる機会がなくなった。
大阪物語」(主演:池脇千鶴)はテレビで見ていたが途中で寝てしまったし(笑)。
ただ「トニー滝谷」(主演:イッセー尾形宮沢りえ)は観たかったのだが、いつの間にか終わっていた(笑)。


しかし、実は私が市川準作品の中で最も好きな作品をまだここにはあげていない。
それは「会社物語 MEMORIES OF YOU」(主演:ハナ肇)だ。
これは私が市川作品に完璧にハマるきっかけになった映画。
なので今から本作を見直して、(頼まれてもいないのに)「感想」を書くぞ!
(でもビデオ録画なのでテープの状態が心配) 


ということでつづきは、  コ チ ラ   に書きました!


(クーラン)