中国の植物学者の娘たち

東劇で「中国の植物学者の娘たち」を観る。好きな作品です、これ。
所謂「だれも幸せにならない愛の物語」。


研修で植物園のある「島」にやって来た孤児のミンミレーヌ・ジャンパノワ)は植物学者を父に持つアン
(リー・シャオラン)と出逢う。
アンもまたこの島で、父以外とかかわる者のない孤独な生活を送っており、二人は意気投合する。
その感情はやがて…。という話。


湖に浮かぶ島、その閉ざされた空間が舞台であるのがいい。
そして植物園という設定が、いっそう日常からの乖離を強調する。
草木の緑も幻想的に美しい。
そして主演の二人、リー・シャオラン(はじめて画面に彼女が映った時の、あの表情は筆舌に尽くせぬ)
ミレーヌ・ジャンパノワの艶やかなこと!
これらを映像で具体的に示されたとき、映画ならではの「観る」という喜びを実感するのである。


ダイ・シージエの演出は、この美しいお話をゆったりとしたテンポで綴り心地よい。


そして、この作品は、封権的な父親と二人の女性の自立という「古い価値観と新しい価値観」の対立
の物語でもある。
絶対的権力で全てを支配していたかに見えた父は、二人に去られた時、ひとりでコップに水を注ぐ
ことすら出来ない矮小な存在だったのだ。
それにひきかえ、ふっきれた二人のなんと活き活きしていたことか。


深い緑を克明に切り取ったカメラ(モントリオール映画祭最優秀芸術貢献賞受賞)とか
船から見る近隣の結婚式の美しさとか、
一転して、都会のシーンで遠方に汽車が写る奥行きのある画面とか、
その汽車がホントに民家ギリギリの狭い路地を走ってるスペクタクルなシーンとか、
色々、印象に残るシーンがあります。


しかし劇場の客はまばらだったな、もっと皆に観てほしい作品ですね。(○)