バカ殿バンザイ!

NHK大河ドラマ篤姫」を一週遅れの再放送で見ている。http://www.nhk.or.jp/taiga/
元々気になっていたものの最初は見ていなかったが、宮尾登美子の原作を読んで以来
見続けているのだ。


しかしヤヴァイ!篤姫も婚礼の為大奥に入り、いよいよ面白くなってきた!
宮崎あおい嬢のはつらつとした篤姫は原作の骨太な篤姫とは微妙にイメージが
違っているものの、それが逆に好印象。幾島の松坂慶子も意外に合っている。


そして何と言っても、堺雅人演じる将軍家定がツボすぎる。
原作の家定はなんと言うか、生きる気力も体力も枯れ果てている精神的な老人みたいな
イメージで、こんなおっさんに利発な篤姫が本気で惚れたのかしらん?と
疑問に思わないでもなかった。
しかし、ドラマの家定は「自分の意志だけではどうにも出来ない巨大な何かを前にして、
思考することを停止してしまった人」に思える。


家定という人は病弱で奇行が多かったとされている将軍だ。
堺氏がこの役を演じるに当たっては、家定が暗愚かそうでないかを相当議論して
役に入ったのではないかと思われるが、ドラマの家定は暗愚ではない。
暗愚を装っている。もしくは暗愚と言われても構わないと思っている。
大事を考えることを拒否して、豆を炒ったりカステラを焼いたりすることに
打ち興じているかのように見えて、話の本質を掴んだりそらしたり、のらりくらりと
かわして掴みどころがない。
が、時々ギラリとした嫌味や本音を吐いたりする。
堺雅人の演技が、本気と虚無を行き交う孤独な将軍の心を際立たせる。
(先日の「大奥では賢さなど役には立たぬ」は相当キた)。


ちなみに今回「19回大奥入場」の家定もすごい(笑)。
アメリカ領事のハリスが下田に到着し、家定に謁見を申し入れるが、対応を家臣二人に
相談され、
「公方様に拝謁したいそうです」
「よいぞっ」
「それはなりませぬ」
「ならばやめるっ」(返しはやっ!・爆)。最終的には
「そちらで決めたら良いではないか、いつものように」
と一発嫌味をかまして結論丸投げ(笑)。
ついでにそこらにあったミカンもポイポイ投げつけキャッチさせる(笑)。
すごいバカ殿ぶり(爆)。


またこの回のラストでいよいよ篤姫は家定と初めて邂逅するが、そのシチュエーションも最高!
大奥の庭をウットリと散歩する篤姫のそばに、ひょっとこ(だったと思う)の面を被り
木の枝を持った男が乱入。
なんとそれは全力でかくれんぼに勤しむ将軍様だった(笑)。
ひょっとこを姫に押し付け、奇声を上げて走り去るバカ殿を唖然と見送る篤姫様・・・。


いや、ウケた!しかし、爆笑しながらも、これは一種の先制攻撃かなと思う。
将軍様正室の居所の近くでうっかりかくれんぼなんてありえない。
篤姫入城を家臣から知らされた家定は(名前も憶えちゃいなかったがな)偵察に来たのでは?
というか、バカ殿ぶりを見せたかったのでは?
自分という男に期待しないよう、面倒なことをさせないように、
「賢い御台所」に暗愚だと印象付けたかったのでは?とうがった見方をしてしまう。
それほどおもしろいキャラクターに仕上がっているのだ、この家定は。
これはまさに、ドラマを見る醍醐味だと思う。


「女の道は一本道。」
篤姫が一筋縄ではいかない将軍様の孤独な心にどう道筋をつけるのか。
原作を大いに膨らませて楽しませていただきたい。(クーラン)