休日

この日は、午後から映画を観に渋谷に出かける。映画終了後、通りすがった「Dexee Diner」というお店で軽く呑む。
ということで今日のつまみ

レバーパテ、アボカドのグリル

白菜の鶏胸肉のサラダ、ロコモコ     オットはビール、私は白ワインできめる
なんとなく目について入ったお店だったけど、美味しかった。
映画が早かったので、食事も早い時間に済み、早々に帰宅。渋谷は久しぶりだったけど、もう年なんで疲れた(笑)。
ところで、この日映画館ですれ違ったお客さんが、「ちい散歩」のちいちいバッグを下げていて驚愕した。
久しぶりに見かけた。しかもかなり使い込んでいる様子で感動。思わず握手を求めたい衝動に駆られたが
「あなたもファンですか!」と心の中でエールを送るに留める(笑)。


★「ふたりのイームズ」鑑賞。(監督:ジェイソン・コーン、ビル・ジャージー)
〈内容〉1940〜1960年代、アメリカの近代主義から生まれた新しいデザインの潮流"ミッ­ドセンチュリー・モダン"の旗手、
20世紀のアメリカをデザインした伝説の夫婦、イームズ夫妻の素顔に迫ったドキュメンタリー。


「家具好きには、たまらん!」と鼻息荒くして観に行ったけど、面白かった〜!!

伝説の夫婦の出会いから始まり、戦争や急激な近代化などに翻弄されながらも、家具や建築など多くの作品を世に送り出し、
デザイン界をリードする存在になっていく二人の様子が、手紙や写真をはじめ、イームズ・オフィスの元スタッフや家族の
インタビューで語られていく。
何が良かったって、当時の二人の仕事風景を映した貴重な映像や、二人が作り出した映像作品の一部。それらが公開された
当時の模様が収められた貴重な映像が見られたこと。
個人的には、1959年、冷戦時のモスクワで開催された「アメリカ博」の映像等は、当時のパビリオンの造詣や演出・風俗も
含めて、大変興味深く興奮した。生まれて初めて観た映像だった。観られて良かった。


今回初めて知ったが、イームズは家具だけではなく数々の映像作品を手がけていたそうで、それらを観ると、
新しいこと、興味のあることに、果敢に挑戦していたイームズ・オフィスの活気が伝わってくる。
しかもクオリティを保つために採算を度外視していたこともあるそうで、活気はともかく結構ムチャクチャ
だったんだなと、おかしくなった。


なるほどと思ったのは、夫妻が活躍し始めた当時は、アメリカもまだまだ女性蔑視の時代で、世間では、
妻のレイはデザイナーではなく、あくまでも夫・チャールズを支える「妻」としての扱いだった。
テレビ出演した時のレイは、「チャールズの妻」と紹介され、夫の横でにこやかに微笑んでたけど、内心は
忸怩たる思いがあったと思う。実際、ハンサムで茶目っ気があってカリスマ性があるチャールズの方が、
より人を惹きつけ評価されていた部分もあったのだろう。でも、レイの色や曲線に対する鋭敏なセンスがなければ、
あの美しい名作椅子の数々は生まれなかったのではないかと思う。
以前、雑誌に掲載されたイームズハウスの膨大なコレクションを見たが、高名な作家の芸術品と、世界各国の民藝品、
道端で拾った石、砂浜で拾った貝等々、全てが同列に扱われていた。あれを見て、アート作品からも食品の
パッケージからも、同等の美を感じ取るセンスはレイのものだったのではないかと内心感じた。
今の日本の女の子が「カワイイ」を見つける感覚と、同じものだと思う。
しかし、レイにとって美しいものは、違った観点からみれば「ガラクタ」だったようで、オフィスのレイの部屋には、
メモ魔だったレイの書置きと「ガラクタ」で溢れかえっていて、スタッフも入りたがらなかったらしい。
ああいったレイのセンスは、イームズの作品に無くてはならないものだったと思うのだが・・・。
(彼女が「捨てられない人」だったというのも事実なのだろうが)
チャールズがレイのデザイン性を必要としない作品を創作していた頃のエピソードで、この頃のオフィス内での
レイの微妙な立ち位置が現れていて、見ていてちょっと辛かった。やっぱりみんなチャールズが大好きだったんだなあ。


そしてラスト近くには、まさかのチャールズの愛人登場に唖然。
どうやら本気だったらしく、結局は別れたみたいだけど、これだからハンサムでカリスマ性のある男ってのは・・・(笑)。
レイ自身も略奪婚だったから仕方がないのかもしれないけど、この人も色々苦労したんだろうなあ。
たいして知りたくもないエピソードだったけど、事実なのだからドキュメンタリーとしては仕方がないのか。
チャールズの、寂しさが漂う晩年のエピソードも、少し哀しかった。
そして、あそこまで隆盛を極めたオフィスに、後継者が育たなかったという事実にも物哀しさを感じる。


全体的には、ドキュメンタリーの形式として、昨今のディスカバリーチャンネルのような、細かいインタビューの
カット割りで構成されており、全体的に若干落ち着きが無かった。特に貴重な映像は、短く切るよりも、
長くたっぷりじっくりと見せてほしかったので残念。
美しいデザインに秘められた「ふたりのイームズ」の実像は、なかなか興味深いものでした。面白かった!