わたしがハマッタ男達、女達(笑)。

先日の日記で、新聞小説のことについて触れたけど、私がこれまでハマった新聞小説
何かと考えました。


最初に思い浮かぶのが、宮尾登美子の「きのね」。
これは翌日が待ち遠しくてたまらなかったなあ。
梨園の御曹司、雪雄に仕える光乃の、献身と忍従の人生。
慎ましやかというか殆ど忘れ去られている日本人の美徳を(ここまでやるかと言う程)
思い起こさせる作品。
しかし光乃のように、ひたすら尽くすというか忍従の人生はとてもじゃないが
ムリと思ったものでした。

きのね(上) (新潮文庫)

きのね(上) (新潮文庫)

あと、夕刊小説で夢中になったのが、杉本苑子の『月宮の人』。
お市、その三人の娘・茶々、お初、お江。そしてお江の娘・和子。
3代に渡る女性の人生を描いた歴史小説
これはホントに大河ドラマのように長大な物語でした。
お市とその三人の娘達は、現在もドラマや小説等で描かれることも多くおなじみの方々ですが、
お江の娘・和子については、当時知らなかったので非常に興味深く読みました。
幕府を敵とみなす宮中に四面楚歌で入内する(夫にすら疎まれる)和子のけなげさに
涙した思い出が。


宮本輝の「ドナウの旅人」も大好きでした。
ワケありな33歳長瀬とドイツへ出奔した50歳の絹子。
二人を追いかけ共に旅をする絹子の娘麻沙子とその恋人シギィ。
長い旅の間に徐々に変わっていく人間の心理や多面性が描かれていて、感銘を受けました。
人生どん底な感じに陥った時に、読み返す作品です。
あの頃はホンの子供で麻沙子の年齢よりも随分若かったのに、今では長瀬の年齢が一番近い私。
絹子に近い年齢になって読み返した時、また違った印象を持つのでしょうか?

ドナウの旅人(下) (新潮文庫)

ドナウの旅人(下) (新潮文庫)

そして、私が一番ハマった新聞小説といえば、中上健次の「軽蔑」。
トップレスバーの踊り子真知子と、ヤクザ崩れの遊び人カズさんの「男と女、五分と五分」の
恋愛を描く作品。
独特の文体に連載当時からシビレまくりでした(しかし、あれでもかなりウスメらしい)。
トップレスダンサーが主人公の小説が朝刊に載ったというのも驚きでしたね。
あと、アダルトビデオをアダルトヴィデオと書いててなんだかかっちょいいなあ。
と感じたのを思い出しました。
周りの人全てに愛されていながら、満たされない心を抱えるカズさんの破滅人生。
よくいる人のよくある話なのですが、それでもカズさんの魅力には逆らいがたいものを感じました。
女と生まれたからには、カズさんみたいな男に人生メチャクチャにされたい。
もしくは、広田レオナ様のように男を振り回したい。等とガキの分際で考えたものです。
(そのどちらにもなれず、現在の私があるわけですが)
そういえば当時、カズさんを演じたいという俳優が結構いたという話を聞いたことがあります。
これは、掲載時に読んだ衝撃が薄まるのを恐れて再読していません。
いま、読むと大分印象変わるんだろうなあ。
軽蔑 (集英社文庫)

軽蔑 (集英社文庫)

こうして見ると、新聞小説を読んでいた時期が自分史的に割と固まっているという事に気付きました。
あの年頃が一番新聞と密接な関係だったというか、読み込んでいた時期だったのかも。
最近では吉田修一「悪人」にかなりハマリましたね。 (クーラン)
悪人

悪人