「雪の女王」

映画「雪の女王」をシネマアンジェリカで観た。
この文章はネタバレしているので気になる方は読まないで頂きたい。 


雪の女王」を初めて読んだのは、子供の頃、おそらくアンデルセン全集で読んだはずだと記憶している。
その時は、カイを探して世界中を旅するゲルダのパッションが理解できず、いまいちピンとこなかった。
その後、「雪の女王」と再会したのは絵本(?)だった。情熱家のゲルダをたおやかな線と暖かい色彩で
ふんわりと描いたその「雪の女王」の世界に私はすぐに夢中になった。
ゲルダと対照的な雪の女王は、冷たくも神々しい姿でこちらの美しさにも惹きつけられた。
我が家の本ではなかったので、何度か読むために通った記憶がある。


それから随分たって、あの時の絵本は実はアニメーションを本にした物だと知った。
ロシアのアニメーションだという。しかもその昔、数回テレビ放映されたことがあったというではないか。
なぜ自分はそれに気付かなかったのか?臍を噛んで悔しがったが後の祭りである。
それからまた随分と時がたったある日、見覚えのある絵のポスターが目に飛び込んできた。
「バラの鉢を挟んでカイとゲルダが微笑み会うシーン」。なんと「あれ」が上映されるというではないか!
絶対に観に行かなくては!それが本作「雪の女王」である。

雪の女王 [DVD]

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ようやくみた本作は素晴らしかった。まず絵がよく動く。しかもキャラクターの動作にとても品がある。
私はゲルダが動いているだけで既に感動してしまった。
第二はキャラクターの愛らしさだろう。非常にあっさりしていて嫌味がない。
ストーリーは上映時間の関係からか深く描ききれていない部分もあるがそれはあまり気にならない。
ここで訴えたいのはそんなものではないのだ。
ゲルダがカイを想って世界中をさすらう、そのけなげさと芯の強さを描きたいのだ。
ゲルダのけなげさの前に色々な人が彼女に尽くす。
なぜそうしたくなるのか、本作のゲルダが動き、泣き、笑う姿を観れば無条件でそれが理解できるはず。
また、成人してから観ると、雪の女王の孤独な美しさにも胸を打たれる。
最後に二人を見据え無言で消えていくシーン等は大人でなければ理解できない余韻なのではないか?
いづれも素晴らしいキャラクター造詣だった。宮崎駿氏ご推薦だそうだが、さもありなん。
宮崎アニメのヒロインのキャラクターに色々な形で反映されていると思う。
そういえば「太陽の王子ホルスの大冒険」の舞台は北欧(と思われる)だし、ヒロインは「ヒルダ」でしたね。
とにかくおかげでようやく観ることができました。Thank You 宮さん。←(友達か!)


今日の一言。
盗賊の娘が、ゲルダの温かさに心打たれ泣きながら叫んだ一言
「おまえは優しすぎるよ。甘ったるいゼ!!」
イカシタお言葉でした。今後私も機会があったら、使わせていただこうと思います(笑)。


同時上映作品「鉛の兵隊」。
これも幼い頃、アンデルセン全集で読んだ。短編だったがこれにはとても強い記憶がある。
紆余曲折あったすえようやく再会した恋人達(鉛の兵隊と踊り子)は暖炉へ落ちてしまう。
ようやく思いを確認しあうのは存在が消滅しようとする正にその時だ。
「こんな終わり方ってあるだろうか?童話だろ?」子供ながらにも思ったものだった。
そのアニメ作品だが、ここでもやはりキャラクターや色彩が美しい。
「きれいだなー。」等と割とリラックスして観ていた(「雪の女王」上映後なので)。
私はラストの展開も知っている。だから驚かされることはないと思っていた。


ラスト1分前、それはいきなりやってきた。
先に暖炉に落ちた兵隊を追って踊り子が飛び込んでくる。
既に火に溶けかかった兵隊は踊り子を抱き締めながら虚空を眺めるが、その目があまりにも諦観に
満ちた目でショックを受けた。
幼い頃に私が読み子供ながらに解釈したのは「死ぬ前に想いを伝えあい、愛の歓喜の中で死んでいった」と
思っていたからだ。まさか、あんな悲しげな目で死んだとは考えもしなかった。
あの兵隊の目に打ちのめされ私は涙が湧いて出た。終了1分前なので当然涙は止まらずトイレに駆け込み、
私はそのままじっとりと泣いた…。  (クーラン)