図書館戦争総評

図書館戦争」を全部見終わったので遅ればせながら総評を。
全12話それなりに面白く見た。
作画のレベルも常に安定していたし、その点も素晴らしかったと思う。
しかしオットは挫折。ヒロインの「熱血バカ」な性格が、ふた昔前っぽくて見ちゃいられなかった
らしい。確かにそれは事実なのだが、私はその点はあまり気にならなかった。
「本を守る為に武力闘争する」というありえない世界に生きる人間を描く場合、複雑だったり
淡白な性格の主人公だとストーリーが不安定になってしまう。
ここは「昔ながらの分かりやすいヒロイン」の成長を描く方が見ている方も入り込みやすいと
思ったからだ。


とはいえ、私も少々物足りないという印象が残る。
そもそもこの話は全12話で描ききれる話ではないと思う。
更に言えば、各エピソードも、ほぼ一話完結30分では語りきれていなかったように思える。
尺の関係からか、問題が発生し色々あった後に起こすアクションの部分が5秒のモノローグで
語られて終わり!という展開が多かったような。
そのため具体的にどんなことをしたのかが描かれないので、物足りなく感じる部分もあった。


あと、もうひとつ。いわゆる「検閲」をする方と「検閲」を拒絶する方のイデオロギーの対立を
もっとしっかり書いた方が良かったのではないかと思う。


しかし、ここで描かれる「箱庭的戦争」の描写は面白いと思った。
例えば、彼らは夜明けから図書館開館の時間まで「検閲図書」の為「戦争」をする。
図書館開館までに勝敗をつけ、開館後は速やかに撤収する。
「市街地では発砲はしない」「例え捕虜となっても『状況』が終わったら即時帰される」等の
ルールもある。その為、ほとんど死者が出ていない(と思われる)。
これはいわゆる「戦争ごっこ」ととられても仕方がない状況なのだ。
しかし、これを「ごっこ」にせずシリアスな状況を描くために、演出も作画も相当頑張っていた。
そして、それをうまく描写すればするほど、「図書隊」存続の意義が描かれる。


一番好きな話は「第六話 図書隊ハ発砲セズ」。
「預言書」と呼ばれる本を検閲から守った為に隊員が発砲されていたが、この「預言書」とは、
私が以前ここで触れた、映画「華氏451」 の原作、レイ・ブラッドベリ著「華氏四五一度」の
ことであると思われ、相当驚いた。
この世界では「華氏四五一度」は「まるで今の自分達の世界を予言しているよう」なので
「預言書」と呼ばれ、映画共々検閲された結果、市場には一冊も出回っていない
という設定なのだ。
更にはキャラクターに「『検閲』なんてない世界の人達から見たら、自分達はさぞかしこっけいに
思えるだろう」とも語らせている。
それはこのドラマを見ている私達のことを指しているのであり、この幾重にもわたる構造は
かなり面白いと思った。


全体的には、本当に不思議な話だったと思う。
この世界では「華氏451」も観れないんだもんなあ。そんな世界でなくて良かったよ。
最終話の「誰かが創作したものが、自分の心を豊かにしてくれる」という言葉が印象に残った。
まさにその通り。(クーラン)

図書館戦争 第一巻 [DVD]

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